| 白石和良氏の監修のもとご紹介する英国湖水地方カンブリアのレーベル
FELLSIDE RECORDINGSシリーズ FELLSIDE RECORDINGS ●レーベル紹介●CD SHOP 第1期リリース分●CD SHOP 第2期リリース分●CD SHOP 第三期リリース「フェルサイド・クラシックス」●白石和良×大島豊 連載読み物●英国のホームページはこちら●新作紹介 ●ナンシー・カー&ジェイムス・フェーガンは、別のページを作りました。こちらへどうぞ!
FELLSIDEは、60年代からの英国フォーク・ミュージックの神髄を今日に伝える存在であり、また今日最も筋の通ったアルバムをリリースする英国フォークの良心である。
FELLSIDEは英国フォーク音楽ならではの頑固さと同時に親しみやすさを永遠に保ち続ける英国フォーク・ミュージックの牙城なのだ。 白石和良
●レーベル紹介 FELLSIDEは、自身優れたシンガー/ミュージャンであるポール&リンダ・アダムスを中心に運営されているカンブリアの独立レーベルで、1976年の設立から既に20年以上の歴史を持ち貴重な作品を多数(100枚以上)リリースしてきた。 ポール・アダムスはリンダとのデュオを組んでライヴやアルバム制作(SWEET FOLK & COUNTRY レーベル等に作品がある) を行うミュージシャンだった。いかにも英国フォークらしい男女(夫婦)のトラッド・フォーク・デュオで派手さは無いが誠実な歌を聞かせてくれていた。こうした存在は同国のフォーク界には数多い。しかしポールが真にユニークな事は、自身の音楽活動を行う一方で音楽録音に関心を持ちBBC の仕事等までも行っていた事で、こうした活動が高じてついには自身のレコード会社設立に至る。それもよく有り勝ちな自分の音楽発表の場としてではなく、優れた才能を持った多くのミュージシャンを世に出すという本格的な独立レーベルを作ったのである。それがFELLSIDEなのだ。FELLSIDE最初のリリースはTERRY DOCHERTYの"TELLER OF TALES"というアルバム(FE001)で1976年の春に発表された。因みにこのアーティストは北東部イングランドでは良く知られた優れたシンガー・ソングライターで、現在も活動を続けているという。この様に、派手な話題やオーバーグラウンドな知名度は無くても真に優れたミュージシャンを世に紹介するというFELLSIDEの姿勢はこの1作目から今日まで一貫しているのだ。 FELLSIDEレーベルの大きな特徴は、まず第一に地元カンブリア(イングランド北西部)を中心にした北部イングランド〜スコットランドとの国境地方の音楽の紹介に尽 力してきたことで、この分野での代表的な存在は、北部イングランドの炭鉱夫達の生活を綴った自作の歌をトラディショナルなサウンドをバックに聴かせる素晴らしいシンガー・ソング・ライター、ジェズ・ロウJEZ LOWEであろう。FELLSIDEは、80年のファースト・アルバム("JEZ LOWE" FE023) から今日まで一貫してジェズの音楽を紹介し続けている。「録音を離れてもジェズは最高の友達だ」とポールが語っている様に最高の理解者として、一人の才能あるローカル・シンガーを「英国フォーク界で最もポピュラーなアーティスト」に育て上げたFELL SIDEの功績は大きい。また実際ジェズの数々のアルバムがFELLSIDEのベストセラーとなってきた事を思うとアーティストとレーベルの関係の理想像を見ると言っても言い過ぎではないだろう。余談だがデビューアルバムは本来はゲド・フォーレイとのデュオ作として計画されたものだったが録音の前日になって(!) ゲドがバトルフィールド・バンドに参加してしまった為にジェズのソロとなったという。それが却ってジェズの存在を一層鮮明にする結果となったのは言うまでもない。さて彼の音楽性に本質的な変化は無いが初期のアルバムは一人のフォーク・シンガーとしての物であったのに対して近年のアルバム(たとえば93年の"BEDE WEEPS"FECD94/MPFR013など)ではJEZ LOWE & THE BAD PENNIESの名義で女性シンガーまで加えたより幅の広い音楽を聴かせてくれる。トラッド音楽に根ざした自作のコンテンポラリー・ソングを専門にしているジェズはいかにも英国ならではのフォーク・ミュージャンであり、今日の英国フォークを代表する一人である。 FELLSIDEは、勿論ジェズの他にも、北東部イングランドのベテラン・フォーク・シンガーのボブ・フォックスBOB FOXの諸作("BOB FOX & STU LUCKLY:BOX OF GOLD"FECD124,や "BOB FOX & BENNY GRAHAM:HOW ARE YOU OFF FOR COALS?"FECD111)を紹介したり、60年代の英国フォーク・リバイバルの初期から北部イングランドのトラディショナル音楽を演奏してきたボブ・ダベンポートとレイクスBOB DAVENPORT AND THE RAKES と契約して最新作 ("THE RED HAIRED LAD"FECD122/'97)をリリース、更にはノーサンブリアの音楽を専門にするトラッド・バンドの新星グループ、Ushnaを近年世に出す ("TWICE BREWED" FECD132等 )などこの地方の音楽の記録〜紹介をレーベルの使命の一つとしている姿勢には今日でも基本的に変化もない。 勿論、FELLSIDEが世に紹介した優れたミュージシャンは北部イングランド地域の存在に止まるものではない。例えばオーストラリア出身のジェリー・ハロムGERRY HALLOMなどその最たるものだろう。いや逆に地域云々は度外視した見方で分類すると今度はこのジェリーに加えて、ブラム・テイラーBRAM TAYLOR やスティーヴ・ターナーSTEVE TURNERなどといったシンガー達の名が浮かんでくる。彼らに共通している事は、フォーク・ミュージシャンならではの地に足の付いた活動と、何よりも歌の「旨さ」なのである。彼らの歌声も、もしFELLSIDEがなかったら世の音楽ファンの耳に届く事は不可能だったかもしれない。 FELLSIDEの音楽 (サウンド)の作り方はまた一貫しており、時流に媚びず一切の虚飾を廃止して優れたミュージシャンの音楽を出来るだけストレートに伝えるというも ので、これはフォーク・ミュージックのレーベルとして王道を貫く姿勢と言える。その姿勢とポールやリンダ達の人望もあって、全英の代表的なミュージシャン達がこのレーベルの集合し、特徴的なテーマを持ったオムニバス・アルバムが組まれたり、また彼らの新作が作られる様になった。つまり60〜70年代にTOPICや ARGOといった歴史的なレーベルが担っていた役割を今日担っているレーベルは事実上この FELLSIDEなのである。テーマ別のオムニバス・アルバムでは、まず英国トラディショナル・バラッドを集めた"BALLADS"(FECD110)や英国トラディショナル・ソングの有名曲を集めた"VOICES"(FECD87)などが挙げられ、これらにはマディー・プライアーやジューン・テイバー等のビッグ・ネーム達の名唱が集められているが、特に"BALLADS"の方は基本的にこのオムニバスの為のオリジナル録音である事がその価値を一層高めている。またジョン・カークパトリックの生き生きとしたヴォーカルとアコーディオンを中心にした"WASSAIL!" (FECD125)はクリスマス等冬季の伝統の儀式で歌われるトラディショナル・ソングを集めた貴重な一枚。更に一昨年一部の愛好家の間で話題になった"FYRE & SWORDE" (FECD131/MPFR009)はイングランド〜スコットランドの国境地帯にまつわるトラディショナル・ソングをマディー・プライアー、リンダ・アダムス、ジャネット・ラッセル等の歌と丁寧な解説で纏めた素晴らしいアルバムであり、演奏の方もスティーライ・スパンのリック・ケンプ等が参加して、これまでの同レーベルでは見られなかった程の電気楽器を大胆に使いながらもトラディショナル音楽の本来の良さを生かした名作である。 ビッグ・ネームのアーティスト達の新作としては、60年代から英国のジョーン・バエズとも称される(適切な形容ではないが)フォーク/トラッドの女性シンガーの 第一人者、フランキー・アームストロングFRANKIE ARMSTRONGの"TILL THE GRASS O'ERGREW THE CORN" (FECD116/'96/MPFR006) 、フォーク・リバイバル初期からオーストラリアの歌を英国に伝えた偉大なシンガー、マーティン・ウンダムリードMARTYN WYNDHAM-READの"BENEATH A SOUTHERN SKY"(FECD115)、バート・ヤンシュやジョン・レンボーンと並ぶ英国フォーク・ブルース・ギタリストの巨人ウィズ・ジョーンズが息子のサックス奏者と共演した"WIZZ & SIME ON JONES:LATE NIGHTS & LONG DAYS (FECD91/'93,ジョン・レンボーンも参加/MPFR003)等がある。その他惜しくも世を去ってしまった英フォーク界の異才ピーター・ベラミーPETER BELLAMY (フォーク・オペラなどの制作で知られる)の晩年の傑作"KEEP ON KIPLING"(FE032)や、これまた超ベテラン・シンガーながらレコードはけっして多くないロイ・ハリスROY HARRISの妥協の無いバラッド・アルバム"THE RAMBLING SOLDIER"(FE017) までもがカタログにある事をみると、もはや英フォークの記録者としての意識でレコード造りをしているのではないかと思う程である。因みにポールは、「このロイ・ハリスの録音をした時(79年) に我々は初めて『フォーク・レーベル』になったのだ」などと実に謙虚に語っているのだが... 。ともあれこれらのビッグ・ネームによる諸作は、先の隠れた才能の ローカル・シンガー達とはまた全く異なる「存在感」と「説得力」で我々を圧倒するものばかりなのだ。 更に少し渋い所では良く知られたトラッド・ソングをじっくりと聴かせるベテランの男女3人のグループ、COKERSDALEの"BEEN AROUND FOR YEARS"(FECD101)やディヴ・アーサー(歌)とピート・クーパー(フィドル)達による新グループ、THE RUFUS CRISP EXPERIENCEの"CHICKENS ARE A-CROWING"(FECD113)などもあるし、米国人であるがスコティッシュ・トラッド系の美しい歌を聞かせてくれる女性シンガー、サラ・グレイのアルバム(SARA GRAY & ELLIE ELLIS "MAKING THE AIR RESOUND" (FE039) など良くぞ出してくれましたといったところである。(サラは70年代に米フォーク・レガシーに傑作アルバムを残した後、レコーディングが無かったが、まさか英FELLSIDEからアルバムが出たとは!) また昨年はこれも英国らしいベテラン・ギタリスト〜シンガー・ソングライターのスティーヴ・テイルストンSTIVE TILSTON(ジョン・レンボーンのシップ・オブ・ フールズに参加したり、マギー・ボイルとのデュオで知られるギタリストで、またフェア・ポート・コンベンションが最もお気に入りのソングライターでもある)の新作"SOLORUBATO"(FECD134/MPFR015)までリリースするなど、英国フォークの大物〜ベテラン達がどこまで集まるのかこの面でも今後とも注目である。 FELLSIDEはまた英国フォークの歴史を刻んできた様なアーティスト達の過去の仕事にも多大な敬意を払って来た。FELLSIDEはイワン・マッコールと並ぶ今世紀の英国 フォークの父、A.L.ロイド代表的な歌を集めた"CLASSIC A.L.LLYOD"(FECD98)やアン・ブリッグスの TOPIC録音を纏めた"CLASSIC ANNE BRIGGS"(FECD78)、60年代からの スコティッシュ女性トラッド・シンガーの草分けの一人、GORDENNA McCLLOCHの60〜70年代の録音を集めた"SHEATH & KNIFE"(FECD117) 等を本家(原盤所有)のTOPICのお 株を奪う様にリリースしており、中でも"CLASSIC A.L.LLYOD"は内容の貴重さは基より、ライナーにはマーティン・カーシーやディヴ・スウォーブリックを始め英国フォークの主要ミュージシャンが総出でコメント寄せていて、実に敬愛の籠もった掛けえのない一枚となっている。 最後になるが、このレーベルのアーティストの中でも近年の注目は、やはりサンドラとナンシーのカー一家を中心にしたものであろう。60年代にクリティックス・グ ループでイワン・マッコールやフランキー・アームストロング達と活動した経験を持つサンドラ・カーは、70年にはジョン・フォークナー(後のドロレス・ケーンとの活動でも知られる)とデュオを組み、その後ソロでもトラディショナルやコンテンポラリー・ソング(女性の視点からのものが多い)を歌いつづけてきた大ベテランである。そのサンドラの娘で、フィドラー/シンガーとして注目の若手がナンシー・カーである。ナンシーは最初マーティン・カーシーの娘のイライザ・カーシーとのデュオで知られるようになり2枚のアルバムを作るがその後はイライザと別れて活動。まず母親との共演盤"SANDRA & NANCY KERR:NEAT & COMPLETE"(FECD107/MPFR005)を発表した後、今度は新鋭の男性シンガー/ブズーキ奏者とのデュオで"NANCY KERR & JAMES FAGAN:STARRY GAZY PIE"(FECD127/MPFR001)を発表、そして今度はサンドラも加えた3人組となって"SCALENE"(FECD137/MPFR010)をリリースしている。ナンシーの凄腕のフィドルと母親譲りのクリアー・ボイスで綴られるトラッド・ソングの数々、ジェームスの凛々しい歌声で聴かせるトラッドとコンテンポラリー・ソング、そして衰えないサンドラのヴォーカル...これらの魅力的な要素をいかにもFELLSIDEらしく全く奇をてらう事なくそのまま丁寧にアルバムに仕上げた諸作は、まるで60〜70年代の英国フォークの興隆期のレコードの様な新鮮さと親しみやすさに満ち溢れており、現代に存在するのがまるで奇跡の様な作品である。なおサンドラはこれらとは別にフランス人とイタリア人の女性シンガーとのトリオでも活動、そのアルバム"VOICE UNION"(FECD119/MPFR007)は無伴奏の女性シンガーのパワフルなコーラスでヨーロッパやブリテン諸島のトラッド曲を歌い挙げた印象的な作品でマディー・プライアーもゲスト参加している。
FELLSIDEは、60年代からの英国フォーク・ミュージックの神髄を今日に伝える存在であり、また今日最も筋の通ったアルバムをリリースする英国フォークの良心であ る。FELL SIDEは英国フォーク音楽ならではの頑固さと同時に親しみやすさを永遠に保ち続ける英国フォーク・ミュージックの牙城なのだ。 94年にリリースされたレーベルの回顧録的なコンピュレーション"BANKLANDS"(FECB100/MPFR014)の中でポール・アダムスはこんな事を語っている。「我々は、今でもレーベル の本来の目的を見失っていないことを願っている。つまり、新しいシンガーやミュージシャンにチャンスを与えるという目的を...振り返ってみると我々はフォーク界 で最先端の立場にあったとは思わないし、またいかなる流行も起こした訳ではなかっただろう(最近は少し違うかもしれないが)。けれども音楽造りに於いては常に誠実に質を保ってきたと思っているのだ。」 1999.May 白石和良 |
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第三期「フェルサイド・クラシックス」 第三期は、レーベルを代表するアーティストのベスト盤、アンソロジー的作品を5タイトル一挙に紹介します。
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●第2期発売分
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●第1期発売分
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