MP:最初にあなたのソロアルバムについて、お話ください。いつごろアイディアが浮かんだのか、いつごろからレコーディングをはじめたのか・・またゲストミュージシャンについて、などなど。
デイヴ:アイオナが日本にいったのは、2001年の2月だったんだけど、その時、ジョアンヌから子供ができたという嬉しいニュースをきかされたんだ。そんなわけで、バンドのいろんなプランを変更しなくちゃいけないことになったんだけど、けっきょくその後ジョアンヌは二人目を妊娠し2002年の11月からバンドを休まなくてはいけないことになった。それで、僕は自分のソロアルバムを完成させようという事にしたのさ。もうずっと前から考えていたことではあったんだけど。
だからこの作品のアイディアについては、2002年の11月からスタートしたと考えてよいだろう。テープにとってあったいろんなアイディアを、まずすべて聴く作業からはじめた。アイディアのうちのいくつかは発展させなくちゃいけないものもあり、そしてそれについていろいろ加えて完全なものにしていったし、さらにまったくの新曲を書いたりもした。
かなり初期の段階からタイトルは決まってた。スコットランド人のジョーイ・マクリォドの美しい詩からインスパイアされたものだ。それは『A Veil as Thin As Gossamer』というタイトルで、それは天の王国と、地球上に住む人々と、そしてそれ以前に亡くなった人たちとの間の距離感、それぞれがいかに近いか、ということについてのものなんだ。St Cuthbertにちなんだ7世紀のストーリーで、エンジェルにつれさられたセント・エイダンの魂を見ているSt Cuthbertの話だ。それが僕のイマジネーションと、音楽にたいする方向性を決定づけていった。
2002年11月から始まって2003年の4月までの時間がアルバムが完成に費やされた。まぁ、ずっとそれにかかりきりだったわけじゃないけどね。けっこう自分の生活も忙しいし(笑)。でも、今回自分のスタジオの機材を新しくしたので、ほとんどは自宅のスタジオで制作された。またいくつかの場所にレコーディングにいったりもした。
アルバムを制作する初期段階から、いくつかの女性ヴォーカルをアルバムの中に通してフィーチャーしたいと考えていたんだ。そしていくつかはゲール語で歌ってもらいたいと思っていた。ゲール語の方が美しいし、そうなると、もう僕のチョイスは彼女たちしかいないんだ!(笑)
メイ・マッケンナがその一人で、このアルバムに参加することに快く同意してくれた。メイはアイオナのバックヴォーカルをTVでつとめてくれたことがある。94年のことだ。実際それ以前にも彼女のソロアルバムは、すごく好きだったんだよね。特にハーモニーを重ねた時とか最高だ。彼女はスコットランド出身で、僕がみつけた古いゲール語を正しく発音することにたけている。彼女のヴォーカルはこのアルバムの中心的存在だ。すっごく美しくて魅惑的だよね。
もう一人は、レイチェル・ジョーンズ。最近までカルナタカというバンドで歌っていた。レイチェルには、アイオナの最近のコンサートで出会って、その時にお互いのアルバムを交換したんだ。彼女は素晴しい声の持ち主だし、メイやジョアンヌの声とも綺麗にブレンドすると思ったんだ。実際、そういう結果になったしね。
ジョアンヌは、彼女が妊娠8ケ月のときにこの録音をしたんだ。レコーディングの機材をアイルランドにある彼女の家に持ち込み録音した。彼女は通常よりも息が長く続かなかったし、座りながら歌わなければならなかったけど、彼女の声は素晴しかったよ!
実際とりかかってみると、このアルバムに誰をゲストに呼んだらよいかがクリアになってきた。アイオナとは違うものを作ろう、という意識はなかった。どちらかというと、バンドでやっていることの延長にこのアルバムはあると考えたんだ。だからけっきょくアイオナのトロイとフランックに参加してもらった。僕の音楽をどうするべきか理解してくれるのは彼等だからね。ティム・ハリーズやニック・ベックスに声をかけたのも同じ理由からさ。二人ともベースのパートを担当してくれた。ティムはもう学生時代から一緒にやっているからほんとうにお互いのスタイルを理解しているし、ニックはアイオナの初代ベーシストだしね。
他のゲストの人たちは、このアルバムに、アイオナとは別の意味を音楽にもたせるために活躍してくれたよ。
ウィリアム・スコフィールドは、素晴しいクラシックのチェロ奏者で、ジョアンヌやトロイのアルバムにも参加している。ピーター・フェアクロウは、フリージャズのパーカッション奏者としてよく知られている人物だ。カレッジにいたころからよく知っていて、彼は素晴しいハンドメイドのゴングやチャイムやシンバルを使って演奏するんだよ。クリス・ヘイルは、ネパールとインドで育った人で、彼のバンドのAradhnaは、僕たちのライブのサポートをよくしてくれているんだよ。彼等はすばらしくって、彼の声は、この最後のトラックのクライマックスにぴったりだと思ったんだ。彼はワールドツアーの真っ最中だったにもかかわらず、この素晴しい音楽を、なんとニューヨークでレコーディングしてくれた。ピーター・ホイットフィールドは、素晴しいヴァイオリンとヴィオラを演奏してくれた。僕は彼を何年もよく知っていて、彼はアイオナのアルバムにも参加してくれたことがある。タイトル・トラックにおける、彼の何層にも及ぶ演奏は、僕の望むオーケストラルな雰囲気をこのトラックに与えてくれている。
MP:アルバムの中の代表的な5曲を選んで、コメントをお願いします。
デイヴ:CHANTING WAVES
6世紀にアイオナ島に寺院を設立させたセント・コロンバに捧げられた古い詩があるんだけど、「I
hear the heaving waves, chanting a tune to God in heaven」というものだ。これが僕に歌に波のような浮き沈みを与えるようなヴォーカルの声を何層にも重ねる、というアイディアを与えてくれた。メイのゲーリックの歌詞の周りに、ジョーとレイチェルの声が聴こえる。そして、汐の満ち引きみたいに消えていく。この曲はアルバムに正しい雰囲気を与えてくれていると思うんだ。
OVER THE WATERS
この曲の持っている雰囲気がいいんだ。特に車で聞くと最高だよ!(笑)このアルバムの旅が始まる、って感じがするんだよね。(実際僕がつくったアルバムのすべてが旅が始まって終わるみたいに聴こえるんだよね。実際それが僕が曲順をきめるときの基準だし、アルバムの形を作っていると思うんだよね)
最初のうち、僕はアイオナのファーストに入っている「Flight of the wild goose」みたいな曲がほしいな、と考えたんだ。何か、こう、盛り上がる感じの曲を。どちらの曲も下の方から書かれている・・つまり最初にリズムの雰囲気を決めてあとからメロディを考えていくパターンだ。で、この2つの曲の最も大きな違いは、「Over the Waters」の方が、ヴォーカルっぽい手触り感があることだと思う。このハーモニーが急にはいってくるところなんかは、すごく気にいっている。レイチェルと、メイそしてジョーの声を何度も多重録音したんだ。そしてギターをイーボウを使って、その効果を作りあげた。レイチェルが、かなりヴォーカルメロディをアドリヴで入れてくれたんだ。彼女の耳はほんとに素晴しいよ。ちょっとユニークで、心にのこるメロディラインを入れてくれたと思う。
THE EVERLASTING HILLS
すごく長い曲というのを書いてみたかったんだ。メインのメロディは97年に作りあげた。パート1のデモを作った時(ヴォーカルはこの時点ではなかった)アイオナの「オープンスカイ」に収録されている「Songs
of Ascent」の別ヴァージョンを作ろうかと考えたんだけど、けっきょくそのアイディアは使わないでこの曲は完成することになったんだ。
パート1と2には、すごく自慢したいものがある。特に、背筋がゾクゾクするようなヴォーカルセクションと、いくつかのギター演奏。それからパート5に入るときのフランクのドラムは、すごくいいよね! すごく高揚する感じで。パート3で、メロディが自分で歩きはじめるところとか、パート4では僕にピアノソロの機会を与えてくれるし。アイオナのおかげで僕はギター奏者だと思われているけど、実際、僕の最初の楽器はピアノでもあり、音楽大学での専攻もピアノだったんだよ。
言葉はすべてスコットランドの古いゲール語の訳からきている。「prayer, poems and incantations」という本だ。これらは、すべてスコットランドの西の島からきたもので、何百年も古いものだ。それに僕はケルティック・クリスチャンの本の著者で有名なデイヴィッド・アダムの書いた最近の祈りの言葉も使った。
THE HOMEWARD RACE
数年前、ドラマーでヴィオリニストのフランクの家にいったとき、次のアイオナのアルバムのリズム・セクションを録音していたんだけど、この時のデモでの録音をこの曲に採用することにきめたんだ。このドライヴするリズムは素晴しいし、何かものすごく気分が盛り上がるような曲にぴったりだと思ってね。そしてジョアンヌが妊娠して、自分のソロ作品をつくろう、と考えた時、このリズムに、何か素晴しいコードをつけてみようと考えた。
ピアノソロをまず全面的にかぶせてみたんだけど、ちょっとジャズ・フュージョンっぽくなっちゃったのが気に入らなくて、それはボツ。そこに友人がやってきて、たまたま彼の古い1958年のレスポールを持ってきたんだ。最終的にそれをたくさん僕のレコーダーに録音するにいたってしまった。このギターは、僕にピアノじゃなくてギターベースの音楽を作りあげるきっかけを与えてくれたんだね。けっきょく僕は自分のフェルナンデスのギターでいれたメロディを無視して、メロディの間をぬうようにジャムってみた。
ギターを演奏しおわる前に、このデモをフランクのもともとのドラムと一緒にフランクに送ってみたんだ。キーボードのコードと、それからアクセントをつけるためにドラム演奏を止めてほしいところに小節のチャートをつけてね。実際フランクは、メロディがないからあんまりやることもなかったので、すぐにこの素晴しいドラムのトラックと一緒に送ってくれたんだ。今度はそれにむけて、僕は曲を完成させるべく試みていった。さらに僕はブズーキをリズムパートに加えていって、それが、リズムのドライヴ感を出すのにやくだっていると思う。
STAR-FILLED SKIES
これはちょっとビックリしちゃう話なんだ。実は数週間前に、片付けをしていたらリンデスファーンに学校で旅行にいったときのプロジェクトノートが出てきた。僕が10才の時さ。この本の一番最初に僕の7世紀においていろんな奇跡をおこしたリンデスファーンのビショップについての見解が書かれていたんだな。僕はもちろん何をかいたのかなんて、ぜんぜん覚えてなかったんだけど、この10才の時の経験が、デイヴィッド・アダムの「Fire
from the North」を読んだときに、僕の無意識の下から蘇ったんだなと、今ならわかる。
その話は、僕がもともと育った場所(北東イングランド)に関係していて、若いSt Cuthbertが・・おそらく真っ暗なある夜に天使が遠くの空からおりてくるのを見ている、そして天使は、その、とある最も愛された魂を天国へと導いていく・・という話なんだ。次の日、彼はノーザンブリア地方にクリスチャニティを伝えたセイント・エイダンの死を知る事になるんだけど、それは実際その当時起った事実でもあるんだよ。
僕を捕らえたのは、僕達の21世紀の眼差しは、こういったものを目撃する可能性いにたいして非常に曇っているのではないか、そして僕たちはミステリアスなものや精神的なものを知覚する能力を失ってしまったのではないか、という事だ。
多分僕らはあまりにも物質的なものに惑わされて、僕らよりもより偉大な存在に対する僕らのコネクションを失いつつあるんじゃないか。こういうのは実際、最近の音楽業界の中でも見られることだとおもうんだけど・・例えばエンタテイメントや、快楽的なことばかりに捕われていてしまっていて・・本来、音楽がもっている僕らの力のおよばないほどの力を、僕らが封じ込めてしまっているように感じるんだ。
僕にとっては一番素晴しい音楽というものは、僕らに実際の経験以上のものを実感させてくれるものだと思う。音楽は人々のハートに切り込み、音楽以外の他の芸術ではあまり実現できない事ないような素晴しい方法で僕らの情熱を奮起されてくれる・・。そして、それが、人々を共感を得て、僕らすべての人々に共通する情熱をもって、その共感する人々をつなぎあわせていくのだと思う。それは現実からの逃避ということではなく、この世界の中で、哀しみや、恐れ、また破壊物の下で、失われてしまった僕らの一部を、変えてくれるものだと思う。
このトラックは、ほんとうに一つの実際の旅だと思うし、すごく自慢に思っているんだ。メイのオープニングのヴォーカルはほんとうに魅惑的だし、パート3の頭のフランクのヴァイオリンとか、ウィルのチェロとか、美しいよね。クリスのヴォーカルがフィーチャーされるパート4もハイライトだし、実際にセイント・エイダンがエンジェルに捕らえられたところを喚起させると思う。ここでほんとうに指摘しておきたいんだけど、すべてのこの素晴しいミュージシャンの人たちがいなければ、このアルバムは絶対に実現しなかったと思うね。
MP:コンサートがほんとうに楽しみです。何かサプライズはありますか?
デイヴ:2001年のアイオナの最初のツアー以来、日本には、毎年でも行きたい気持だったんだけど、ジョアンヌに子供ができてそのプランが変更になってしまった。だからジョアンヌが次のツアーの準備ができるまで(それはおそらくもうすぐだと思っているんだけど)、トロイと僕とで何かできないかと考えたんだよ。もうすでにこのフォーマットで英国で何度か演奏しているんで、二人で日本にいけることをすごく楽しみにしている。
おそらく沢山のものを演奏するだろう。すごく伝統的なフォークなもの。そしてアイオナのアルバムから。そして僕達それぞれのソロ作品から・・。だからすごくシンプルでアコースティックなものから、ビックなサウンドのアイオナの作品まで、コントラストに富んだステージになるよ。ほとんどインストだけど、トロイが数曲歌うんだ。あと僕たちのジョークは面白いからね! 日本のお客さんにも理解してもらえるといいけど(笑)。二人だけでやることの良い事は、ものすごく自由になるスペースがある。それはバンドじゃできないことだ。例えばパイプのソロとか。で、僕がアコースティックギターとピアノでちょっと演奏したり、とか。だからアイオナのコンサートよりも、ずっと親密な雰囲気になると思うよ。
サプライズ? そうだなぁ〜、もし機材にトラブルがおこったら、トロイがカードマジックを見せないといけないだろうね! それから最後の夜はエスと共演もするつもりなんだ。実際彼等とは初対面なんだけど、すごく楽しみにしている。当日の午後リハーサルしてみないとわからないんだけど、期待しててほしいよ。
MP:アイオナの次の作品がほんとうに楽しみです。11月に収録するというDVDについても教えてください。
デイヴ:すでにアイオナ用の新曲は書きはじめているし、ヨーロッパで何度かツアーも行っている。11月にロンドンでDVD用のライヴ映像を収録するんだ。すっごく楽しみにしているし、なんとか来年には曲を書きおえて、次ぎの作品のレコーディングに入りたいと思っている。来年中にはリリースしたいけど、まだなんとも言えないね。でも半分くらいの曲はもうできているし・・またバンドとして日本に戻って来たいからね。
11月18日にロンドン大学でのコンサートを収録するんだけど、ものすごく楽しみなんだ。ただし時間がなくってね。チケットがちゃんと売れるか心配したんだけど、どうやら好調で安心しているところだ。ドイツのツアーから戻って準備する期間がすごく短いから、とても心配ではあるんだけど、ベストをつくすつもりだ。すべてのアイオナのアルバムから演奏するつもりだし、またバンドのライブででしか得られないエネルギーや雰囲気みたいなものを収められたらいいと思っている。
元アラームのマイク・ピーターズの会社がシューティングしてくれるんだけど、カメラ5、6台にクレーンまで入るのさ。おそらくカッコよいものに仕上がると思っている。インタビューやバックステージの様子とかもおさめる予定だし。それからホームページ(英国のホームページ)で、このDVDの先行予約を受け付けているんだけど、予約してくれたファンの人には感謝でいっぱいだよ。
(MP:このDVDは、もちろんTHE MUSIC PLANTでも発売になりますので、どうぞよろしく!)
(2004年11月 インタビュー、Eメールにて)