内田(以下、内):ヒストリーその他については充分な資料をいただいてますし、まずは昨日(17日)ライブパフォーマンスについてお話したいんですが、実は昨日ですが、私はまったく音楽のコアなファンではない友人を8人ばかりつれていったんですよ。ケルトとかロックとかプログレッシブとかまったく関係ない人たちなんだけど、ライブの後その人たちに話をきいたんですけど、すばらしいパフォーマンスだったとすごく気に入ってくれていたんですよ。アイオナのようなこういう音楽って割とカテゴラリー分けされる傾向があると思うんですけど、まったく壁がなくなった、というか、「また来たい」と皆、言ってくれました。そういったライブをやられた、というのは、本当にすばらしかったと思うんですけど。
デイヴ(以下D):そうだね、それは素晴らしいね。たしかに僕やトロイは他のメンバーよりもティーンエイジャーころからプログレッシブ・ロックを聞いたりする傾向にあったと思うんだけど、あとクラシック音楽とかね、特に英国のクラシック音楽とか。でもジョアンヌはもっとシンガー/ソングライター的バックグラウンドから来た人で、スティングとかジョニ・ミッチェルとか好きで。で、一方フィルはもっとジャズ、ロック、ファンクの方からきた人で、最近はフォークもきいていて・・フランクはクラシックのバックグランドからきた人だけど本当に沢山の人と演奏しているし、ドラムについてはジャズロックとか好きだし。で、僕ら全員ケルティック・フォークの影響もあるし、アイオナの音楽はそういったものの共同隊だと思うよ。
内:アイオナのような音楽は一言で説明しようとすると難しいんですけど、複雑な音楽でもあるし、でも一方でたくさんの入り口があるからライブで聞いて、「ああ、いいな」って皆思うんでしょうね。
D:そうだね。まぁ、複雑ということに関しては僕らも難しくしようと思って曲を書いているわけじゃないんだけど、アイオナの音楽において、僕らがどういうふうに感じてそれをどういうふうに伝えたいか、そして人々とそれをどうコミュニケートするか、ということが大切なんだよね。ある曲は音数が多くてすごく複雑だけど、ある曲はシンプルだし・・。技術的なものではなくて、自分たちのあらわしたいエネルギーが大事で、それが人の心に伝わるんじゃないかな。特にトラディショナルなアイリッシュ・ミュージックの僕らの解釈とかね、それが今の人々の心に伝わるといいなぁ、と。で、バンドのコントラストもあると思う。そういう曲とスローでもっとメロディックな曲と、静かな曲と。だけど重要なのは、人々にそれを伝えるってことだと思う。あともう1つのポイントは、音楽にスペースをもたせること。複雑な音量のあるものばかりだと、聴く人が振り返って考えてみる余裕がない。だからスローで静かな曲もいれて、違うフィーリングを与えて音楽について考えたり、歌詞の内容をふりかえってもらえる場所を作ったりしたりいるいるんだよ。
内:今のケルト・ミュージックは割とアンビエントな音が多くて、ロック・バンド的なエネルギーを発散するって今までなかったと思うんですよね。で、そこにこのバンドの本質があると思うんですよね。非常なエモーショナルな中にケルトの要素っていうのが自然にとけあっている、というか、そこが非常にロック・バンド的、という気がします。前にエンヤに話をきいたときに、自分の音をライブパフォーマンスするのはほぼ不可能だ、と。大きなオーケストラでやらないとできないといったんですけど。そういった音が5ピース、6ピースのロックバンドがやりえた、というところが、ほんとうに素晴らしい。
D:特にトロイがフルタイムで参加するようになって、パイプとエレキ・ギターとのユニゾンですすむとか、ユニークサウンドを作りだせるようになった。あとそれから僕のバックグラウンドは、もっとどっちかというとロックギターで、14才くらいのときはディープ・パープルとかマハビシュヌ・オーケストラとか一生懸命聴いてた。トロイもこういうのをきいてたし、それから伝統音楽も・・だからそういう楽器をつかうのは僕らにとってとても、自然なことだった。だからそれらが、トラディショナルな曲が持っているエネルギーとつながるんだと思うけど、もともと曲が書かれた時はアコーステイックな楽器だけだなわけだけど、エレクトリックのもの、ロックというファンクションでやってみたら、より力強く表現されるものがあった、というのが僕らの個性だと思う。
その一方で、他のロック・バンドとの違いは、多くのロック・ミュージックが、エゴと個性のぶつかりあいだったりするけど、僕らは伝統をふまえているところから、ステージ上で自分がどうだ、ということは全くないんだ。僕らが表現する音楽が重要なのであって。そこが精神的な面での他のロックバンドと違うところかな。
内:トロイはものすごく売れっ子のセッションマンとなっていて、おそらく彼がバントメンバーとして定着したのはアイオナが最初だったのではないか、と。昨日のトロイのパフォーマンスはすごく目をひいたみたいで、まったく音楽は素人の女の子なんですけど、なんか「あの左端にいたクリントンに似た人が(笑)楽器を持ち替えてすごかった」という感想を言ってました。で、しかも「全部、変な楽器」と。そういう印象っていうのは、すごく新鮮なんですよね。
D:1987年から1992年くらいまでトロイはユー・スロースというバンドにいたんだけど、彼等はすごく人気があったんだよ。実はアイオナにちょっと似てたけど、ほとんどインスト主体のバンドをやってた。彼自身、ちょっと歌ったりもしていてね。ヴァイオリン、ブズーキ、ドラマー、キーボード二人みたいな編成だった。彼らは当時フォークロックシーンですごく成功したバンドだった。ツアーがあまりに忙しくて、レコード会社にだまされて、落ち込んでで・・はじめて僕がトロイにあったとき、彼はそのバンドにまだいたんだけどね。1992年以降はずっとセッションワークが中心だから、それ以降はアイオナだね。で、95年からパーマネント・メンバーだ。
トロイはすごいよね・・彼は最初はキーボードもつかったり、アコースティクギターをやったり、そしたらさすがに手いっぱいになってきちゃって。どこで何をひくか、というのを覚えておくのがあんまり得意じゃないんで、それで違う楽器をひきはじめちゃったりしてね、だから、あれでもだいぶ省略しているんだけどね。
内:アイオナに定着して以降に、彼は急に仕事が増えたんんじゃないかなぁ。この5、6年やたらひっぱりダコですよね。
D:そうかもね。アイオナのせいかどうかはわからないけど。
内:マディ・プライヤ(元スティールアイ・スパン)のバックには、アイオナのメンバーが3、4人いるんですよね?
D:あぁ、それはトロイがCDがプロデュースしてたから。トロイはマディのアルバムをここ3枚くらいコ・プロデュースしている。タール・ブライアントとかニック・ベックスとかをひっぱってきたのはトロイの差し金だね。ライブはだいたい3人でやっているよ。マディとキーボード・プレイヤー(ニック・ホランド)とそれとトロイって編成。
そういえばトロイはビーチ・ボーイズとやった経験があるんだよ。あとステイタス・クォーとも。ステイタスクォーの30周年のツアービデオを2、3年前に作った時に、ALL AOURND MY HATの新しいヴァージョンを演奏してね。で、トロイがそのビデオにでているよ。
内:あぁ、そのビデオみました!
D:それからクイーンのブライアン・メイともやった。ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンと知り合って、それでセッションに呼ばれたりしてね、すごいよね。僕はといえばね、アイオナがはじまる前に80年代に、ジャック・ブルースのバンドにいて、イギリス、イタリア、ギリシャをツアーしたよ。それからグロリア・ゲイナーのバックでディスコの曲をやったりもしたんだよ。「I will survive」ってヒット曲がある・・僕はキーボード奏者だったんだ。信じてもらえないかもしれないけど。
内:25年前とかそんなんですよね。あのシングルヒットは・・
D:そうだね。
内:すごい人脈ですけど、アイオナのアルバムをみても、すごいメンツが参加してますよね。よく言われると思うけど、ロバート・フリップが参加しているよね。モイア・ブレナン、ティム・ハリーズ(元ビル・ブラッフォード・アースワークス、現スティールアイ・スパン)・・。で、今回のビリー・ジャクソン。いろんなバンクグラウンドがある人たちだけど、アイオナに参加することによって、そこでしかできない面を引き出している、というか、いい仕事をしてますよね。特にアイオナの最初のころの作品ってゲストが多かったと思うんですけど、バンドでライブにおいて再現するのは大変かな、と思ってたんですが、最初からバンド活動を意識して作られてたんですか?
D:さすがにモイア・ブレナンが歌ったところはサンプルしようかと思ったんだけど、結局、使わなかったね。他のパート、たとえばビリー・ジャクソンがやったハープの部分とかはでも彼のやった半分くらいかな、サンプルさせてくれたんで、それをとってあって、キーボードで再現したりしているよ。
内:サポートのミュージシャン、ゲストを選ぶ基準は?
D:だいたいは素材、曲に何が必要か、ってことが先だね。この人入れたら売れるかな、っていうところでは選ばないよ(笑)。結果的にそうなることはあるけどね。だいたい音楽的な理由から選んでいるよ。たとえばロバート・フリップの時は、ニック・ベックスが彼を知ってたんで、ニックは(ロバートの奥さんの)トーヤ・ウィルコックスと仕事をしてただけど、ニックがロバートにアイオナの最初の二枚のCDを渡そうとしたら、「あ、これだったらいつも風呂で聴いてる」って言われたんだって(笑)。それで話がすすんで、ぜひやりたいって言ってくれたんだ。それで僕らが「BEYOND THESE SHORE」を作っているときに彼らしいアンビエントな感じのギターをどこに使えばいいか、ずっと考えてた。
「JOURNEY INTO THE MOAN」を作った時は・・モイア・ブレナンはコンサートに来てくれたんで・・僕らがダブリンでやった時に、そしたら共通の友人もいたりしてね。で、アルバムを作るときに8世紀のヴァージョンのBE THOU MY VISION(BI-SE I MO SHUIL)をやることにしたんだけど、僕の知っているゲール語を流暢に話せる人って結局モイアしかいなかったんだよね。それで彼女にジョアンヌのゲール語のヴォーカルの指導をしてもらおう、ということになったんだけど、コーチするんだったら一緒に歌ったら、ってことになって(笑)。本人もすごく喜んでやってくれたんで、よかったよ。
でね、実際ね、彼女は最近バイオグラフィー本がでたんだけど、彼女がその中で言っているのはね、それが彼女がクリスチャンバンドと一緒に歌ったはじめての経験だったんだって。で、すごくその時は緊張してやったんだ、と。でも、それが彼女がケルトの聖人、パトリック、コロンバなどをより知るきっかけになったんだって。つまりそれまでは、そっち方面のアイルランドのヘリティジを研究してなかったんだって。ところが今じゃ彼女のソロ活動はそっちの方面をむいているでしょ。それが、実はあのセッションがきっかけでそっちの方に興味をもったってことがその本に書いてあって、すごくうれしかったよ。
野崎:あぁ、確かに彼女のここ二枚ってケルトとクリスチャニティがコンセプトですもんね。
D:電話で話してて言われたよ、「あなたたちのせいよ!」ってね(笑)
内:はまっちゃったんでしょうねぇ(笑)。ミュージシャン自身の感覚/考え方のセンスみたいなものがひろがっていくって感じがやっぱりアイオナのバンドのふところの広さとか感じるんですよね。
D:ロバート・フィリップとやったときも、そうだけど、彼の演奏は僕にすごく影響をあたえているから、サウンドとか、演奏方法とか・・だから結局のところ、両方影響を与え合っているんだとは思うよ。
そういえば、イギリスのバースで彼とセッションをやったんだけど、たくさんラックをもってきててねー。これがビルの上で、5階くらいの階段をあげなくちゃいけなくて大変だったんだよねー。でもそれだけの価値はあったけどね。
内:それから、デイビット・ロードのスタジオ(ピーター・ハミル等が使用している)かなぁ?
D:あ、それじゃない。もっと古いスタジオだったけど。リアル・ワールドでもないよ。エンジニアに知り合いがいるんで見学にいったことはあるけど、すごい高くて使ったことないね(笑)。
内:あと作品の話ですが、「オープンスカイ」がでるまでに長くかかりましたよね。3、4枚目がでる時も数年まったけど・・まぁ数年かけてアイディアねりこんで、ってことなんでしょうけど・・でも、それにしても、なんでこんなに時間がかかるのかなぁ、と。(笑)
D:そうだねー。間にオーケストラとのアルバムをやるってプロジェクトがあってね、それが結構時間がかかって、もともと97年にやろうとしてた企画だったんだ。そのアレンジとかが結構時間かかっちゃってね。で、スタジオ盤をすぐ作ろうとはしてたんだけど、僕らのレコード会社が僕らのアルバムを99年発売って設定しちゃってたから、何がなんでもやらなきゃいけない状態になっちゃってて。99年は新曲よりもこのアルバムにとられちゃったね。それに「JOURNEY INTO THE MOAN」の後は、ツアーが多くて、96年、97年は本当に大変だったから、曲を書く余裕もなかったしね。
内:次の作品のアルバムのアイディアなんて何かあるんでしょうか。
D:もう2曲くらいレコーディングしてない曲があって、「オープン・スカイ」の時に書いた曲なんだけど、今回いれなかったから、次のアルバムに入れる予定だよ。昨日も演奏したんだけど、ゲーリックの古い賛美歌で、ゲール語のタイトルなんだけど、英語にすると「ANGEL OF GOD」っていうタイトルの曲。それはロウ・ホイッスルとキーボードだけでやった曲だよ。それから4月に皆で集まって曲を書くライティング・セッションをやることになっている。それが終わると次のアルバムのレコーディングに入るよ。新しいマネージャーにお尻を蹴られているしね!
内:ところでデイヴ自身がソロを作るとしたらどんなものをやりたいですか?
D:いくつかアイディアはあるよ。時間の問題なんだけどね。小さい子供も二人いるし。少なくともそのうち一人が学校に行ってくれないとね。
内:たとえば「こんなのつくりたい」みたいな希望みたいなものでも。
D:実はアコースティックの曲を何曲を書いているんだけどね。ソロ・アコースティックアルバムを作りたいね。ギター・マガジンみたいな雑誌の付録用のCDのためにいくつか書いたりしたんだけど、それがよかったんで、もっと書きたいな、と。あと実は今度引っ越すんだけど、そこに結構大きな部屋があってスタジオをつくる予定なんだよ。今は寝室でコソコソやっている状態だからね。そこでいろいろ作業ができると思う。
内:青山でやったアコースティックライブ思ったんですけど、メロディアスな曲に対しての、すごくロック・オリエンテッドなアレンジが良くて、それがトラディショナルとは違う叙情性を出しているかな、と思ったんです。伝統的なケルティック・バラードだけにはない、すごく叙情的なチューンになっている。やっぱりロックバンドだっていうのが、ものすごくいい意味でとけあってますよね。だからかえってあの日のようなアコースティック・ライブを企画した、ってすごくいい企画だな、と。
D:去年短い映画の曲を書いたんだけどね、それはほとんどストリングスカルテッドだったんだよ。短い映画でね、第一次世界大戦、ウルフエッド・オーエンという、イギリスではそこで戦死した有名な人なんだけど、すごく若くして、25才で死んだんだけどね、彼の書いた詩が有名なんだよ。その戦争の現実みたいなのを書いたりして、そのサウンドトラックを頼まれて。その中の一つはね、アコースティックの曲なんだけど、今、言われた事をその曲で、ふくらませてみようかなぁ。だからソロアルバムを好きなようにやるとしたら、ロックギターあり、ストリングス・カルテットありの、かなりすごいものになってしまうね。
内:それボックスセットにしたらどうですかね。
D:それを売るヨーコが大変なことになってしまうね(笑)。
内:そうですか。僕も協力しますよ。そういや、マンダラのライブでやった「CHI RO」すごくよかったですよねぇー。
D:あぁ、悪くなかったよね。ライブでやるのはすごくトリッキーな曲なんだよね。あれは違うチューニングでレコーディングしたりしているから、スタンダードチューニングでやらざるをやらざるをえない。(あの曲でギターを演奏する)ジョアンヌと僕にとってはすごいチャレンジだ。
内:聴いてた方は、マンダラの独特な雰囲気で、ロックのステージで聴くのとはまた違うし。アコースティックのあのライブは聴いている方にとっては、ものすごくよかったんですよ。
D:トロイがすごくがんばってくれたよね。ジョーがちょっと関節を悪くしてアコースティックギターを演奏できない部分があって、彼女が普段は演奏するんだけど、あの時はトロイが急遽あの曲を習って、かわりに演奏してくれたんだ。
内:最後なんですけど、実は昨日きた連中の中に婚約中のカップルがいまして「IRISH DAY」でえらく雰囲気が盛り上がった、と。で、もしあのまま幸せにゴールインできるのであれば、あの曲が彼等に幸せを運んだんじゃないかと。結婚式に使うんじゃないかな。
D:それはよかった。いや〜実際、ウチらの曲はよく結婚式とか、あとお葬式でもよく使われるんだよね!(笑)
インタビュアーの内田哲雄さんとデイヴ・ベインブリッジ。
内田さん、本当にありがとうございました!
来日公演応援スペシャル企画
●デイヴ・ベインブリッジ来日直前インタビュー●応援メッセージ:ミュージシャン/心斎橋kasaya.com
代表 宮武和広 ●応援メッセージ:コンポーザー&アレンジャー 光田康典
●応援メッセージ:ケルティックミュージックオンライン 藤田敏幸
●応援メッセージ:THE MUSIC PLANT 野崎洋子●
来日公演終了後の企画
●デイヴ・ベインブリッジ、ライターの内田哲雄氏によるインタビュー●ツアーレポート●ライブ・レビュー●