アイオナの傑作「オープン・スカイ」から4年。バンドの中心人物、デイヴ・ベインブリッジが満を持して放つ、至高のケルティック・プログレッシヴ・ロック・ミュージック!
優しく詩情溢れるエアーから、デイヴのギターが炸裂するヘビーなナンバーまで、ほとんどアイオナそのもの。11曲目
'Until the Tide Turns' ではジョアンヌ・ホッグの歌も聴ける。全てのアイオナ・ファンに捧げるデイヴの初ソロ・アルバム。
アイオナのギタリスト兼キーボーディストであり、バンドのリーダーを務めるデイヴ・ベインブリッジ初のソロ・アルバムをお届けする。
アイオナの「オープン・スカイ」が発表されたのが、2000年の6月だから、あれからもうほとんど4年の歳月が流れたことになる。翌年2月には、THE
MUSIC PLANT (本作の国内発売元)の招聘によって初めての来日公演が実現し、我々を感動の渦に巻きこんだことはもはや伝説となっている。その後、ジョアンヌの2度の妊娠によってバンドの活動はしばらく休止状態となったが、デイヴにはやるべき仕事が山積していた。まずはバンドの自主レーベル
Open Sky を立ち上げることだった。アイオナの初期のアルバム3枚の権利関係を解消し、経年劣化によって痛みの激しいマスターテープをデジタル化して、新録音を加えながらリミックスを施しリマスター盤を完成させた。これにボーナス音源を加えた4枚組ボックスセット「ザ・リヴァー・フロウズ」は自主レーベル
Open Sky からの第1弾として2002年に発売された。2003年春には 'Songs for
Luca' という自閉症に病むベインブリッジ夫妻の息子ルカの治療費用捻出のために企画されたチャリティ・コンピレーション・アルバムをリリース。並行して本作、デイヴのソロ・アルバムの企画が進められた。
その話に入る前にここで少しデイヴの経歴をたどってみよう。('The Eye
of the Eagle' のライナーノートに私が書いた文章を引用させてもらう)デイヴはイングランド北東部のダーリントンの生まれ。8才の時からピアノを、そして13才からギターを習い始める。14才でキリスト教に入信。その後リーズ音楽大学に進学して、大学のバンドを中心に、作曲、編曲、レコーディング、演奏、プロデュースなど多方面で活動する。この時期には多くのコマーシャル・フィルム用の音楽を手がけている。80年代中頃から90年代初めにかけては、BBCラジオ2の音楽番組をはじめ、イギリスやアメリカ、ヨーロッパのブルース・ミュージシャンのバックを務めた。一方、大学の友人を通じて、敬愛するシンガーソングライター、エイドリアン・スネルに出会い、ミュージカル「アルファ&オメガ」に参加する。そこで出会ったデイヴィッド・フィッツジェラルドおよびジョアンヌ・ホッグとともに89年にアイオナを結成。以来アイオナの中核として活躍を続けている。アイオナとしてはや15年に及ぶキャリアの中で本作は初めてのソロ・アルバムということになる。
本作のタイトル 'Veil of Gossamer'「ゴッサマー(薄い紗)のベール」というのは、デイヴによると「この世とあの世(天国)を隔てるもの」を表しているという。つまり、この世と天国は遠く隔絶しているものではなくて、近くにあって薄いベールを通して互いに絡み合っているものだという。4世紀から5世紀以降のキリスト教化したケルト民族は日常生活のあらゆる場所に神の徴を見たというが、神はいつも人々のすぐ傍にいてその気になりさえすれば誰にでも神の存在を知ることが出来るということを、このタイトルは表している。このケルト的なキリスト教の考えはとりもなおさずアイオナのデビュー以来の哲学そのものであると言ってよい。
作曲、編曲については、ほぼ全てがデイヴ自身の担当だが、歌詞はゲール語の部分が
'Carmina Gadelica' という古いケルトの祈祷集からの引用であり、英語の部分がケルト的キリスト教の詩人デイヴィッド・アダムの詩からの引用である。デイヴィッド・アダムはデイヴが以前から傾倒している詩人であり、98年のデイヴィッド・フィッツジェラルドとの共作アルバム
'the eye of the eagle' はデイヴィッド・アダム自身の詩の朗読に2人のミュージシャンが音楽を付けたものであった。
次にサポート・ミュージシャンを紹介しよう。言うまでもなくアイオナの関係者がこぞって参加している。まずはリード・ヴォーカルにアイオナの顔であるジョアンヌ・ホッグ、ただ彼女は二人の子供の出産という大仕事があったので、もう一人、グラスゴー出身のベテラン、陰りのある美しいケルティック・ヴォイスが魅力のメイ・マッケナが起用されている。イーリアン・パイプス、ティン・ホイッスル、ローホイッスルというケルトの伝統楽器担当は最近アイオナでもますます重要な存在となりつつある、トロイ・ドノックリー。(デイヴとトロイは昨年10月に2人でのコンサートを行っているが、これがかなり好評だった。アイオナの作品やトロイのソロ曲とともに本作に収録されたデイヴのソロ曲も一足早く披露されたようだ)ベースは、ともにアイオナのメンバーだった、ニック・ベッグズとティム・ハリーズ。ドラムには現アイオナのドラマー、フランク・ヴァン・エッセン。この他、ストリングスやチェロ独奏、パーカッションやバッキング・ヴォーカルなどにゲスト・ミュージシャンを起用している。
では順に曲目を紹介していこう。
1曲目 'Chanting Waves' はメイ・マッケナの神秘的なゲール語の歌で始まる。「かつて私がこの世に生まれたときにも立ち会ってくださったのだから、どうか旅路を終えるこの時も傍にいてください」という神への呼びかけが歌われる。静謐さ漂うなかに空間の広がりを感じさせる重厚な音作りである。
2曲目 'Over the Waters' では一転して小気味よいテンポに乗ってデイヴのエレクトリック・ギターが炸裂する。これはもうアイオナそのままの音だ。アイオナならばトロイのイーリアン・パイプスとのユニゾンになるところだが、ここでの主役はさすがにギターだ。並外れたテクニックも素晴らしいが、彼のギターが存分に味わえるのはソロ・アルバムならでは。ギター・フリークにはたまらない傑作だ。
デイヴのピアノとウィリアム・スコフィールドのチェロの2重奏で始まる3曲目はタイトル・トラックの
'Veil of Gossamer'。トロイのティン・ホイッスルやストリングスも絡んできて幽玄な情景が描写される。神の存在を身近に感じるというケルト的な世界を描写したものだろうか。
鳥の鳴き声のSEに続いて、アコースティック・ギター2本(ともにデイヴ)が小曲
'The Seen and the Unseen' を奏でる。清冽ですがすがしさに溢れる曲だ。
5曲目からの組曲形式の大作 'The Everlasting Hills' は前半の山場だ。組曲はチェロによる主題に始まり、次にデイヴのエレクトリック・ギターによる変奏が繰り広げられる。パート2では、アルバム冒頭と同じゲール語による祈祷がリプライズされ、その上にデイヴィッド・アダムの詩が重なる。「私の上にいて、私をかくまってください。私の下にいて、私を支えてください。私の後ろにいて、私に道を教えてください。私の前にいて、私を導いてください。・・・」囁き声はこう神に呼びかける。パート3では、再びチェロによる主題に導かれてコーラスやエレクトリック・ギターによる変奏が続くが、途中でドラマティックなドラムが曲の流れを変える。パート4はデイヴのピアノがさざ波のような美しい情景を描写する。パート5では打って変わって、軽快なテンポのドラミングに乗って主題が繰り返されフィナーレを迎える。
10曲目、アコースティック・ギターによる小曲 'Seahouses' に続いて、ジョアンヌ・ホッグがリード・ヴォーカルをとる
11曲目 'Until the Tide Turns' が始まる。「遠くにあるものが近くなり、離れているものが近づき、外にあるものが中に入るまで、主よ、私は潮が変わるのを待ちます」という歌詞はデイヴィッド・アダムの詩からの引用だ。最近はアイオナ以外の、例えばゲーム音楽の主題歌としても起用されるジョアンヌの歌はやはり素晴らしい。
12曲目 'The Homeward Race' は再びデイヴのエレクトリック・ギターの一人舞台だ。フランク・ヴァン・エッセンのドラムとティム・ハリーズのベースがアップテンポのこの曲をしっかりとサポートしている。マルチプレーヤとして何でも弾きこなすデイヴだが、この曲を聞いていると、ギターパートへの思い入れの深さがひしひしと伝わってくる。
13曲目からは、アルバムの最後を飾る組曲 'Star-Filled Skies' に突入する。パート1はメイ・マッケナによるゲール語の歌で、これも1曲目と同じテキストからの引用である。パート2はぐっと雰囲気が変わって、ノリのいいアイオナ流ジグが軽快に演奏される。この類のアイオナ流アイリッシュ・トラディショナル・ダンスミュージックはアイオナのライヴでは定番で、もちろん聴衆の受けもいい。パート3ではまたまた雰囲気が一転して、チェロとストリングスによる弦楽曲といった趣になる。後半ではトロイのロー・ホイッスルが組曲をクライマックスへと導いていく。ラストのパート4ではゆったりとしたリズムに乗ってデイヴのギターがリードを取る。バックの男性コーラスはクリス・ヘイルによる即興ヴォーカルで、その中にウルドゥ語でキリストを表す
'Daya Sagar' という言葉が聞こえてくる。最後にメイ・マッケナの歌う 'Chanting
Waves' がリプライズして組曲は幕となる。
アイオナ関連のソロ・アルバムのなかでは、本作が最もアイオナらしい雰囲気を持っている、というかアイオナそのままであるという感想を持ったがどうだろう。つまりアイオナというバンドで、それだけデイヴの担っている役割が大きいということだ。もちろん本作には、例えば、2つの組曲に見られる独自の工夫とか、アコースティック・ギターによるソロ・ナンバーとか、ソロならではの取り組みも見られるものの、全体としては美しく緻密な、まさにアイオナの音世界が構築されている。一般にソロ・アルバムというと、自分の楽器に執着するあまり全体のバランスを損ねてしまう場合があるが、本作にはそれがない。これはおそらく、デイヴが全体の構成を一段上から見渡すことの出来る人であるからではなかろうか。まったく、音作りに関しては大変頑固な人で、手を抜くと言うところがない。何をするにも完璧主義で、音はもちろんのこと、ジャケットの装丁や解説の中身に至るまで、その隅々にまで目を光らせている。しかも全体のバランス感覚も忘れない。本作も含めてアイオナの作品は、デイヴのそういう優れた資質抜きには達成しえないものであろう。
さて、ファンというものは欲張りなもので、デイヴのソロがこれだけ良ければ、当然アイオナの新作にも期待したくなる。先に紹介したトロイとの2人のギグでは、その新作に含まれる予定の曲も披露されたそうだ。アイオナとしてのコンサートもこの秋からは本格化するようだし、ニューアルバムはいつ出るのか、また再来日はいつかと期待ばかりが膨らんでしまう。その答えは、改めて
THE MUSIC PLANT さんに聞くとして、今宵はもうしばらく Veil of Gossamer の世界に浸っていることにしたい。
2004年5月
ケルティック・ミュージック・オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~pt9t-fjt/
藤田 敏幸
●追記
今年3月に行われたデイヴ・ベインブリッジへのインタビューが本国のアイオナ・オフィシャル・サイトに掲載されている。本稿を書くにあたり参考にさせていただいたが、彼とケルト的キリスト教との関わりが詳しく語られているので興味のある向きには御一読をお薦めする。
「音楽が人を感動させる」。一見ありきたりなような言葉だが、これって凄いことだと思いませんか? 現象だけを追ってみれば、音楽の本質はいくつかの波長が組み合わさった「音波」と呼ばれる空気の振動が鼓膜を振動させて感覚を中枢へと伝わるもので、また喜怒哀楽をはじめとする様々な感情の変化もタンパク質や化学物質を媒介とした電気信号によってもたらされるものだ。しかし、テクノロジーが目まぐるしく進歩した現在においても未だ解明されていないのが人の心の「揺らぎ」であり、「心」ある人が作り上げた音楽にもまたサイエンスでは割り切れない微妙な要素が内包しているのではないか、と近頃つとに考えるようになった。全く同じ音楽を聴いてもその感じ方は人によって千差万別だし、いい音楽家がツアーを行うと演奏がライヴごとに異なって聞こえるのは演奏者の「揺らぎ」が重大な要因とされている。こういう話を聞いていると、音楽とは送り手、そして聴き手のDNAとシンクロしているのではないか、いや、実はそれ自身が生命を持っているのではないか、などと思ったりするのである。太古の昔からある時は安らぎを与え、ある時は感情を鼓舞し、またあるときには恐怖を煽ったりと常に人の心と密着してきた音楽。現実、荒んだ世の中になったと言われる昨今でも記憶喪失の患者が好きな歌を耳にして記憶を取り戻したとか、絶望の淵から救われたといったエピソードを聞くたびにその生命力に満ちたパワーを再認識させられるのだ。
思い入れが高じていきなりの書き出しになってしまったけれど、今回スタジオ盤としては実に4年半ぶりとなるアイオナ(IONA)のニュー・アルバム「オープン・スカイ」は久々に心の底から「感動」できる作品として、個人的にはオランダのフレアークの最新作と並ぶ2000年上期最大の収穫であった。ケルト・ミュージックの深淵なムードをたたえつつ劇的に盛り上がっていく楽曲は終始力強さと躍動感に溢れており、いやがおうにも「理屈抜き」(ここがポイント)の高揚感をもたらしてしまう。アイオナと言えばアイリッシュ・トラッドの要素を取り入れているとか、美声の女性シンガーがいるとか、ロバート・フリップ(キング・クリムゾン)やニック・ベッグス(カジャ・グー・グー)、更にはモイア・ブレナンら豪華ゲストの参加などで何かと話題の多いグループであったが、これはあくまで二次的なものに過ぎず、彼らの魅力の本質はトラッドやロック、ポップスの枠を越えた「発散する」ナチュラル・パワーであることがこのアルバムを聴けばおわかりいただけるだろうと思う。サウンドこそ異なるが、その外へと向かうエネルギーは日本が誇るプログレッシヴ・・ロック・バンド、ケンソーあたりにも通じる爽快さすら感じるほどだ。だからこそジャンルを問わず幅広い層のリスナーに是非お薦めしたい。
さて、久々の国内盤登場となるアイオナの経歴について詳細な説明を加えておこう。結成のきっかけは'86年、ロック・ギタリストであるデイヴ・バインブリッジ、クラシック出身のピアニスト、エイドリアン・スネル、フルート奏者のデイヴ・フィッツジェラルドの3名がクラシカルなセッション・アルバム「アルパ・オメガ」制作に当たってシンガーを物色したことから始まる。スネルはその2年前の'84年、とある教会の音楽セミナーで出会った美しい声を持つ女性のことを思い出し、参加を要請するためにスタジオへと呼び出す。この女性こそがその後看板シンガーとしてバンドを引っ張ることになるジョアンヌ・ホッグその人なのであった。そして素晴らしいフロントを得た彼らはこのプロジェクトを発展、スネルは裏方へと回った。そしてスコットランドの島の名前からバンド名をIONAとし、'90年に待望のデビュー・アルバムをリリースする。その後カジャ・グー・グーのベーシストでチャップマン・スティックの名手でもあるニック・ベッグス、ドラマーのタール・ブライアント、そしてフィッツジェラルドに代わり、アイリッシュ・パイプ奏者のトロイ・ドノックリーを加えてバンドとしてのフォーマットを固め以後順調に「Book Of Kells」('92年)、「Beyond These Shores」('93年)、「Journey Into The Morn」('95年)をリリース、コンテンポラリー・ケルト・ポップの代表格として高い人気を得ることになる(イオナのバンド名で国内発売もされていた)。ここで重要なのは、メンバーのうちトロイ以外はトラディショナル・ミュージックに関する下地がなかったこと、すなわちケルトの色合いは「素材として」取り入れていたということだ。彼らはロックを演奏していると意識が強かったため、これがむしろバンドの発散力を強める結果となったのは大きかった。紅一点、ジョアンヌのヴォイスは当時解散したオール・アバウト・イヴのジュリアンヌ・リーガンに声が似ていると評判になり、日本における'80sのUKポップ・ファンからも支持を受けていたのは意外であった。そして集大成となるライヴ・アルバム「Heavens Bright Sun」をリリースした後、バンドにターニング・ポイントが訪れる。このライヴ盤では既にベーシストがニックからフィル・バーカーへとチェンジしていたが、リズムの要であったタールもソロ活動のためにグループを去ってしまうのだ。時を同じくしてスタジオ盤制作(つまり本作)をもくろんでいた彼らはこの計画を延期、おのおのがソロ・プロジェクトへと入ることになる。バインブリッジは旧友フィッツジェラルドと共にコンセプト・アルバム「Eye Of The Eagle」を完成。クラシカルな色合いを帯びた荘厳な作品で、大聖堂を借り切ってライヴ・パフォーマンスなども行っている。ドノックリーもパイプをはじめとしたマルチ・ケルト・インストゥルメンタリストとしてより受け口の広いソロ・アルバム「The Unseen Streem」を発表、またジョアンヌも待望のソロ・アルバム「Looking into Light」でシンガーとしての新境地を開いている。どれも良い出来なので一聴をおすすめしたいが、特にジョアンヌのソロは新作を待ってやきもきしているファンにはたまらないプレゼントとなった。因みにドノックリーと元メンバーのニック、タールはスティーライ・スパンを脱退してソロ活動に入ったマディ・プライアーのサポートも行った。またジョアンヌはプレイステーションの壮大なロールプレイング・ゲーム、「ゼノギアス」のエンディングテーマを歌っており、筆者などはこれを聴きたいばっかりに4ヶ月かけて大苦心の末ゲームを終了させた経験を持っている。
こうしてメンバーが独立独歩の道を進む中、'99年にアイオナとオール・ソウルズ・オーケストラの名義で2作目のライヴ・アルバム「Woven
Cord」が突如リリースされ、ファンを(私も)大いに驚かせた。この作品はライヴ・レコーディングのためにオーケストラを帯同して行われたスペシャル・ギグを収録したもので、ダイナミックさを増した旧楽曲をオーケストラがエスコートするという何とも贅沢な作りになっており、どの曲もベスト・テイクと言える素晴らしい出来映えとなった。そしてここに収録された新曲が明らかに本作への布石となった。かくして構想から3年余の歳月を費やした最新作「オープン・スカイ」、満を持しての登場である。これまでたまりにたまったエネルギーを吐き出すかのようにパワフル、そして緻密に作り込んだサウンドは文句なく会心の出来と断言できる傑作となった。
メンバーはデイヴ、ジョアンヌ、トロイ、フィルの不動のメンバーに'97年から加入のベーシスト、フィル。そして前作から加入のオランダ人ドラマー、フランク・ファン・エッセン。このフランクの加入は新機軸で、ドライヴ感に富んだドラミングはバンドに新たな風を吹き込み、また曲によってはフィドルも弾くという活躍ぶりだ。ゲストは今回は1名と少ないが、これが何とスコットランドの重鎮フォーク・バンド、オシアンのビリー・ジャクソンというのだから驚き(ブリティッシュ・ロック・ファンにはメイ・マッケンナのいたコントラバンドのメンバーと言った方がピンと来るかも)。スコティッシュ・ハープの一種であるクラルサッハを弾き、若々しいバンドに円熟の深みを加えている。楽曲は11曲、どれも粒ぞろいで捨て曲はいっさいなし。前ライヴ盤のタイトルにもなったスリリングなオープニング・チューンから一気に彼らの世界に魅きこまれる。ジョアンヌの歌唱が光る開放的な「WAVE
AFTER WAVE」、メロディが涙ものの「OPEN SKY」。続く「CASTLERIGG」はトロイのパイプによって煽られるリールから徐々にフィドルとギター、ジョアンヌのヴォイスが幻想空間を紡ぎ、再びダンス・チューンへと戻る曲構成が見事。ポップさを加味した「LIGHT
REFLECTED」、ビリーのハープが美しい「HINBA」と変化に富んだ進行で全く飽きさせない。そして大作「SONG
OF ASCENT」へと突入。3部構成、合計20分を越えるこのハイライト・ナンバーはアンビエントな導入部からハープとスキャットによるアコースティックな中間部、そしてリズムを交えて徐々に盛り上がる。そして「FRIENDSHIP'S
DOOR」でこれまでのフラッシュバックを交えて大団円。聞き終えた頃には相当の感動が得られているはずだ。量産型の「売るための」音楽が主流を占める中、これほど真摯な姿勢で「作り込んだ」作品を作り上げた彼らの心から拍手を送りたい。冒頭で「音楽には生命があるなどと述べたが、テクノロジーの進歩によって将来的には音楽が人を感動させるメカニズムが科学的に明らかになるかもしれない。それでは機械によってデータを解析し、人工的に音符と音色を組み合わせて万人の心を打つ音楽を作ることが出来るだろうか? 私は否だと思っている。それは人の作る音楽には常に「揺らぎ」が存在しており、このアイオナのように気持ちを込めて作り込んだ音楽には機械は所詮太刀打ちできないのだ。願わくば、このままずっと心が残り続けると信じながら。
2000.5.15 内田哲雄
マイナー時代からプッシュし続けていたバンドが次第に知名度を上げ、国内盤発売や来日公演が実現することほどファンにとって嬉しいことはない。アイオナはそんな中でもとりわけ思い入れの強い存在として筆者の心の中に刻み込まれている。というのもこのバンドのリーダー、デイヴ・ベインブリッジにはデビュー当時から手紙のやりとりを通じ、インタビューや記事作成に多大な協力を賜ったからだ。ダメもとで送った取材依頼の手紙の返事には細かい文字でびっしりと丁寧なメッセージが書かれ、そこには遠い日本で自分たちの音楽に興味を示してくれたことに対する驚きと感謝の意が記されていたのである。それがデイヴと私の交流の始まりだった。その後送られてきた膨大な資料を読むにつけ、何より彼の音楽に対する真摯な姿勢と純真無垢な人柄に強く惹かれた。「このバンドは絶対に凄いバンドに成長する」、そんな確信に近い思いが頭の中をよぎったのだ。かくして手紙の中にいつも記されていた「日本へ行くことができたら夢のようだね」という言葉は約10年の歳月を経て遂に現実のものとなったのである。2001年2月に行われた来日公演最終日の終盤、彼らの代表曲のひとつである"Irish Day"の間奏部分で思わず目頭が熱くなったことは今でも忘れることはできない。優しいジョアンヌの歌唱に続くデイヴのどこまでも高揚するギターに共鳴して、図らずも高ぶる感情を抑えられなかったのだ。終演後、ライヴとしては久々に幸せな気分を満喫することができたが、最高に嬉しかったのは終演後、多くの観衆の「良かった」という声、楽しそうな表情を見ることができたこと。すなわち多くの人たちとこの喜びを分かち合うことができたことだ(同席した知人達の中でも特に印象的だった曲が"Irish Day"だった)。振り返ればこのライヴには様々な人たちの「思い」が込められている。長年の夢だった日本のオーディエンスに最高の演奏を聴かせたいというデイヴの思い。体調不良(当時何と妊娠中であった)をおして、歌を通じてメッセージを伝えようとしたジョアンヌの思い。エネルギッシュなプレイで観衆を楽しませようと頑張ったバンド・メンバー達の思い(中には二日酔いでヘロヘロだった人もいたけど)。そして「好き」が高じて来日公演を実現させたプロモーターの「思い」。そんな気持ちが観衆の気持ちと一つになって最高のステージが出来上がったのだと思う。今貴方が手にしている「Journey Into The Morn」はその名曲"Irish Day"を収録した彼らの4作目にあたり、アイオナの名を世に広めるきっかけを作った出世作として知られている。このところ流通が滞りがちになっていたが、「オープン・スカイ」で彼らの幽幻な世界に魅せられた新規ファンの方は特に御一聴いただきたい逸品なのである。
それでは本作の各論へと話を移そう。「Journey Into The Morn」のリリースは'95年。前作「BeyondThese Shores」から約2年強のブランクを経て完成されており、トントン拍子だった前3作のペースから比べると「ずいぶん時間がかかったなあ」と当時思ったものだ。この作品にはバンドのターニング・ポイントとなるようないくつかの事柄が含まれている。まずメンバーの正規加入によってロック・バンドとしての体裁が整ったこと。これまではギターのデイヴ、シンガーのジョアンヌの他はゲスト・ミュージシャンの演奏にゆだねるパーツが多く、多少のニュー・エイジ、あるいはセッション臭が残っていた。しかし本作ではティム・ハリーズ、タール・ブライアントというロックやジャズにも明るい強力リズム・セクション、そして現在のバンドにおいても重要な役割を担っているロック系パイプ奏者のトロイ・ドノックリー(ギターやキーボードも巧みにこなす)、サックス・プレイヤーのマイク・ホウトンという凄腕ミュージシャンが続々と正式加入。ダイナミックな「ケルティック・ロック・サウンド」を奏でるグループとしてレコーディングはもとよりツアー活動もコンスタントに行うことができるようになったのである。彼らは皆現在では超売れっ子のセッションミュージシャンになっており、ティムはスティールアイ・スパンやエディ・リーダーのサポート活動(それ以前ではビル・ブラッフォードのジャズ・ユニット、アースワークスのメンバーだった)、またタールはやはり元メンバーのニック・ベッグスとともにジョン・ポール・ジョーンズのバンドのリズム・セクションに抜擢されるなどその活動ぶりは特筆に値するものがある(またタールは2001年5月に行われたスティールアイ・スパンの最終ギグにも同行した)。そしてトロイはブリティッシュ・トラッドきっての名シンガー、マディ・プライヤーが最も信頼を置くプレーヤーとして近作の演奏やプロデュースにも深く関わっており、またステイタス・クォーやエニッドなどロック・フィールドでも数々の「境界破り」を敢行している最注目のプレイヤーだ。これだけの錚々たるメンバーが一同に会した本作でのフォーメーションも凄いが、一方でこの強者達をロック・バンドとしてまとめ上げたデイヴの先見の明にも恐れ入る。これはひとえに彼の人柄によるところが大きいのだろう。もう一つの重要なポイントはゲスト・ミュージシャン。この作品にはキング・クリムゾンのロバート・フリップ、そしてクラナドのモイア・ブレンナンというプログレッシヴ・ロックとケルティック・トラッドの代表的な人物が同時に名を連ねているのである。ロバートはデイヴ、そしてモイアはジョアンヌ絡みの人脈で参加が実現した。ロバートに関してはデイヴが彼の奥さんのトーヤのソロ・アルバムのエンジニアをやっていた頃からの旧知の間柄で、ギター・エフェクトのアタッチメントとしてロバートが開発したフリッパートロニクスにデイヴが心酔していたことから参加を要請、快諾を受けた(ロバートはアイオナの楽曲を非常に気に入っているそうで、よく「風呂の中で」聴いているとのこと)。またモイアはジョアンヌがアイオナ加入以前から通っていた教会で知り合い、本作収録のゲール語の楽曲をジョアンヌが歌うため歌唱指導を依頼したところ曲の良さにモイアがハマってしまい、結局そのパートを一緒に歌うことになったそうだ。この名の著名ミュージシャンの参加により、アイオナの名は広くジャンルを越えて注目されることになったわけだが、本作が後に大きな成功を収めたのはゲストに知名度に溺れることなしに確固とした世界観を持った音楽を作ったことが多くのファンに認知されたからに他ならない。
アルバムはアンビエントなシンセをバックにジョアンヌがゲール語で伸びやかに歌う"Bi-Se
I Mo Shuil (Part1)"で幕を開け、即から必殺の名曲"Irish Day"(彼らのファースト・シングルになった)へとつながっていく。「偉大なる創造主よ、私の目となり給え。そして私の生が知で満たされますことを」、このゲール語の歌詞が示すように、総じて彼らの世界観はゴスペル的な要素がきわめて強いが(元々バンド結成のきっかけは教会音楽をモチーフにした音楽作品を制作するプロジェクトだった)、このバンドの最大の強みは一見ロックとは無縁の素材を抜群のセンスで料理し、荘厳さを失わぬまま万人が親しめる新たな音楽へと昇華できたことだろう。「Irish
Day」のテーマも「コロンバの福音」で、冒頭の牧歌的なホイッスルや母性すら感じる包容かんに富んだジョアンヌの歌唱、そして後半部でデイヴのエモーショナルなギターが聞こえてくる頃には相当の感動が享受できるはずだ。続く"Wisdom"は彼らのセカンド・シングルとなった曲で、旧約聖書の一説がモチーフ。"Irish
Day"同様聴きやすいメロディが印象的で当時ビデオ・クリップが企画されたが、あまりにもイメージが膨れあがったためにお蔵入りになったといういわく付きの曲だ。一聴でそれとわかるモイアのバック・コーラスがミステリアスな音空間を紡ぐ"Everytthing
Changes"、アコースティックな導入からダイナミックに盛り上がっていく"Inside
My Heart"などはプログレッシヴ・ロック・ファンが泣いて喜ぶ展開だろう。ジョアンヌが夫との旅の思い出を綴ったという"Lindisfarne"はまるで壮大な情景が目に浮かんでくるようだし、"Divine
Presence"はフリッパートロニクスの波形音が視覚的な効果を上げている。どの曲も非常によく練り上げられており、前作からの2年半の熟成期間がバンドに最高の成長をもたらしたことを窺い知ることができる。そして最大のハイライトは"Encircling"と"When
I Survey"というドラマティックな大作2曲。ケルトの荘厳さとロックのダイナミズムがこれほどまでに自然に解け合った音楽が今までにあっただろうか。前者での躍動するリズムとうねりを上げるスリリングなパイプ、むせび泣くギターが織りなす極限までのダイナミズム、また後者での神々しいまでに美しいジョアンヌのヴォイス。類い希な才能を持ったミュージシャンが真剣に作り上げた奇跡とも言える瞬間を是非ご堪能いただきたい。特に"When
I Survey"は来日公演最終日の2度目のアンコールで演奏され、場内を感動の渦に巻き込んだメモリアル・チューンとなったのである。
本作以降の活動については他のライナーに詳しいのでここでは触れないが、その後さらに5年余の歳月を経て完成した「オープン・スカイ」があらゆるジャンルを超越した金字塔的作品となったことは記憶に新しい。このような素晴らしい音楽に出会える機会を与えてくれたデイヴ(イメージ通りの優しい人でした)はじめバンドのメンバーに心よりお礼を言いたい。最後に嬉しいニュースをひとつ。ジョアンヌは今冬に無事男の子を出産(来日公演以降の最大の心配事だった)、アイザック君と名付けて現在すくすく成長中とのこと。なんだか神様が歌通りの福音をもたらしてくれた気がして、こちらまで幸せな気分になってくるようなニュースだと思いませんか。
2001.1.1 内田哲雄
「トレジャー・シンドローム」。これが今回のテーマ。
そもそも私がアイオナというグループに強くのめり込むきっかけとなったのは、93年春に自宅に届いた一本のビデオ・カセットであった。その中に収められた「トレジャー」という曲のビデオ・クリップは彼らのサード・アルバム、「Beyond These Shores」のプロモーション用に制作されたもので、リーダーのデイヴの厚意で送られてきたものだ。しかしこれを一目見るやその幽幻な世界に一瞬にして魅き込まれてしまった。スコットランドの古城で長時間をかけて撮影されたというこの映像はふくよかな旋律に美しい風景が見事に溶けあい、セピア・トーンなどのノスタルジックな演出効果も盛り込まれてミュージック・クリップとして非常にイマジネイティヴなものであった。しかし音楽映像作品の優秀性以上に「歌うこと」、「演奏すること」の喜びがこちらまで切に伝わってくるようなメンバー達の生き生きした表情に何よりも心を打たれたのだ。脈打つ躍動感、溢れんばかりの開放感に残業疲れのストレスが一気に洗い流されてしまった(いきなりサラリーマン・モードかよ)。思えばケルト・サウンドを冠に打ち出したグループの中で、これほど溌剌としたロック・サウンドを奏でた例があっただろうか。絶対に生演奏も素晴らしいものに違いない。このショッキングな体験以来、私は無性に彼らのライヴ・アクトを熱望するようになった。かくして現地でパフォーマンスを見た友人達が「素晴らしいライヴだった」と語るたびに思いは日増しに強くなっていったのである(余談だが、これ以降シンガーのジョアンヌは「帽子の似合う女性」というイメージが私の中ですっかり刷り込まれてしまい、そのまま現在に至っている。ファースト・インパクトとは恐ろしいものだ)。続く4作目「Journey Into The Morn」もじっくりと練り上げられた緻密な楽曲に壮大さを加味したこれまた名作で、ナイーヴさとダイナミズムという相反する要素が「ケルト」というフィルターを通して見事なまでに同居しているのだから凄い。この時点で私の「アイオナ熱」は頂点に達したことは言うまでもない。
本作、「Heavens bright Sun」はそんなアイオナ初の公式ライヴ・アルバムにあたり、リリースは'97年。内容は凝ったスタジオ・ワークによる作り込んだ楽曲というこれまでの「スタジオの虫」的なイメージを根底から覆すもので、全身からパワーが吹き出すようなエネルギッシュなアクトはこれまで耳慣れていた楽曲ですら新鮮に思えるほどのグルーヴ感が漲っている。よく「『ライヴ』が出来なきゃ『バンド』じゃない」といわれるが、その意味でこの作品におけるアイオナは紛れもなく随一の「ケルティック・ロック・バンド」と言えるだろう。ケルティック・パイプによる静かなイントロに導かれ、あの「トレジャー」が奏でられた瞬間、数年越しの「夢」が叶えられたような気分になったことを今でもはっきりと覚えている。あのクリップさながらに心から演奏を楽しんでいるメンバー達の姿が目に浮かぶようで、年甲斐もなく思わず目頭が熱くなってしまった。もう実際にお聴きいただければ、こんな理屈っぽい文章を読むよりもはるかにこの感動が伝わるのではないかと思う。
さて、例によって長い前フリはさておき、このアルバムの紹介へと話を移そう。ステージを華やかに彩るメンバーはリーダーのデイヴ・バインブリッジ(ギター、キーボード)、看板シンガーのジョアンヌ・ホッグ(ヴォーカル、ギター、キーボード)を核として、タール・ブライアント(ドラム)、3作目から参加のマイク・ホウトン(サックス、フルート)、4作目からのトロイ・ドノックリィ(イーリアン・パイプ、ホイッスル)、そしてこのツアーから新加入のフィル・バーカー(ベース)の6名。デイヴとジョアンヌに関しては他のライナーでも何度か触れられているのでそちらを参照していただくとして、他のメンバー達について補足を。現在セッション・ドラマーとして引っ張りだこのタールはクリフ・リチャードのツアー・メンバーとして頭角を現し、元バウハウスのピーター・マーフィのバンド・メンバーとして来日した経験も持つ。アイオナとはデビュー時からのつき合いで、デビュー作から本作まで参加。豪快かつ奔放なドラミングでケルティック・ロック・サウンドの屋台骨を支えてきた功労者だ。本作後脱退するがリック・ウェイクマンやマディ・プライアなど有名どころとの仕事が急増した。「Psalm」、「Beauty」の2枚のソロ・アルバムがあり、アイオナをよりコンパクトにしたようなポップ・サウンドが楽しめる。'97年からはケルトを素材としたコンセプチュアルなヒーリング・ユニット、エデンズ・ブリッジを結成。5枚のアルバムをリリースしているがこちらも美声の女性シンガーを擁した要注意作品が多い。タールと同じくクリフ・リチャードとのツアー経験を持つマイクのルーツはジャズ。力強いサックスとクリアーなフルートは従来の「ケルト」のイメージとは趣を異にするもので、アイオナのサウンドをより新鮮なものにしている。クラナドでいうメル・コリンズ的な役割を果たしていると言えないだろうか。そういえば彼はバルカンにインスパイアされたオーストラリアきっての才女、マーラの「Images」というアルバムでも壮絶なサックス・ソロを吹いていたっけ。バッキング・コーラスでもいい味を出している。そのマイクとは異なり、メンバーの中で最もアイリッシュ・トラッドに精通しているのがトロイだ。彼はケルトのダンス・チューン(ジグ、リール)をロック・サウンドとブレンドさせたフォーク・ロック・バンド、YOU
SLOSHのメンバーとして'87年からキャリアをスタート。その後はバーバラ・ディクソン、エニッド、ステイタス・クォー、アラン・スティーヴェルとロック、トラッド、ワールド・ミュージックを股に掛けての大活躍。現在もアイオナと並行してマディ・プライア(タールも一緒)や元フェアポート・コンヴェンションのマーティン・オールコックのツアーやレコーディングに参加している。インストルメンタルを中心としたソロ・アルバム「Unseen
Streams」もある。アイオナ加入当時は腰までなびく長髪で、マイク、そして元メンバーのニック・ベックス(カジャ・グー・グーでおなじみのチャップマン・スティックの名手)と遠巻きで区別がつきにくかったが、最近髪を短く刈り込んでまるで別人のようないでたちになってしまった。これは自らのアイデンティティを確立するためではなく、日曜大工をやっていたら接着剤が髪に付着し、泣く泣く切ったのだそうな。そして現在で最も新しいメンバー、フィルはタールのセッション仲間であった。彼はスティールアイ・スパンのツアーのために同行できなくなった前任ティム・ハリーズの後を受けて'95年から参加。ティム、そしてその前のニック・ベッグスと比べると派手さはないが、堅実なベース・ワークで個性派プレイヤーの多いアイオナのコントロール・タワーとしてアンサンブルをまとめるという重役を担う。よく彼の写真を見て「裏写りしている」という人がいるが、正真正銘の左利きベーシストである。
この6人の楽士達が演じる「アイオナ劇場」、レパートリーは過去4作品からバランス良く選曲され、爽やかさすら覚える溌剌としたパフォーマンスに2時間がアッという間に過ぎ去ってしまう。演奏曲の収録アルバムはスリーヴ中に記載があるのでそちらを参照していただくとして、冒頭で述べたオープニング、「トレジャー」から彼らのステージ・アクトに魅了されることは必至だろう。それは「音楽は生き物」を地でいくような活気に満ちあふれ、アイオナの「ライヴ・バンド」としての優秀性を証明してくれる。凄いパワーだ。「トレジャー」に負けず劣らずのヴォーカル・ナンバーとして聴き物なのが、あまりにも懲りすぎてビデオ・クリップがお蔵入りになったといういわく付きの「アイリッシュ・デイ」。青空に突き抜けていくようなメロディが美しいこの曲では、ジョアンヌのまっすぐな歌声がはじけている。近寄りがたいほどの美声が売り物のこのフィールドにおいて、彼女のどこか人なつっこさがにじみ出るヴォイスは貴重、RPGゲームのエンディングに起用されたのも実に納得のいく話だ。発表当時「あまりライヴ向きではない」と思っていた初期2作の楽曲も新たな生命力を吹き込まれて甦っているのには驚いた(「インサイド・マイ・ハート」なんてホントにいい曲)。これはタール、マイク、フィルの新機軸によるところが大きいのだと思う。デイヴのギター・ワークも終始爆発しまくっており、繊細なアコ・ギのつま弾きからエモーショナルなソロまでを朗々と弾きこなす。これはシャイでナイーヴな人が人前に出たときのある種「捨てばちな緊張感」を撒き散らしており、彼が崇拝するスティーヴ・ハケットやマイク・オールドフィールドと似たエナジーを感じた。そしてクライマックスは当時最新作だった4作目のレパートリーを中心とした後半で頂点に達し、特にラストを飾る「ホエン・アイ・サーヴェイ」で得られる高揚はもう言葉では語り尽くせない。とにかく自分の耳で確かめてほしい。「トロイ効果」とも言えるノリノリのアイリッシュ・リールも楽しめる。
このアルバムを聴いて「夢が叶った気分になった」と先に述べたが、それはさらに「生でアイオナのステージが見たい」という新たな欲望へと発展していった。それが何と2000年2月に実現する。これはもう行くしかない。足を運んで下されば必ずやあなたの心にある「トレジャー」を発見できるはず。音楽を聴く本当の喜びは共感を分かち合ったときに何倍にも広がるのだから。
2000.12.23 内田哲雄(クリスマス・イヴ・イヴの良き日に)
まず何はさておき、待望のアイオナ初来日公演が実現することをファンの一人として喜びたい。ジョアンヌの声が、デイヴのギターが、トロイのパイプが、ライブで聞けるなんてまるで夢のようだ。今年でアイオナは結成12周年を迎える。彼らのライブの素晴らしさを人から伝え聞く度に、来日公演が実現しないものかと願ってきた。その夢がやっと実現する。ようやく来てくれるかと思うと、実に感慨深いものがある。
昨年は、久々のスタジオ録音盤「オープン・スカイ」(これがまたすごい傑作だった)が発表されるという、うれしい出来事があった。ファンには最高のプレゼントだったが、さらに初来日というビッグ・イヴェント。もうこれ以上のことは望めまい。21世紀の最初の年をアイオナのライブで迎えることができるなんて・・。
さて、本題に入るとしよう。
このアルバムは、アイオナ結成10周年を記念して、99年5月29日にロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで行われたコンサートのライブ録音。5人のメンバーと2人のゲスト・プレーヤーのほかに、ノエル・トレディニック指揮によるオール・ソウルズ・オーケストラ(ASO)を加えた特別編成のライブだ。
ライブ録音としては、97年の2枚組アルバム 'Heaven's Bright Sun' があるが、オーケストラを加えた形は、彼らにとっては初の試みだ。
共演に至る経緯については、オリジナルのライナーにも説明があるが、もとは、ASOの指揮者ノエルの発案だったそうだ。彼の提案に、バンドのメンバーたちは大いに想像力を刺激されたという。アイオナのシンフォニックで複雑な構成を持つサウンドにオーケストラを加えるに当たり、メンバーたちがもっとも苦心したのは、アイオナらしい響きを維持しながら、オーケストラのサウンドを活かすことだったという。
このライブは、バンドとしては久々の仕事だった。98年初めからほぼ一年間、バンドは休養に入り、ソロ活動等に専念している。その間にドラマーのタール・ブライアントおよびサックスのマイク・ホートンがバンドを去り、代わりにこれまで、ゲスト・プレーヤーとしてアイオナのアルバム制作に携わってきた、ドラマー兼ヴァイオリニストのフランク・ヴァン・エッセンが正式メンバーとして迎えられた。新しい5人のラインアップ(現在のメンバー)として初めての仕事が、このロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライブだった訳だ。心機一転、しかもオーケストラとの共演ということで、メンバー全員が、はつらつとした気持ちで取り組んだライブは素晴らしい出来となった。
それでは、曲目解説に移ろう。
1曲目はオーケストラの演奏による「序曲」だ。編曲はイーリアン・パイプ奏者、トロイ・ドノックリー。彼のバンドにおける地位は、最近ますます重要なものとなってきているが、そんな彼の編曲者としての才能を見せてくれる曲だ。
続いて4枚目のアルバム 'Journey into the Morn' のオープニングを飾っている'Bi-se
I Mo Shuil'(「わたしの目となって下さい」と言う意味)へと引き継がれる。ジョアンヌ・ホッグがゲール語で歌う、美しく崇高な神への祈りが心に染みわたる。スタジオ録音のシンセ・ストリングスの部分をオーケストラが担当しているが、違和感は全くない。
3曲目はセカンドアルバム「ケルズの書」より 'Man' の演奏が勢いよく繰り広げられる。13分にも及ぶこの大作では、バンドの音を主体としながらも、オーケストラが大きくフィーチャーされている。こういったサウンドに広がりのある曲目でのオーケストラの存在はなかなかに圧倒的だ。アイオナのレパートリーの中でも、最もドラマティックな構成力 一転して美しく静謐なサウンドが展開する4曲目
'White Sands' は、デビュー・アルバムからの選曲。トロイのティン・ホイッスルがオーケストラをバックに哀愁のメロディーを奏でる。スコットランド西岸のマル島の隣りの小さな島、アイオナ島にある「ホワイト・サンズ」という大変美しい浜辺にインスパイアーされた曲。
5曲目。アイルランド北東部の 'Murlough Bay' はたいへん風光明媚な海岸線が広がるところ。ジョアンヌは夫とともによくここを訪れるらしい。この美しい場所で神と対峙する心境を歌にしている。をつけている。サードアルバム
'Beyond These Shores'6曲目の 'Dancing on the Wall' は今回の大きな収穫だ。オリジナルとは若干アレンジを変え、デイヴのアコスティック・ギターと生ストリングスをバックに、優しく軽やかに歌われるジョアンヌの歌は、新しい生命を得たように新鮮だ。ジョアンヌの愛らしいヴォーカルが際だっている。ファーストアルバムでの、力強いシンギングとは対照的だ。ベルリンの壁が崩壊したとき、ジョアンヌがたまたま、テレビで東西市民が崩れた壁の上で踊る様子を見てインスパイアーされた曲。
7曲目の 'Encircling' は4枚目のアルバム収録の大作。Lorica, Tara,
Caim の3部構成。真実を見る目があれば、私たちの身の回りに存在する神の存在を知ることができるという祈りがテーマだ。ロー・ホイッスルの美しさは涙ものだ。
続いて、オーケストラによる前奏を書き加えた8曲目 'Lindisfarneのアルバムよりの選曲。スコットランドでのギグの後立ち寄ったリンディスファーン島の思い出を綴った曲。島内を一日散策してまわり、磯で沈み行く太陽を見ながら、祈りを捧げた時に、脳裏にひらめいた詩をジョアンヌは書き留めたという。
9曲目はセカンドアルバムの2曲目に収められていた 'Revelation'(啓示)だ。これぞアイオナ・サウンドというダイナミックな演奏が繰り広げられる。タイトルの通り、神の導きを求める切実な気持ちが歌われる曲だ。オーケストラを加えたエンディングの盛り上がりは見事。
10曲目のタイトル・トラック 'Woven Cord' は、オーケストラによる序奏からデイヴのギターとトロイのパイプによるツインリードへと引き継がれていく・・・。次のアルバム「オープン・スカイ」の冒頭を飾ることにもなるインストルメンタル・ナンバーだ。前半および後半のスピード感溢れる展開と中間部のゆったりと官能的なギターの対比が素晴らしい。オーケストラのアレンジもアイオナ・サウンドにぴったりとはまっている。
最後の曲はサードアルバムのタイトルトラック。オープニングではドラマーのフランク・ヴァン・エッセンが艶やかなヴァイオリンを聞かせてくれる。ジョアンヌの美しいヴォーカルがひときわ冴え渡る。
さて、この特別ライブのあと、バンドはニューアルバムの制作に取りかかり、2000年5月に「オープン・スカイ」としてリリースされたことは前述の通り。バンドとしてさらに大きくスケールアップした会心作となっているが、これについては私のウェブ・サイトをご覧いただきたい。
さて、最後にひとつ。ファンにはとても気になる情報が、オフィシャル・サイトに載っている。実は、"Woven
Cord" のアルバムには時間の関係で、収録することの出来なかった曲目が何曲か残っているらしい。"Kells"
ほか数曲を今後何らかの形で発表できるかもしれないというのだ。この貴重な録音が日の目を見ることを願いながら本稿を終えることにしよう。
2001年1月
ケルティック・ミュージック・オンライン
藤田 敏幸
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THE EYES OF THE EAGLE / DAVE BAINBRIDGE & DAVID
FITZGERALD with DAVID ADAM
目を開ければ、自分のまわりに存在するものを見ることができる。
耳を澄ませば、いつもそばにいて囁くその声を聞くことができる。
心を開けば、すぐそばに、神の愛をはっきりと感じとることができる。
感覚を研ぎ澄ませば、神の力と心の平和がいつもそこにあることに気が付くだろう。
「鷲の目」デイヴィッド・アダム
神はどこか特別なところに存在しているのではなく、実は我々の身の回りのどこにでも存在していて、心の目を開けばそれに触れることができるという、ケルト的なキリスト教観は本アルバム全体を貫くテーマである。現在はアイオナを離れてソロとして活躍するデイヴィッド・フィッツジェラルドにとってこの詩は、彼自身の体験を代弁してくれるものだった。
それではまず、そのデイヴィッド・フィッツジェラルドの経歴を簡単に紹介しよう。
出身はスコットランドはインバネス州の片田舎で、母方の祖先のマクリーンズ家はスコットランド西岸のマル島およびアイオナ島のクラン(氏族)だったという。多感な彼の少年時代は、内面的には激動の時代だった。もともと熱心なキリスト教徒というわけではなく、60年代から70年代の始めにかけては、サイケデリックな文化や東洋の神秘思想に興味を持った。キリストの福音に大きな感銘を受け、キリスト教に入信したのは10代後半だったという。しかし、多くを知れば知るほどに、教会主体のキリスト教に多くの矛盾を感じるようになり、結局、教会を離れ、神と自分自身との関係を軸とした独自の信仰の道に入る。デイヴィッドの言葉によれば、神は音楽を通して彼に語りかけてきたという。愛と哀れみを持って自分を励ましてくれる神の心を絶えず感じることができたそうだ。
87年、彼はサックス奏者として、エイドリアン・スネルのミュージカル「アルファ&オメガ」に参加する。同じく、キーボディストとしてデイヴ・ベインブリッジが、ヴォーカリストの一人としてジョアンヌ・ホッグが迎えられ、ここにアイオナの創設メンバーが顔をそろえることになった。90年にはアイオナのデビュー作'Iona'
、92年にはセカンドアルバム 'The Book of Kells' がリリースされ、アイオナは順調に滑り出す。だがセカンドのリリース後まもなく、彼はバンドの方向性と自身の目的の間にずれを感じてバンドから離れる決意をする。商業主義的な束縛なしに自分自身と神の関わりを見つめ直す環境が必要だったという。3年間、彼は大学で勉学に励み、音楽の単位を取得する。その後音楽活動に復帰してからは、95年にファースト・ソロ・アルバム
'Columcille' 97年にはセカンド・ソロ ' Lux Aeterna' をリリース。それぞれに宗教的な深い思索に溢れた美しいアルバムを製作している。
次にデイヴ・ベインブリッジの経歴をたどってみよう。デイヴはイングランド北東部のダーリントンの生まれ。8才の時からピアノを、そして13才からギターを習い始める。リーズ音楽大学に進学して、大学のバンドを中心に、作曲、編曲、レコーディング、演奏、プロデュースなど多方面で活動する。この時期には多くのコマーシャル・フィルム用の音楽を手がけている。80年代中頃から90年代初めにかけては、BBCラジオ2の音楽番組をはじめ、イギリスやアメリカ、ヨーロッパのブルース・ミュージシャンのバックを務めた。一方、大学の友人を通じて、敬愛するシンガーソングライター、エイドリアン・スネルに出会い、前述のミュージカル「アルファ&オメガ」に参加する。89年にアイオナを結成して以来、バンドの中核メンバーとして、これまでに5枚のオリジナル・アルバムおよび2枚のライブ・アルバムをリリースしている。
さて本作は、2人の6年ぶりの共同作業により生まれたアルバムだ。熱心なクリスチャンであるこの2人が、デイヴィッド・アダムの詩集から大いにインスパイアーされたことは想像に難くない。2人は音楽という言葉で神の声を聞き、その同じ言葉で神に語りかける。その昔、修道士たちが切望した「鷲の目」を、この2人は音楽と言う手段を用いて得ようとしているのかも知れない。この美しく、魂を解き放つようなサウンドを聞いていると、我々もまた心が癒されていく。シンセサイザーの幻想的でたゆたうような流れと、フルートやサックス、ティン・ホイッスル、ギターによるアコースティックな響き、そして、デイヴィッド・アダムによって語られる静かな情感を湛えた詩の朗読は、我々を神の国へといざなってくれる。さらに、ゲストで参加しているモイア・ブレナンの幾重にも重なった神秘的なコーラス、ショウナ・マクドナルドの澄明なヴォイス、スコット・ファレルの重厚なチャーチ・オルガン、そして聖エドマンズベリー少年合唱隊の崇高なコーラスは我々をさらなる高みへと導いてくれる。
デイヴィッド・フィッツジェラルドはファースト・ソロ・アルバム 'Columcille'
の解説(オフィシャル・ウェブ・サイト内)の中でこう述べている。
"It has been said that music, more than any of the art forms, is a
doorway into domain or realm of the spirit."
「音楽は、他のどの芸術の形態に比べても、はるかに神の領域へ踏み入りやすい手段だと言われている」
このアルバムはまさにその事実を我々に証明してくれるものであろう。
さて、最後に11曲目の 'Caim' で朗読されるデイヴィッド・アダムの詩を引用して筆を置くことにしよう。これは、アイオナの第4作
'Journey into the Morn' の6曲目 'Encircling' にも使われている詩だ。
偉大なる父と子と精霊よ
あなたに包まれて
私は守られている
あなたはいつも
私とともに歩み、我が家を見守ってくれている
聖なる父と子と精霊よ
私はあなたに包まれて生きている
デイヴィッド・アダム
2000年10月
ケルティック・ミュージック・オンライン
藤田 敏幸(本文、訳)
●追記
このアルバムに基づいたライブ・プロジェクトが98年8月1日に、聖リンディスファーン島の
St. Mary the Virgin Church で行われている。デイヴィッド・フィッツジェラルドおよびアイオナのメンバーにとって、この聖リンディスファーン島
は、アイオナ島と並んで彼らの宗教的、音楽的活動の原点と言える聖なる土地である。
●追記2
デイヴィッド・フィッツジェラルドのソロ・アルバム2枚が、ミュージック・プラントのホームページにて入手可能になる。(12月)
Columcille / David Fitzgerald ('95)
Lux Aeterna / David Fitzgerald ('97)
2作ともデイヴィッドの全人格が投影された、美しく感動を呼ぶアルバムで、アイオナのインストルメンタル・パートが好きな向きにはお薦めの作品だ。
これまでアイオナのアルバムにおいて、要所要所でケルティック・スピリット溢れるイーリアン・パイプやロー・ホイッスルを披露してきたトロイ・ドノックリー初のソロ・アルバム。アイオナのデビュー以来、トロイは全てのアルバムに参加しているが、正式メンバーとして迎えられたのは95年6月、アルバムで言うと、第4作 'Journey into the Morn' からだ。彼はイーリアンパイプを初め、ティン・ホイッスル、ロー・ホイッスル、アコースティック・ギター、エレキ・ギター、キーボード、シターンまで、そつなくこなすマルチ・プレーヤーであり、英国のトラディショナル・ミュージック・シーンを担う新世代のミュージシャンだ。
さて、本作はトロイ・ドノックリーが98年に発表した初めてのソロ・アルバムである。イーリアンパイプ奏者という性格上、ソロではトラディショナル・ナンバーが中心だろうと勝手に想像していたが、意外にも8曲中、トラッドは1曲だけで、全体として、コンテンポラリーなニューエイジ系と呼んでいい音で、クラシックの要素も多分に含んだトロイの幅広い音楽性が味わえる作品となっている。
参加ミュージシャンは、まずはアイオナのリード・シンガー、ジョアンヌ・ホッグ、元アイオナのドラマー、タール・ブライアント、同じく元アイオナのベーシスト、ティム・ハリス、クールフィンのメンバーでもあるナリグ・ケイシー、これに加えて、クラシカルな表現を支えるストリング・カルテットやオーボエ奏者等多くのミュージシャンのバックアップを得て製作されている。
それでは、曲目を簡単に紹介しよう。
アルバムは、パイプオルガンをバックにイーリアンパイプが壮大な空間を埋め尽くす、スケールの大きな作品で幕を開ける。続いて2曲目は、バウロンによる軽快なジグのリズムに乗って、ストリングス、オーボエのクラシカルな演奏が始まる。トロイはオーバードライブのかかったエレキギターを弾きこなし、マルチ・プレーヤーぶりを発揮している。
続いて3曲目はアルバム唯一のトラディショナルナンバー。ゆったりとした美しいエアーだ。ローホイッスルのもの悲しいイントロに続いて、オーボエのたゆたうようなメロディーが印象的だ。ここでも、トロイのオーバードライブ・ギターが泣いている。
静かなチェロの独奏で始まる4曲目は14分を越える大作。前半は弦楽四重奏によるクラシカルな趣き。やがてピアノとアコースティック・ギターが絡んでくる。ドラムの入ってくる中間部から、ぐっと雰囲気が変わるが、すぐにピアノと弦楽によるクラシカルな世界に戻ってくる。後半部は、シンセ・ストリングをバックにジョアンヌのスキャットが息を飲む美しさだ。続いてトロイのアコースティック・ギターが大活躍し、最後にピアノの独奏で幕となる。次々と現れては消える複雑に絡み合った音のつづれ織だ。
ニック・ホランドのヴォイスで始まる5曲目はコンテンポラリーなアレンジのエアー。フィドルはナリグ・ケイシーだろう。トロイのパイプとロー・ホイッスルが実に美しい。
6曲目は、パイプオルガンの伴奏に、オーボエの軽快な響きで始まる10分近い大作。ゆったりとしたパーカッションに、ナリグのフィドルやトロイのホイッスルが重なっていく前半部。どことなくエキゾチックなリズムの中間部に続いて、後半はパイプによるリールが曲を盛り上げていく。
7曲目は純然たるクラシック・ナンバー。弦楽四重奏をバックに、イーリアンパイプが奏でるシベリウスのフィンランディアは、これはまた特別な味わいがあって素晴らしい。なるほど、こういうアプローチがあったかと思わされる。3分半ほどの小品だが印象に残る。このフィンランディアはマディ・プライアーの
'Flesh & Blood' にも別テイクが収録されている。
最後の8曲目は、トロイのシンセが織りなす、サウンド・タペストリー。ジョアンヌのスキャットが天上の美しさだ。
さて、アルバム全体を通して印象に残るのは、弦楽四重奏およびオーボエのクラシカルな響きだ。おかげで、アルバム全体に気品ある清楚な雰囲気が漂っている。それは、まるで美しい風景を映し出した映画のサウンドトラックのような趣である。
このゲスト・プレーヤーたちに加え、天使のようなジョアンヌ・ホッグのヴォイスをうまく取り入れて、トロイ自身のマルチ・プレーヤーぶりを遺憾なく発揮したのが本作と言えるだろう。アイオナ、マディー・プライアー、ミッジ・ユーロ等々様々な場所で活躍するトロイを見ていると、次のアルバムでは、一体どんなサウンドを聴かせてくれるのかと、今から楽しみである。(本稿はケルティック・ミュージック・オンラインに掲載している文章に加筆・訂正を施したものである)
2000年10月
ケルティック・ミュージック・オンライン
藤田敏幸
「イリュージョンを求めて」は、イーリアン・パイプスの魔術師、トロイ・ドノックリーがマルチ・ミュージシャンとして、コンポーザーとして、シンガーとして、さらにはマジシャンとして自分の持てる全てをかけたソロ第2作。クラシカルなエレガンスとケルティックな哀愁をちりばめた、静謐さ漂う孤高の境地!
本作は、おそらく世界で最も多忙かつ多芸なイーリアン・パイパー、トロイ・ドノックリーの2作目です。トロイはこれまでにすでに3度の来日を果たしています。最初はミッジ・ユーロのサポート、続いてアイオナの正式メンバーとして、そして昨年はマディ・プライアのサポートとして、マルチ・プレーヤーならではの力量を遺憾なく発揮した演奏を聞かせてくれました。その上ステージや楽屋裏ではなんとマジシャンとしても、玄人はだしのテクニックを披露して私たちを楽しませてくれました。(このマジシャンとしての活動が今回のニュー・アルバムにも少し関係してくるのですが、それはまた後で)
この文章を読んでいただいている中には、おそらくアイオナのファンの方が最も多いのではないでしょうか。そこでまずはバンドの近況からお伝えしましょう。現在アイオナは、リード・ヴォーカリスト、ジョアンヌ・ホッグの2度目の出産のために活動休止状態にあります。(この5月に無事男の子が誕生しました)2000年発表の「オープン・スカイ」以降、オリジナル・アルバムこそありませんが、メンバーは息をつく暇もないほど精力的な活動を続けています。まず2001年には待望のアイオナ初来日が叶いました。同年ジョアンヌは「アイリッシュ・ヒムズ」でクラナドのモイア・ブレナン、アメリカCCM界の人気女性歌手マーガレット・ベッカーと共演しています。
2002年には同じくジョアンヌが、プレイステーション2用ゲームソフト「ゼノサーガ」の主題歌「ココロ」を歌い、オリコン・ヒットチャートをにぎわすことになりました。また同年にはアイオナ初期3枚のリミックス&リマスター版のボックスセット「The
River Flows」が発売されましたが、これには特典としてボーナス盤が付属しており、その中に収録された「スノードニア」の新録音(もとは、デイヴ・ベインブリッジがBBCのドキュメンタリー用に書いたもの)はアイオナのニュー・アルバムに代わる作品として我々ファンの渇きを癒してくれました。そしてこの2003年の春には、ベインブリッジ夫妻によって、「Songs
for Luca」という2枚組チャリティ・コンピレーション・アルバムがリリースされています。これは自閉症に病むベインブリッジ夫妻の息子さん、ルカの治療費用捻出のために企画されたもので、アイオナに関わる多くのミュージシャンが曲を提供しています。もちろんこの中にはアイオナ自身の曲も2曲収録されています。(あの名曲「Matthew
the Man」の渋谷オンエア・ウェストでのライブ・バージョン収録!)この作品もまもなく、THE
MUSIC PLANTのホームページにて販売されるようです。あと、これから先の予定ということになりますが、デイヴのソロ・アルバム「Veil
of Gossamer」も近々完成するようです。その他、ドラマーでヴァイオリンも弾きこなすフランク・ヴァン・エッセン(アイオナのメンバーにはマルチ・ミュージシャンが多い!)が奥さんと2人で、オランダのクリスマス・ソング集「Immanuel」をリリースしています。
ついつい長くなってしまいましたが、トロイ自身に話を戻しましょう。
最近アイオナのオフィシャルページにトロイのインタビュー記事が掲載されましたが、そこに興味深い話が載っています。トロイがイーリアンパイプを始めたきっかけは11歳の時に初めてその音色を聞いて、強く胸を打たれたことだと語っています。初めは、それが楽器の奏でる音色だとは想像もつかず、むしろ奇妙な動物の鳴き声のように思っていたそうです。それ以来ずっとこの楽器にあこがれていたといいますが、18になって父から借金をしてやっとイーリアンパイプス(ハーフセット)を手に入れたそうです。伝統音楽の演奏家としての出だしはむしろ遅いぐらいですが、11の時から始めたギターをはじめ、抜群の運動神経で次々と楽器をマスターした彼には、年齢など関係なかったかも知れません。
彼の生い立ちから、ファースト・ソロアルバム発表までの経緯は前作のライナーノートに詳しく書いていますのでそちらをご覧下さい。(幸いにも、THE
MUSIC PLANTの下記のページで公開されています)
さて、ファースト・ソロアルバム「ジ・アンシーン・ストリーム[、レスリー・ギャレットのツアーへの参加です。レスリーはイギリスではBBCの司会を務めるほどの人気オペラ歌手で、昨年(2002)秋にイギリスで発売された最新アルバム「The
Singer」は、BBCでも映像化されて話題を呼びました。この春のツアーは The Northern
Sinfonia という小編成のオーケストラと2人のケルト系ミュージシャン(この一人がトロイです)を従えたものでした。とにかく、イギリス人気ナンバーワンのディーヴァに招かれると言うだけでも、トロイには名誉なことだったでしょう。
そんな忙しいスケジュールの中で完成したのが、2枚目のソロ・アルバム「THE
PURSUIT OF ILLUSION〜イリュージョンを求めて」です。このアルバムはトロイ自身のレーベル「Lantern
Music」より発売されています。
サポート・ミュージシャンは前作とほぼ同じラインアップです。ヴォーカルにジョアンヌ・ホッグ、ドラマーにタール・ブライアント。ベーシストはティム・ハリスからニック・ベッグスに代わっていますが、この人も元アイオナのメンバーです。ストリングスは前作と同じエンペラー・ストリングス・カルテット。そのほかにもオーボエのクリス・レッドゲイトなど多くのサポートを得ています。しかし、クレジットされた楽器の数で言えば、トロイはずば抜けていて、イーリアン・パイプスにロー・ホイッスル、ティン・ホイッスルと言う伝統楽器から、ギターにブズーキ、マンドーラ、キーボードにパーカッションに至るまで、まさにありとあらゆる楽器を弾きこなしてしまっています。その上本作では、ジョアンヌとのデュエットまで聴かせてくれるのですから、まさに驚くしかありません。
収録された7曲についてそれぞれ詳しい説明は必要はなさそうです。どの曲も耳で聞いて心で感じれば自ずと理解できる曲ばかりです。来日時には冗談ばかり言って、心底陽気な人間に思えましたが、このアルバムを聞いていると静謐で奥深い広がりが感じられます。アイオナに通ずる宗教的な部分も持ったアルバムです。ここでは、トロイのオフィシャル・ウェブサイトにある彼自身のメモを参考に4曲について注釈を付け加えておくにとどめましょう。
[2] のタイトル・トラック「イリュージョンを求めて」はトロイの友人で、奇術史の権威、エドウィン・ドーズ教授の作詞による曲です。(教授が主催する「マジシャンの会」になんとトロイも最近入会したそうです)この曲は1918年ロンドンで「弾丸をつかむトリック」を演じて命を失ったという偉大なマジシャン、チャン・リン・スーの話に基づいています。マジックの愛好者トロイならではのテーマ、そしてジョアンヌのヴォーカルがひときわ美しく輝く傑作です。
[4] の「FLOATING WORLD」は東洋的なフレーズが延々と繰り返される曲ですが、これについてトロイの書いているメモがちょっと不思議です。この前日本に来たときに知った話らしいのですが、17〜18世紀の東京では美術家や音楽家、詩人たちが海上に船をもやい、当局(幕府)の介入しない村を作って自由気儘な生活を楽しんだというのです。--ところで、こんな話聞かれたことあります??
[6] の「FRAGMENT」はジョアンヌのヴォーカルがきりりとした美しさを放つ宗教曲で、歌詞は聖体拝領をテーマにしたアラム語のテキストから採られているそうです。
[7] の「COLOUR OF THE DOOR」は2つのパートからなる曲で、パート2は18分を超える大作です。この曲にはトロイの全てが表現されていると言っても過言ではありません。彼の見事なイーリアン・パイプスが聞ける唯一の作品でもあります。
最後にアイオナの公式ページでアナウンスされたギグのニュースをひとつ。今年の10月から11月にかけて、トロイとデイヴ・ベインブリッジ2人のデュオ・コンサートが開かれると言うことです。内容は未定ながらその傾向としてはアイオナの音楽性に結構近いものになりそうです。さらにそのうちの1日の模様はライヴ盤としてリリースされる計画もあるということで、ますます楽しみです。
2003年6月
ケルティック・ミュージック・オンライン
http://www.asahi-net.or.jp/~pt9t-fjt/
藤田 敏幸
ジョアンヌ・ホッグの賛美歌はまるで天上の音楽のように、我々の心を崇高な気持ちで満たしてくれる。そこにあるのは上辺の美しさだけではない、神の導きを求める真摯な信仰心が、我々の心の奥深くにある何かを呼び覚ますのだ。静かなさざ波のように感動がうち寄せてくる。いつまでもただ耳を傾けていたい。いつまでも・・・。
99年にリリースされたアイオナのリード・ヴォーカリスト、ジョアンヌ・ホッグ初のソロ・アルバム。プロデュースは、デイブ・ベインブリッジ。
ミュージシャンは、アイオナ現役選手とOBを中心に、さらにオーボエ奏者とストリング・カルテットを加えた豪華な構成。さらに編曲にはデイヴ・ベインブリッジ、トロイ・ドノックリーという現在のアイオナの主力メンバーがあたっており、まさにもう一つのアイオナとも呼べるアルバムだ。
ジョアンヌの清冽なヴォーカル、そしてピアノ、ストリングスなどアコースティック楽器主体の穏やかな美しさに溢れた演奏を聞いていると、なるほど、アイオナのサウンドは、「デイヴ・ベインブリッジのプログレッシブでドラマティックな構成力」という縦糸と、「ジョアンヌの紡ぎ出す美しいメロディー」という横糸で織り上げた音楽だったということに改めて気づかされる。これまで、アイオナのアルバムを通してなじんできたジョアンヌの静謐で美しく崇高なメロディーが、ここに見事な世界を作りあげている。
ジョアンヌをはじめアイオナのメンバーは皆たいへん敬虔なクリスチャンだ。アイオナのアルバムは全てキリスト教をテーマにしたものであるが、これは音楽を通してキリストの教えを伝えていきたいというバンドの姿勢そのものを示している。このソロ・アルバムにおいてもそれは例外ではない。ジョアンヌによれば、このアルバムの歌詞は全て古い賛美歌から採られているそうだ。そのことについて、CDのブックレットにジョアンヌ自身の言葉が載っているので引用させてもらおう。
「これ(賛美歌をアルバムにするというアイデア)は牧師である父、サム・モールズが何年か前に教えてくれたアイデアでした。でも、初めのうちは父の提案に耳を傾けず、後からとても後悔することになりました。それで、今度は父の勧めに従うことにしたのです。音楽自体は、昔の伝統的なものから、現代的なものまで、様々な時代に属するものです。しかし、詞はすべて古い賛美歌から採りました。これらの賛美歌には、神への崇敬と愛情、そして神の御慈悲に対する深い感謝の念が込められていて、初めて読んだときからインスピレーションが湧いてきました。これもまた私が先祖から受け継いだものです。愛と感謝を込めて、私はこのアルバムを父に捧げます」
ジョアンヌは古い賛美歌を、伝統的なメロディーに乗せて、あるいは自身の中に生まれた新しいメロディーに乗せて歌う。・・・彼女が神と向き合うその真摯な姿はまるでマリアのような、優しさと愛に満ちている。
さて、ここでジョアンヌの経歴を振り返ってみよう。北アイルランドのバリーメナ出身。長老教会の牧師一家に生まれ、10才の時からクラシック・ピアノのレッスンを受けていた。幼なじみで現在は夫のスティーヴによると、当時からよく歌を歌っていたそうで、15才の頃には、それらをまとめて自分のオリジナル曲集を作っていたという。
ジョアンヌは医者になるためにベルファストのクイーン大学に入学し薬学の勉強を始めた。84年ジョアンヌは「クリスチャン・アーティスト・セミナー」に参加するためオランダに行き、そこでシンガー・ソングライターのエイドリアン・スネルに出会う。エイドリアンはジョアンヌの歌声にひかれ、歌を録音して送るようにと勧めた。
ジョアンヌのテープがエイドリアン・スネルに届けられたとき、彼はちょうど「アルファ・アンド・オメガ」というプロジェクトに取り組んでいる最中だった。エイドリアンはこのプロジェクトの中の1曲
'Child of Darkness' をジョアンヌに歌ってもらうことにした。
かくして、このプロジェクトの副プロデューサー、デイヴ・ベインブリッジ、ウィンド・プレーヤーとして呼ばれたデイヴィッド・フィッツジェラルド、そしてジョアンヌ・ホッグという、アイオナ創設メンバー3人が、アルファ・アンド・オメガ・プロジェクトのライブ・パフォーマンスで顔を合わせることとなった。
このコンサートのあとジョアンヌは医師として初めて仕事につき、音楽活動からしばらく遠ざかることとなるが、限られた時間の中で作曲活動は続けていた。エイドリアンとの連絡も欠かさなかった。88年、エイドリアンは送られたデモテープをデイブ・ベインブリッジに聞かせたが、ジョアンヌの情感豊かな質の高い歌唱に心奪われたという。
89年、デイヴィッド・フィッツジェラルドとデイブ・ベインブリッジはまたいくつかのプロジェクトで仕事をともにしたが、一方で自分達自身のものを作りたいという切実な要求に駆られていた。ジョアンヌの方も、今では自分が医者の仕事に向いていなことを実感していた。アメリカで休養を取りながら彼女は、自分が何をすべきなのか神の導きを請うた。すでに2人のデイブが新しいプロジェクトを始めることは知っていたし、彼らがヴォーカリストを探していることも聞いていた。インストルメンタルのみの簡単なデモ・テープを聞いてみると、とても好きな曲だった。ただ問題はそれに自分の声がうまく合うかどうかだった。
アメリカから戻ると、デイヴィッド・フィッツジェラルドからはがきが届いていた。それは、スコットランド西岸の小さな島、アイオナ島から差し出されたものだった。はがきのことはすぐに忘れてしまったが、ジョアンヌはアイオナ島の夢を見た。97年のアイオナのライブ・アルバム
'Heaven's Bright Sun' で彼女はこの夢のことを次のように語っている。
「アイオナ島にいる2人のデイヴから、はがきが届いたあと、私は深い眠りに就きました。そして、アイオナ島にいる夢を見たのです。実際はまだ一度も行ったことのない場所なのに、夢の中のアイオナ島はなまなましく、リアリティがありました。今でもその感覚は覚えています。青々と繁った平坦な草むらを抜けてゆくと、白い砂浜の向こうに海が広がっていました。そしてその時私は、まるで何かにつり上げられでもしたかのように、空に上って行きました。見下ろすと、島は霧に覆われています。霧は渦を巻きながら、やがて消えていきました。そして、その中に私は、十字架の形を見たのです」
この生々しい夢は彼女にとっては、神の啓示にも等しかった。夢から覚めて、彼女はピアノに向かい曲を作った。その曲
'Iona' はジョアンヌが初めてアイオナのために作った曲となった。(アイオナのファーストアルバムに収録)このあとジョアンヌは作曲のため、試験的にデイブ・ベインブリッジとのセッションに参加することになる。さらに数週間後には、グリーンベルト・フェスティバル周辺の小さなテントで、2人のデイブとのギグを行った。(89年8月)こうしてアイオナが誕生することになるのである。(ジョアンヌの経歴についてはオフィシャル・ページのプロフィールに基づいて記載している)
ファーストアルバム 'IONA' は90年にリリースされている。それ以降、97年までに合計4枚のスタジオ録音盤と1枚のライブアルバムが発表された。アイオナのリード・ヴォーカリストとして、また作曲家として、ジョアンヌは非常に高い評価を受けており、94年と96年にはクラシック・ロック協会賞のベスト女性ヴォーカリストにも選ばれている。
我が国でも、ジョアンヌの熱狂的なファンは多い。プレイステーション用ゲームソフト「ゼノギアス」(98年発売)の音楽担当をされた作曲家の光田康典さんもその一人。このゲームのテーマ曲
'SMALL TWO OF PIECES' のヴォーカリストとしてジョアンヌが起用されている。(ゼノギアス・オリジナル・サウンドトラック デジキューブ SSCX
10013)録音は97年、ダブリンでの録音では、彼女のヴォーカルのセンスの良さに日本側スタッフは舌を巻いたという。
さて、ジョアンヌのソロの発売と期を同じくして、アイオナとオーケストラとのジョイント・ライブアルバム
'Woven Cord' が、そして昨年の5月には待望のスタジオ録音盤 'Open Sky' が発表された。さらに、この2月にはいよいよ来日公演も実現する。ジョアンヌの類い希なるヴォイスをいよいよ生で聞くことができるのだ。
最後にアルバム11曲目の 'When I Survey' について少し解説を加えておこう。
緩やかなリズムに乗って、朗々と歌われるこの曲はこのアルバムいちばんの聞き所だ。ジョアンヌ自身この曲がたいへん気に入っているとみえて、アイオナの4枚目のアルバム
'Journey into the Morn' 以来、2枚組のライブアルバム、そして本作と3つのバージョンを聞くことができる。神の偉大なる愛への帰依をテーマとするこの曲、そのメロディーは有名なトラディショナル・ナンバー
'The Water Is Wide' と同じもの。よりゆっくりとしたテンポで歌われるジョアンヌの歌がどこまでも広がっていく。のびやかで、きりりとした美しさがひときわ冴える名曲だ。
2001年1月
ケルティック・ミュージック・オンライン
藤田 敏幸
来日公演応援スペシャル企画
●デイヴ・ベインブリッジ来日直前インタビュー●応援メッセージ:ミュージシャン/心斎橋kasaya.com
代表 宮武和広 ●応援メッセージ:コンポーザー&アレンジャー 光田康典
●応援メッセージ:ケルティックミュージックオンライン 藤田敏幸
●応援メッセージ:THE MUSIC PLANT 野崎洋子●
来日公演終了後の企画
●デイヴ・ベインブリッジ、ライターの内田哲雄氏によるインタビュー●ツアーレポート●ライブ・レビュー●