OTHER VOICES - songs from the room


 最初に2003年2月からアイルランドの国営放送RTEで放映された音楽番組「Other Voices - Songs From a Room」について簡単に説明しておこう。というのも本作はこの番組をもとに作られた、いわば副産物的なコレクションだからだ。番組の収録にあたっては、ケリー州ディングルにある築200年以上という由緒あるセント・ジェームス教会が使われ、80名の客席を用意して本物のギグのような雰囲気を作り出している。これは音響的に素晴らしい効果を上げるのに一役買っているようだ。さらに特筆すべきは、2002年12月中旬の6日間にすべてのアーティストをブッキングし、まとめて収録するという方法をとっていること(翌年も同じ方法を踏襲している)。それを編集で13のエピソードに分けて、毎週1回放送するのだ。演奏するセットは毎週1アーティストとは限らず、複数のアーティストが出演する変則的なエピソードもある。
 プロデューサーのフィリップ・キングはミュージシャン/作曲家であり、ブロードキャスターとしても20年以上のキャリアを誇る。アイルリッシュ・ミュージックの原点と現在進行形を映像化した「Bringing It All Back Home」や「A River Of Sound」といった音楽ドキュメンタリーの制作でもつとに有名な人物だ。そのキングに番組のプレゼンターを任されたのがグレン・ハンサードで、アーティストのリストアップや交渉では彼の幅広い人脈や人望もかなり生かされていたのではないかと思われる。目利きとしての彼の貢献度も無視できない。初回に放映されたエピソード1は、そのハンサードが率いるザ・フレイムズが登場している。ちなみに初年度のプレゼンターはグレン・ハンサードだったが、2年目はジェリー・フィッシュになり、現在放映されているシリーズではジョン・ケリーが務めている。
 この番組に出演しているアーティストはアイリッシュのミュージシャン、もしくはジョシュ・リッターのようにアイルランド国内で人気のあるミュージシャンということになるだろう(今年のラインナップを見ると、もう少し幅が広くなってエディ・リーダーやドノヴァン、スティーヴ・アールなど有名アーティストも出演リストにその名を連ねている)。もちろんアイルランドでは人気があって有名でも、日本ではまったく紹介されないミュージシャンも当然のことながら数多く存在している。また、ほとんどのアーティストがインディーズのために国外へのプロモーションやディストリビューションがなく、アマゾンのようなオンラインCDショップでも扱われていないことが多い。つまり日本にいて彼らの音楽に触れる機会といったら、驚くほど限られているのだ。
 そういうわけで、このTV番組に出演したアーティストの代表曲を1枚にまとめたオムニバスCDのリリースは、計り知れない価値がある。アイルランドの新進アーティスト、とりわけ地味に見られがちなシンガー・ソングライターの新たな才能を知る上で格好のライヴ音源であり、何よりいままで聴いたことのないアーティストの奏でる美しい音楽を心から楽しめたことの意味は大きい。番組はすでに3年目に入り、CDもシリーズ第3弾がリリースされたばかりだが、まずは最初の2枚をじっくり味わってもらって、お気に入りのアーティスト、気になるシンガー・ソングライターが見つかったら、オリジナル・アルバムを手に入れて聴いてみるのもいいだろう。
 以下に、収録アーティストとオリジナル・アルバムについてごく簡潔にまとめておいたので、参考にしてもらえればありがたい。
 

1−1. American Townland
インタフィアランスは西コーク出身のファーガス・オファレル(ボーカル)とジェイムス・オリアリー(ギター)の2人が中心になって80年代半ばに結成されたバンド・ユニット。90年代にはオファレルが筋ジストロフィーに罹り、活動休止を余儀なくされるなど紆余曲折あったが、やがて数々のジャム・セッションやコラボレーションを試みながら着実にライヴ・アクトとして人気を伸ばし、1993年にEP「Looking For Someone」を、1995年にはアルバム『Interference』をリリース(2003年に再発された)。現在もダブリンではカルト的な存在として人気がある。
*未発表曲。インタフィアランスのライヴ演奏だけを完全収録した9曲入りの同名アルバム『Other Voices - Songs From A Room』(Sound Sound / 2004)がリリースされている。
 

1−2. Snow Is Gone
デヴィッド・グレイが築いた輝かしいサクセス・ストーリーをジョシュ・リッターもまた歩みつつある。彼はアイダホ出身だが、ちょうどボストンに住んでいた頃に出会ったグレン・ハンサードやスティーヴ・ファナガンといったアイリッシュ・ミュージシャンとの親交がそもそも彼にダブリン行きを決意させたと言われ、2000年にファナガンが主宰するマンゴ・レーベルからリリースされたコンピレーションCD『For Your Machine』収録の「Potter’s Wheel」(1999年の自主制作CD『Josh Ritter』から)がアイルランドで彼の才能を認められる契機となった。2作目の『Golden Age Of Radio』からシングル・カットされた「Me &Jiggs」はアイルランドのトップ40にチャートイン。『Hello Starling』もヒットし、彼のトリビュート・バンドまで出現。ホットプレス誌(アイルランドでもっとも有名な音楽誌)による毎年恒例のリーダーズ・ポール<インターナショナル部門>では男性シンガー、ソングライター、フォーク・アクトの3カテゴリーで昨年に続いて第1位に輝いている。
*オリジナルは『Hello Starling』(Independent / 2003 *米Signature Sound / 2003)に収録。
 

1−3. Healthy
弱冠20歳のマンディ(エドマンド・エンライト)が『Jelly Legs』を引っさげてメジャー・デビューを飾ったのが1996年。アルバム中の1曲「To You I Bestow」が幸運にも大ヒットした映画『ロミオ+ジュリエット』のサントラに収録されたことで、一気に知名度がアップした。ところが2000年初め、2作目が完成していたにもかかわらずソニーがリリースを拒否。これを機に自身のレーベルを設立することに。アイルランドでダブル・プラチナムの好セールスを記録した『24Star Hotel』に続き、2003年には米テキサス州オースティンで当地のミュージシャンらとセッションを重ね、『Raining Down Arrows』を完成。2004年にリ
リースされると、瞬く間にアルバム・チャートの1位を獲得してしまった。
*オリジナルはEP「The Moon Is A Bullet Hole」(Camcor / 2000)、『24 Star Hotel』(Camcor / 2002)に収録。
 

1−4. Universal
あのエクトル・ザズーのプロジェクトに参加してヨーロッパ・ツアーに同行したこともあるという意外な経歴を持つニーナ・ハインズ。1999年にミニ・アルバム『Creation』を気心の知れたミュージシャンたちとダブリンで制作。2002年発表の『Staros』ではエレクトロニカを意識したアプローチとエモーショナルな歌唱で、ジェマ・ヘイズにも共通する個性的でコンテンポラリーなサウンドを追究している。ライヴではザ・ハズバンズという男性3人組のバンドを率いて活動中。
*オリジナルは『Staros』(Reverb Records / 2002)に収録。
 

1−5. Closer To Happy
エメット・ティンリーは知る人ぞ知るザ・プレイヤー・ボートの中心人物として90年代から活動してきたが、2001年にソロ・アーティストとしてアトランティックと契約。オランダやデンマーク、イギリスなど居住地を転々と変えながら曲作りを続け、最終的にはニューヨークでレコーディング。完成したデビュー作『Attic Faith』はアイルランドで今年4月にやっとリリースされたばかり。震えるような物悲しさをたたえた天使の如き歌声、シンプルでフォーキーな演奏は無類の美しさを誇っている。
*オリジナルは『Attic Faith』(Independent / 2005)に収録。
 

1−6. True Friends
2−19. Upside Down
90年代はアン・エモーショナル・フィッシュのヴォーカリストとして知られた顔だったジェラード・ウィーラン。その彼の分身とも言えるのがジェリー・フィッシュである。2003年、タランティーノ映画のサントラをイメージして作ったという『Be Yourself』(ジェリー・フィッシュ&ザ・マッドバグ・クラブ名義)がアイルランドで大ヒット。ブルースやジャズ、ラウンジ音楽などが渾然一体となった音作りが新鮮だったこと、デビュー・シングルでもある「True Friends」はボーダフォンのキャンペーン・ソングに使われたことなどもあって、かなりの話題とセールスを記録したという。2004年にはライヴ盤『Live At The
Speigeltent』をリリース。
*オリジナルは『Be Yourself』(Rubyworks / 2003)に収録。
 

1−7. Other Men
マ−ティン・フィンケは4歳の時にドイツからアイルランドに移住、コネマラ地方で少年時代を過ごす。しばらくスペインに滞在した後、1998年に渡米し、ボストンを拠点にしながら宅録によるソロ・アルバム2枚をマンゴから発表。2002年にはアイルランドに帰国。通算4作目となる『Untended Stories』に続いて、今年1月には新作『Crown Time』を出したばかり。
*オリジナルは『Untended Stories』(Parallel Music / 2003)に収録。
 

1−8. Volunteer
マーク・ギアリーはダブリン出身の32歳。19歳の時に渡米し、兄カールが経営するNYイースト・ヴィレッジのクラブ、Sin Eのステージでシンガー・ソングライターとしての本格的な活動を始めている。あのジェフ・バックリーの薫陶なども受けながら曲作りに励み、メランコリックな作風の『33 1/3 Grand Street』で実質的なデビューを飾る。グレン・ハンサードやジョシュ・リッター、ジェマ・ヘイズらが参加している新作『Ghosts』はロン・セクスミスあたりを想起させる好作に仕上がっている。
*オリジナルは『33 1/3 Grand Street』(Independent / 2003 *米sonaBLAST!Records / 2002)に収録。
 

1−9. Belle
かつてフレックス&ザ・ファストウェザーというグループに在籍していたポール・ティールナンは、キャッテル・ケイネックやシネイド・ローハンなどのギタリストとしても精力的に活動した後、1995年に『Who's Fooling Who?』でソロ・デビュー。現在はインタフィアランスの新しいギタリストとしてバンドをサポートしている。
*オリジナルは『Belle』(Right Stuff / 2004)に収録。
 

1−10. Stars Above
80年代にブラック・ヴェルヴェット・バンドのヴォーカリストとして音楽キャリアをスタートさせたマリア・ドイル・ケネディ。彼女はホットハウス・フラワーズのオリジナル・メンバーとしての活動歴もある。アラン・パーカー監督の映画「ザ・コミットメンツ」にシンガー&女優として抜擢されてその才能を認められ、映画やテレビ、舞台などで幅広く活躍するようになった。2001年には彼女自身が設立したレーベル、マーメイドからアーバン・ソウル色を打ち出した『Charm』でソロ・デビューを飾っている。
*オリジナルは『Charm』(Mermaid / 2001)に収録。
 

1−11. On A May Morning
マコーマック3兄弟が中心になり90年代中頃から活動をしてきたジュビリー・オールスターズ。彼らのパフォーマンスには故ジョン・ピールも一目置いていたというが、パーニス・ブラザーズのトム・モナハンがプロデュースした2作目『Lights Of The City』のリリース後、いち早くソロに転向したのが末弟のバリー・マコーマックだった。アイリッシュ・フォークの伝統に倣ったギターの弾き語りスタイルでレコーディングされた『We Drank Our Tears』にはトミー・メイケムの「As I Roved Out」にインスピレーションを得て書いたという「On A May Morning」など、いくつもの悲哀に満ちた歌の世界が詰まっている。
*オリジナルは『We Drank Our Tears』(Hag's Head / 2003)に収録。
 

1−12. Party On
ハードコア・フォークとも称される社会派のSSW、ダミアン・デンプシー。彼はアイリッシュのシャーン・ノス(無伴奏歌唱)の伝統とボブ・マーリーのスピリットを受け継いでいるという点でユニークな存在である。1997年に「Dublin Town」がシングル・チャートの18位を記録して耳目が注がれると、2000年にはこの再録音ヴァージョンを含むアルバム『They Don’t Teach This Shit In School』で本格デビュー。2002年にはジョン・レイノルズのプロデュースにより、シネイド・オコナーをフィーチャーしたEP「Negative Vibes」を発表し、彼女の欧州ツアーにサポート・アクトとして同行。2作目の『Seize The Day』でブレイクし、モリッシーのアタック・レーベルと契約。アイルランドだけでなく英米でも高い評価を得ている。今年3月にリリースされた3作目の『Shots』も好評だ。
*オリジナルは『Seize The Day』(Clear / 2003)に収録。
 

1−13. Star Star
80年代末にグレン・ハンサードとデヴィッド・オドラムを中心にダブリンで結成されたザ・フレイムズは元々ライヴに定評があった実力派のバンド。U2と同じアイランドと契約後、英国のZTTレーベルに移籍したがヒットが生まれず、『Dance The Devil』を最後にメジャーとは袂を分かつことになる。しかしスティーヴ・アルビニのプロデュースによる2001年発表の『For The Birds』がポスト・ロック的文脈、とりわけスリントやトータス、ウィル・オールダム、ロウなどとの親和性をもって語られたことで、米国や日本でも次第に脚光を浴びる存在に。新作『Burn The Maps』(日本盤はP-Vineから)でさらなる音楽的深化を印象づけ、いよいよブレイクの予感。
*オリジナルは『Dance The Devil』(ZTT / 1999)に収録。
 

1−14. The Blower's Daughter
いま米国でもっとも有名なアイリッシュのSSWといえばダミアン・ライス。そしてダミアン・ライスといえば、まず思い浮かぶのが映画「クローサー」でもフィーチャーされている「The Blower's Daughter」だろう。アイルランドでは2001年にリリースされ、記念すべき最初のヒット・シングルとなった。さらにコンポーザー&プロデューサーのデヴィッド・アーノルド(父方の親戚だそう)のアドバイスを得て完成させたデビュー作『O』が大ヒットし、英米でも一躍注目を集める存在となった。ちなみに彼が在籍していたジュニパーはダブリンでは人気のあるラウド・ロック・バンドで1997年にポリグラムからデビューしたが、アルバムを録音する前に脱退。『O』に収録された「Volcano」や「Amie」などは
ジュニパーにいた頃に書かれた曲である。ミャンマー民主化運動の指導者、アウンサン・スーチー女史60歳バースデイを祝うキャンペーンのために録音した「Unplayed Piano」がまもなくリリースされる予定。
*オリジナルは「The Blower's Daughter」(DRM / 2001)、『O』(DRM / 2002 *米Vector / 2003 *ワーナー / 2005)に収録。
 

1−15. Anyone Who’s Yet To Come
2−3. Self Servin’ Society
その愛らしいルックスとメロディックかつハートフルな音楽の作り手としてアイルランドでも随一の人気を誇るパディ・ケイシー。12歳の頃からダブリンのグラフトン・ストリートでバスキングをしながら自らの音楽を探究してきたという若手SSWのひとりで、その才能に目を付けたS2(ソニー傘下のUKレーベル)から1999年にデビュー作『Amen (So Be It) 』をリリース。トップ20入りする成功を収め、新人アーティストとして破格の注目を集めた。4年ぶりにリリースされた2作目の『Living』も大ヒットを記録。ライヴでも驚異的な動員を誇るなど、パフォーマーとしても目覚ましい成長を遂げている。
* オリジナルは『Living』(S2 / 2003)に収録。
 

1−16. What Would I Know
ロウシィことアラン・ロウイはオファリー州ビール出身。ポール・サイモンやトム・ウェイツに影響を受けたという彼のデビュー作『Sketch The Day, Paint The Night』には元スウェードのバーナード・バトラーが演奏面で手を貸しているほか、同郷で親友のマンディも参加。2004年に発表された『Only Love Is Real』が最新作。
*オリジナルは『Sketch The Day, Paint The Night』(Blue Cloak / 2001)に収録。
 

1−17. Standing In Doorways
コーク出身のゲル・ウルフはニュー・スカイラークスをバックに録音した2作目の『Ragged Ground』が各紙で絶賛され、その実力を認められたトラッド&ルーツ系のSSW。新作『Heaven Paints Her Holy Mantle Blue』にも参加しているカラン・ケイシーやジョン・スピラーンと親交が深い。
* オリジナルは『Heaven Paints Her Holy Mantle Blue』(Raggedy / 2004)に収録。
 

1−18. On Taobh Tuathail Amach
ご存じ、キーラの野生児ロナン・オ・スノディ。彼は同世代のロック・ミュージシャン、たとえばリアム・オメンレイやグレン・ハンサード、故ミック・クリストファーらとも旧知の間柄で、ザ・フレイムズの初期メンバーとして演奏に加わっていたこともあった。キーラの音楽性と同様、ジャンルを横断した幅広い活躍ぶりで、ソロ・アルバムも3枚リリースしている。最新作『Playdays』(日本盤はプランクトンから)はSSW色をこれまでになく明快に打ち出したフォーキーで美しいサウンドに仕上がっているそう。
*オリジナルは『Tog e go bog e(トゥゲ・ゴ・ボーゲ/キーラ)』(Kila / 1997 *日ビデオアーツ / 1998)に収録。
 

1−19. Limerick
ミュージシャンとしてはほとんど無名だったジョン・ヘガーティ。イギリスからの帰国後、アイルランドのリメリックに居を構え、もともと短編小説として構想したストーリーを音楽に移植して作り上げたのが『Twilight』という作品集。ティム・バックリーやニック・ドレイクからインスパイアされたと思しきサウンドは、フルートやチェロなど管弦楽器を効果的に使ったアコースティックな仕上がりになっている。
* オリジナルは『Twilight』(Independent / 2001)に収録。
 

2−1. Staring At The Sun
コークで結成されたザ・ヤング・オフェンダーズのフロントマン、キアラン・マクフィーリーがソロに転向し、シンプル・キッドとして活動をスタート。デビュー作『Sk1』を聴けばわかるように、彼の音楽はベックを想起させるローファイ宅録的な音楽的土壌から育ったもので、フォーク・ロックやエレクトロニカ、ヒップホップなどの要素も過不足なく含んでいる。バッドリー・ドローン・ボーイやベータ・バンドなどに通じるポストモダンなSSWのひとりだろう。
*オリジナルは『Sk1(シンプル・キッド#1)』(2m / 2003 *米Vector / 2004 *東芝EMI / 2004)に収録。
 

2−2. Evening Sun
その美しい容姿と魅惑的な歌声で数多くのメジャー・レーベルが獲得に興味を抱いていたというジェマ・ヘイズだが、彼女のクリエイティヴな姿勢をもっとも理解してくれたという新興レーベル、ソースからEP「4.35am」で2001年にデビュー。翌年発表されたアルバム『Night On My Side』は日本でもリリースされ、一部で話題になった。辣腕プロデューサー/ギタリストのデヴィッド・オドラムとのコラボレーションもさることながら、デヴィッド・フリッドマンを起用しての野心的なサウンド・アプローチにも瞠目させられた。待望の2作目はジョーイ・ワロンカーのプロデュースで、今秋にもリリースされる予定。
*オリジナルはEP「4.35am」(Source / 2001)、『Night On My Side』(米 Astralwerks / 2003)に収録。
 

2−4. Heyday
グレン・ハンサードはザ・フレイムズでの活動以外にソロ・アクトとしても国内外でライヴを行なっている。ここで彼が歌っている「Heyday」はグラフトン・ストリートのバスカー仲間であり、ザ・メアリー・ジェーンズのフロントマンだった故ミック・クリストファーの代表作で、生前に発表したソロ EPの表題曲である。ちなみにダミアン・ライスの『O』は彼に捧げられている。
*オリジナルはMic Christopher「Heyday」(2000)、『Skylarkin』(Loza / 2002) に収録。
 

2−5. Captain Casanova
アイルランドを拠点に活動するメキシコ出身の異色の男女ギター・デュオ、ロドリゴ&ガブリエラ。ダブリンでのバスキングをきっかけに一躍注目を浴び、ダミアン・ライスらと共演。メタリカをレパートリーに加えるなどラテンやジャズにとどまらず、さまざまな音楽性をブレンドした変幻自在のプレイで人気沸騰中。
*オリジナルは『Live Manchester and Dublin』(Rubyworks / 2004)に収録。
 

2−6. One Man Guy
ターンはヴォーカル&ギターのオリー・コールを中心に結成されたロック・トリオ。ライヴで実績を積み上げ、2003年に自ら設立したレーベル、ナーチャーからリリースした2作目の『Forward』をアルバム・チャートのトップ20に送り込み、揺るぎないファンベースを獲得している。最近はオリー・コールのソロ活動が目立っている。
*ルーファス・ウェインライト『Poses(ポーゼス)』(Dream Works / 2001)から(ラウドン・ウェインライト三世のカヴァー)。
 

2−7. Erin The Green
10代の頃からその卓抜した歌唱と可憐さで注目の的だったカーラ・ディロン。1995年に渡英し、ケイト・ラスビーに代わって加入したイクエイジョンで精力的に活動したが、アルバム制作が頓挫。バンドのメンバーだったサム・レイクマンとデュオとして再出発する。2001年にソロ名義でアルバム・デビューを果たすと、各方面から絶賛を浴び、BBCフォーク・アワードの新人賞を獲得。2004年1月には『Sweet Liberty』(日本盤はミュージック・プラントから)のリリースにあわせてプロモ来日し、彼女の透明感ある歌声と深い表現力を日本のファンにも披露した。
*オリジナルは『Sweet Liberty』(Rough Trade / 2003)に収録。
 

2−8. Daybreak
1999年、バンドのフロントマンだったダミアン・ライスが脱退後、空中分解したジュニパーのメンバーが心機一転、再出発したのがこのベル・エックス・ワンである。2000年に元クラウデッド・ハウスのニック・シーモアをプロデューサーに迎えて制作された『Neither am I』がポップでリリカルな音楽性で評判となり、さらに2作目の『Music In Mouth』も国内外で高い評価を得るが、コマーシャルな成功ではザ・スリルズに先を越された感がある。
*オリジナルは『Music In Mouth』(Island / 2003)に収録。
 

2−9. Metropolitian Avenue
クリスティ・ムーアについてはいまさらここに書くまでもないだろう。60年代末からプランクシティ、ムーヴィング・ハーツのメンバーとしてもアイルランドの音楽シーンを牽引してきた重要人物のひとりで、何のけれんもなくギターを弾きながら歌う姿からはカリスマ的な空気が漂う。ノエル・ブラジル作の「Metropolitian Avenue」は、2002年発表の『Live At Vicar Street』にも収録されているが(最良の伴奏者であるデクラン・シノット、ドーナル・ラニーと共演)、クルーナーとしての唯一無比なパフォーマンスは健在だ。
*オリジナルは『Unfinished Revolution』(WEA / 1987)に収録。
 

2−10. Quiet Of The Night
元ソーラスの歌姫〜という前口上が必要なくなるほど、ソロ・シンガーとして充実したキャリアを歩み続けているカラン・ケイシー。アイルランドの伝統歌やクラシックの素養の上に、ニーナ・シモンやビリー・ホリデイといったジャズ・シンガーからの影響も柔軟に吸収し、その優美さと憂いを併せ持った歌唱ですでに多くのリスナーを魅了している。今春リリースされたばかりの4作目『Chasing The Sun』はこれまで以上に自作曲を多く含む、セルフ・プロデュースの意欲作。
*オリジナルは『Distant Shore』(Vertical / 2003)に収録。
 

2−11. Saturday
デヴィッド・キットはダブリンのトリニティ・カレッジ在学中から音楽活動を開始し、2000年に『Small Moments』でデビュー。優しく語りかけるような歌声と宅録に長けたユニークな逸材として期待される。ワーナー・アイルランドから発表した3作目の『Square 1』は質の高いソングライティングとストリングスやブラスを導入したメロウなサウンドで好評だったが、契約は更新されず。2004年には自らダブリン・ディスクスを立ち上げて、『The Black And Red Notebook』をリリース。ビートルズ、シン・リジー、ソニック・ユース、R.E.Mなど独自の視点で解釈したカヴァーを収録している。
*オリジナルは『Square 1』(WEA / 2003)に収録。
 

2−12. The Be All And End All
中国人とニュージーランドの先住民族マオリの血を引くビック・ルンガ。1997年にニュージーランドでリリースされたデビュー・アルバム『Drive』でいきなり大ブレイク。ニュージーランド音楽史上最も売れたアルバムとなった。元クラウデッド・ハウスのティム&ニール・フィンとの親交がよく知られているが、ニールが参加した2作目の『Beautiful Collision』はアイルランドのアルバム・チャートで15位まで上昇。すでに多くのファンを獲得しつつある。
*オリジナルは『Beautiful Collision(ビューティフル・コリジョン)』(Columbia / 2002 *ソニー / 2003)に収録。
 

2−13. Forgotten Lake
ハンサム・ファミリーはブレット&レニー・スパークスの米国人夫婦デュオ。ジャンルとしてはアメリカーナと言われるコンテンポラリーなルーツ・ミュージックに属する彼らの音楽はイギリスやヨーロッパでも注目を集めている。彼らのライヴ・パフォーマンスはバックにラップトップPCを使ったミニマルなサウンドから、6人編成のバンドまでフレキシブルな形態をとっている。2003年にリリースされた『Singing Bones』が英国でブレイクするきっかけとなり、それがアイルランドにも波及。アイルランドだけでリリースされたベスト盤『Down in The Valley』もある。
*オリジナルは『Singing Bones』(Independent /2003 *米Carrot Top / 2003)に収録。
 

2−14. You
バリー・ムーア(クリスティ・ムーアの実弟)がルカ・ブルームになったのは1987年、渡米して自分の音楽を再発見する旅の途中だった。90年代にリプリーズと契約して3枚のアルバムを制作。2000年にはシンプルな弾き語りスタイルのカヴァー・アルバム『Keeper of the Flame』を発表した後、自身のレーベル、ビッグ・スカイを興して『Between Mountain And The Moon』を制作。アイリッシュ・ソウルと東洋的な瞑想が深く結び合ったような美しい歌唱が絶賛された。最新作『Innocence』は今春リリースされたばかり。
*オリジナルは『The Acoustic Motorbike(アコースティック・モーターバイク)』(米Reprise / 1992 *ワーナー/ 1992)に収録。
 

2−15. Out Of The Blue
デンマークの天文学者をバンド名に冠したザ・ティコ・ブラーエは、元プレイグ・モンキーズのドーナル・オマホニーとキャロル・ケフ、そしてダーマッド・マクダーマダによって結成された3人組。2002年に『This Is Tycho Brahe』を自主制作。ケイト・ブッシュからコクトー・ツインズ、スティーナ・ノルデンスタムあたりの線上に位置する実験的なスタイルを持ち込み、2枚組のコンセプチュアルな作品『Love Life』で実践している。現在はTychonaut(ティコノート)に改名して活動を続けている。
*オリジナルは『Love Life』(Konstantin / 2003)に収録。
 

2−16. Your World
現在最もホットなSSWのひとりがデクラン・オルールクだろう。ダブリンで始めたパブ・ライヴの評判が口コミで伝わり、SSWのライヴ・ショウケースで有名なルビー・セッションズにも出演。満を持してリリースされた『Since Kyabram』もアルバム・チャートの5位まで上昇し、幸先の良いデビューとなる。その朗々とした歌声と自作曲のクオリティは称賛の的となり、シングルの「Galileo」をいち早くライヴでカヴァーしたエディ・リーダー、プランクシティ、ボブ・ディラン、ポール・ブレディなどのサポート・アクトに次々と抜擢され、早くも大物感を漂わせている。
*オリジナルは『Since Kyabram』(Hummingbird / 2004)に収録。
 

2−17. My Brass Buttons
ザ・ジミー・ケイクは90年代末からダブリンを拠点に活動していたインスト・バンドで、2001年に『Brains』をリリース。2作目の『Dublin Gone, Everybody Dead』ではポスト・ロック的なアプローチを意識したかのような、ヴィヴィッドかつスケールの大きな演奏に挑戦している。デヴィッド・キットのバッキングやティコ・ブラーエのメンバーとしても多忙を極めるマルチ・インストゥルメンタリスト、ダーマッド・マクダーマダもメンバーである。
*未発表曲。
 

2−18. Churchyard
ディングル出身のポーリーン・スキャンロンはシャロン・シャノンのバック・バンドにヴォーカリストとして抜擢されてチャンスをつかみ、その後、ルナサのドナ・ヘネシーとのパートナーシップを軸にソロに転向した。ジョン・レイノルズのプロデュースによるデビュー・アルバム『Red Colour Sun』には、自作曲とモダンな味付けを加えた古いアイリッシュ・バラッド、ドン・マクリーンのカヴァーまで幅広いレパートリーが収められている。
*オリジナルは『Red Colour Sun』(米Compass / 2004)に収録。
 

Jun.2005 / Koichi Arata 荒田光一

 

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