KENSO:清水義央/小口健一/光田健一/三枝俊治/村石雅行
1999年、KENSO結成25年にあたるこの年、ついに8年ぶりのスタジオ録音盤「エソプトロン」がリリースされる。昨年7月、リーダー清水義央は、北海道の小さな湖畔で早朝、この世のものとは思えない“声”をきいた。これは9年前、前作『夢の丘』制作中に訪れたギリシャ、サントリーニ島で切り立った崖の上から海を見ていた時に聞こえてきた声と非常に似ていたという。突然インスピレイションを与えられた清水は1か月後に予定されていたrecording内容に大幅な修正を加えて、新しい作品の制作をスタートさせた。
ファン待望のKENSOの新作であるが、この日を最も待ち焦がれていたのが、小口、三枝、村石らのメンバーであることはこのアルバムにおける彼等のヴォルテイジの高いプレイを聴いていただければお解りになるであろう。スケジュールの都合で参加が危ぶまれていた光田であったが、recording後半にスタジオに立ち寄った際に“音”を聴き、「やりたい気持ちがフツフツとわいてきて」強く清水に参加を申し入れたという。
名作「夢の丘」の幻想性は小品「湖畔にて」にひきつがれ、またドラム・ループと民族楽器が交錯する「クロノス・ウーラノス・エソプトロン」では新生面を感じさせてくれるが、アルバムを被うワイルドかつエモーショナルな音からは、過去のどのアルバムよりも彼らの熱きロック・スピリットが眩いまでに放射されている。清水、小口の常時ロック組は勿論、三枝は若き日の自己のヒーローJack
Bruceの記憶をよびおこし、村石は芸大打楽器科入学時に封印してしまったパンクロッカーの血を再びみなぎらせた。ここまでアグレッシブなKENSOを誰が予想したであろうか。小口作品の真骨頂「Gips」はスタジオヴァージョンならではの彩色が施され現在のKENSOの代表曲となった。一方、今年1月から教会のオルガン奏者としての一歩を踏み出した清水の曲に既に宗教音楽からの影響が感じられるのも興味深い。加えて「夢の丘」以来の全作品のエンジニアリングを担当しメンバーの信頼も厚い福島及び日本屈指のGuitar
builder & Guitaristの志村昭三の協力・貢献も見のがせない。
KENSOは1980年に自主制作のファーストアルバムをリリースして以来、寡作ながら自らの表現欲求に忠実な活動を続けてきた。意気に感じたミュージシャンが集結し、ファンは彼らの音楽に熱狂するとともに、その創作姿勢にも大きな共感を示している。コンサートの後のアンケートやホームページにはKENSO初体験者の「どうしていままでKENSOの存在に気づかなかったのか!」というコメントが多く寄せられているが、軟弱な音楽に飽き足らないリスナーがこの「エソプトロン」にたどりついてくれることを祈っている。
●泣き笑い
光田のソロアルバム収録曲「Cry'n Smile」は明らかにKENSOへの挑戦状である。確かによくできた曲ではあるが、私ならこうやるな。村石の意見により更に変拍子化した。
●少年の気球
ティーン・エイジャーのころ作った曲を組み合わせたもの。ブラスバンド以来人前で吹いていなかったフルートを・・・
●祝祭
「泣き笑い」のリフをもとにしたインプロヴィゼイション。
●願いかなえるこどもをつれていこう
長女が3歳の時に作った同タイトルの詩にインスパイアされて作曲した。前半の秀逸なベースラインは三枝によるものである。
●湖畔にて
北海道の小さな湖のほとりでのミステリアスな体験を思い起こしながら即興で
イメージのわくまま に 録音していった曲。
●在野からの帰還
長女が生まれる少し前から3年間、音楽制作から離れフツーのヒトとして生活した。今思い返すと、
本当に幸せな貴重な日々であったが、活動再開した当時は音楽のない毎日が限界にきていたように感じていた。復帰第1作。
●The Egg of Joe
家族によるささえについての曲。
●クロノス・ウーラノス・エソプトロン
時・空(天)・鏡‥‥。音楽は自分を映し、解き明かし、そして癒す。
●躁の悲哀
欝状態のときのことよりも、ふりかえると躁状態のときのことのほうが、その時自信満々だっただけに悲哀を感じる。
●Release Yourself
我々はなんのためにロックするのか?
●気楽にいこうぜ
と言ってはみたものの、こんなんなりました
<曲目解説:清水義央>