ハウゴー&ホイロップ インタビュー
akiii+おおしま・ゆたか
通訳 染谷和美
渋谷 マイ・スペース
2004.12.14

 2年ぶり2度目の来日を果たしたハウゴー&ホイロップは、今回も新たなファンをたくさん獲得していった。そして何よりもアルタンのダーモット・バーン、マーク・ケリーの二人とのセッションは、この世に音楽が存在するのはこのためだと誰もが納得するような、極上の体験をさせてくれた。

 今回のインタヴューには普通のジャーナリストの視点からのマンネリから脱けるため、ハウゴー&ホイロップのファンであり、自らフィドルも習っている akiii 氏に助っ人をお願いした。メール・マガジン『クラン・コラ』に時々執筆していただいている縁である。質問事項は akiii さんにまず考えていただいたのを叩き台にして練った。結果は、ちょっと趣向が変わった、面白い話がいろいろ聞けたのではないかと思う。

 ということで、以下はほぼ二人がしゃべった通りのテキストである。
 なお、通訳の染谷さんには、いつもながら質問の裏の意味までくみ取って意思疎通を助けていただいた。あらためて御礼申しあげます。

--- まず、お聞きしたいのは、メドレーの組み合わせの曲目や順番はどうやって決めていくのでしょうか?

ハラール・ハウゴー(以下ハラール):そうだね、その時によっていろいろなんだけども、ひとつパターンとして考えられるのは1曲目がスローな感じで、そこから徐々にテンポを上げて3曲目で思いっきり速くなって終わるというような流れをつくるものだな。あるいはもうひとつのパターンとしては、大体3曲でひとつのメドレーをつくるのでメジャーコードの曲、真ん中をマイナーで、そしてまたメジャーで終わるっていう流れをつくる、というこの2つのパターンが基本かな。

モーテン・アルフレズ・ホイロップ(以下モーテン):2曲でつくるときは、とにかく2つ合わせたときに1曲の長い曲になるくらい相性のいいものを選ぶことが大事なんだ。全く同じようなものではもちろん困るんだけれども、違和感なくつながるものを選ぶ事が大事なんだ。
それと、そもそもどうしてその曲を組み合わせるのかという疑問もあるかと思うんだけど、僕らがやっているものは本質的にダンス・ミュージックだということ、もちろんダンス・ミュージックはすごく美しい曲だけれどもシンプルなつくりで、リズム的にもメロディ的にもいいんだけれども、それだけだとコンサートでやったときにちょっと華がないっていうときに違う素材をもってきて組み合わせることによって、より進んだ形というか、さらに可能性がひらけるというか、より自分達なりにいろいろ工夫をこらせる大きな曲になっていくという良さがあるわけなんだよ。

ハラール:2曲で1曲にするときにはトラディショナルなものと自分たちでつくったオリジナルを組み合わせる時がほとんどなんだけれども、その時はトラッドの曲を先にみつけといて、それに合うものを書く、あるいは自分達で書いた曲が先にあって、それにぴったりとくるようなトラッドの曲を探す、その両方の形で作業が進む場合があるんだ。〈Middag i Haven〉(新作《イン・ザ・サマー》の1曲目)は自分たちで書いたオリジナル曲が先で、それに合うようなトラッドの曲ないかなと探して、あのワルツを見つけてきたというパターンだったね。

モーテン:トラディショナルなメロディっていうのはさっき言ったようにとてもきれいでかつシンプルというものだからね、そこに自分たちが書いたものを加えることによってトラディショナルな曲をまた違う形で聞いてもらえるという利点がある。一方で自分たちで書いた曲に既存のトラディショナルの素敵なメロディを添えることによって、そもそもトラディショナルでここまで長く語り継がれてきている曲というのはある意味ヒット曲、みんなが気に入って残してきていた曲なわけだから、そのトラディショナルの曲が持っている力というものを自分たちのオリジナル曲に取り込むことができる、そういう利点もあるね。

--- ライブでの即興と既存のアレンジの割合はどれくらいなんでしょう?

ハラール:二人だけでやることがいっぱいステージではあるわけだから、なかなか自由に変えるというのは限界がある。ごまかしがきかないから(笑)。ただ僕らがほどこすアレンジメントというのはアレンジとしてやるけれども、その中には既に即興的要素が多分に含まれているということと、同じメロディをアレンジされた通りに弾いたとしても、その時によって強弱の加減とか音の響きの個性とか、テンポとかいったものが微妙に毎回違ってくるし、ライブでやる以上当然そうなるでしょう。音楽は生き物だし、僕らほど毎年何回もいっぱいコンサートをやっているとなると毎回同じという訳にはいかない。やはり微妙に変わってくるよね。

モーテン:あとね、ステージで演奏中に僕が「今のとこ、もう1回!」と声をかけてもう1度繰り返してやるときもあるし、ステージにあがる直前にちょっとアレンジを変えるという時もあるんだ。曲の組み合わせを変えたりとかね。

--- アレンジをやる時には、どちらが主導権を握るんでしょう。

モーテン:やっぱり一緒だね。僕の方が思いついたことが基本になっていくこともあるし、ハラールが持ってきたアイデアからということもあるけれども、2人でやってしっくりくるというのはやっぱり両方の意見を出し合って一緒につくりあげたもの、お互いが共に気に入ったアイデアから発生したということになるかな。例えばハラールが持ってきたアイデアであってもそれがインスピレーションになって僕の方がまたアイデアがわいてという形で膨らんでいくことも多いんだ。まあ、たまに気に入らない時もあるけどさ(笑)。でもそういう形が一番望ましいみたいだね。
 一緒にアレンジを初めてやったときのことをまだ覚えているんだけれども、2曲くっつけて一つの曲を、ということでアレンジしているときに、「これいい感じなんだけれどもマイナーのパートをちょっと入れたらどうかな、そうするとメジャーに戻ったときによりハッピー感があるんじゃない?」なんて話になって、「こんな感じ? 例えば」「あ、そうそう」とその時すごく息があったのを覚えている。

ハラール:まずデュオというものの基本概念でいうと、芸術面から考えるべき点と、もっと実用性から考えなきゃいけない面と、2つ出てくるんだ。だから2人でやっている以上、僕はこれをやるから君はこれをやれ、そういって割り切ってできるものではない。もちろん分担してやっている部分もあるけれども、2人とも双方が全ての作業に関わっていかなきゃいけないとこがある。でも全てに首をつっこむことによってお互い刺激されるし、やり甲斐ももちろんでてくるし、そうやって双方が全部にかかわっていくことが必要なんじゃないのかな。

モーテン:そうなんだよ、両方が同じだけ意見をだしてくるからぶつかることももちろんでてくるわけだけれども、でも、たとえばハラールが「これ、どうだろう」と言ってきたときに逆の意見をわざとぶつけてゆくときもあったり、そんな議論から面白いものがうまれてくるときもある。2人とも曲を作るから素材っていうのはいっぱいある。お互いが「それいいね」ってことになればもちろん使うし、「どうかな」ということになったら無理に使わなくてもいい、要するに曲は2人の間でいっぱいある、その中から最高のものを選べばいいっていう状況なんで、すごくいい状況ではあるな。

--- リハーサルってたくさんやるんですか?

モーテン:練習はツアーの時だね。サウンドチェックのときなどに「こんなの思いついたんだけど、どう?」と聴かせあったりとか。ついこの前もマスコミ用の写真撮影が3時間にも及んだんで、その間僕の方でギターを鳴らして「なんか書け、書け、これに合わせてメロディつくれ」とやったりなんかしてて。あとやっぱりCDの録音の前とか、そういう時はもちろん集中して、ちゃんと考えてリハーサルするけれども、そうでない時は、もうむしろ、しょっちゅう顔合わせてるので会いたくない(笑)。
 この取材の前にYaeさんのラジオの番組に出てきたんですけれども、一段落して写真撮ったりなんかしている時にYaeさんが今夜ご一緒する時にやる曲を歌ったりなんかして、覚えてるかなーなんて、ちょっと不安だったんだけれども彼女もちゃんと歌ってくれてたし僕もかたわらでギターを弾いたりしながら、よかった、よかった、と。ああいうのがリハーサルだよね、僕にとって(笑)。

--- ライブの時のハラールの足のステップ(リズムをとる音)は、ライブならではの高揚感があって大好きなんですが、あれはリズムをとる以外に、合図とか、何か役割があるのですか? それとも無意識でやっているのでしょうか?

ハラール:あくまでリズムをキープする為にということで無意識でやっていることが実は多いんだけれど、これはトラディショナル・ミュージックの一環でもあるんだよね。要するにダンス・ミュージックでしょ、僕らは二人とも子供の頃からダンス・ミュージックに親しんでやってきたわけだけれども、その中で重要なのはリズム、そのリズムをキープすること。願わくば、その僕が足でリズムをとってるのがうるさいと聞こえるほどでないとことを祈るけれども。でもやっぱりダンス・ミュージックだしね、何らかの形で体を動かすというのがでてきちゃうね。

--- あなたたちのライブはエキサイティングで、高揚する、いてもたってもいられないようなものである一方で、胸の芯までしみこむような「聴かせる」素晴らしいライブだと思うんですけれども、またライブCDやライブDVDを出す予定はないんでしょうか?

ハラール:具体的なことはこちらにおられるレコード会社の方に話してもらった方が早いかな(笑)。DVDの話は前から出てはいるのだけれども、費用がかなりかかるというのがネックになっている。CDの方は何年か前にドイツの小さなレーベルで出してはいるんだけどね。

モーテン:そうだね、費用がかかるからね。僕らのお客さんはマイケル・ジャクソンのお客さんのように大勢どこにでもいる訳じゃないから、それだけのものを払ってしまうと回収にかなり時間がかかるんだ。

--- じゃあ、出すときは是非ハラールの足の音も入れてください(笑)

モーテン:ライブCDの方が現実的なアイデアだね……ライブCDでエンハンスドでちょっとライブ映像が入っているというのが現実的かな。どうかね?(とのざきさんに話をふる)日本特別盤とか。

--- 前回の来日から何か変わったことはありましたか? 《イン・ザ・サマー》もリリースされましたし、来年新作もリリースされるんですよね?

ハラール:《イン・ザ・サマー》に関してはその当時のツアーがものすごい長くって、というか長く感じて、スウェーデン・スイス・ドイツとか廻ってたんだけど、なんかもういい加減明るい光が見たい、あったかいとこがいいなって思って。

モーテン:スウェーデンなんか1ヶ月がかりだったよなー、もう真っ暗でさー、寒くてさー。

ハラール:僕なんか何年か経っちゃったんじゃないかと思うぐらい長く感じたツアーだったんだけれども、そんな中でちょっと深みのある、ちょっとスローな感じの、暖かみのあるものがつくりたくなって、それでできたアルバムだったんだけれどもね。アルバムをつくることによって長かったツアー、とか自分の気持ちにひと区切りをつけて、その作業を通じて、より深く音楽を掘り下げるようになったような気がして、それが音楽的な意味での一番大きな変化だったかな。

--- ツアーはいつも2人だけでやっているんですか? たとえば地元のミュージシャンと一緒にやるとか?

モーテン:基本的には2人でまわっている。たまにゲストを招くということで、ここんとこ一緒にやっているのがフィンランド人のベースの人で、マリア・カラニエミのとこにいたタッパニ・ヴァリスで、ジューズ・ハープもうまい。シベリウス・アカデミーで勉強した優秀なミュージシャンだ。あと若い女の子2人のシンガー。この二人のうちの一人とは4月に15本か20本か、また一緒にツアーをまわることになっているんだよ、20代のまだ若い子なんだけれども。まあデュオとして2人で十分ということもあるんだけれども時々ミュージシャンを招くのも楽しいね。

--- 日本で大人になってから伝統音楽の演奏を学んでいる人へ練習方法などについてのアドバイスがありましたらお願いします。

ハラール:一番良いのは耳で覚えていくこと、音符に頼らないで、その方が表現力を磨くことができるし、音符をつねに目で追っていると音楽的な意味でのスキルとか、もちろんテクニック上のスキルっていうものも、見る方に忙しくなっちゃって磨ききれないところがあるような気がするね。

モーテン:大人になってから音楽を始めた人によくあるが、1曲弾けましたから、はい次いきましょう、って数こなしてても全然意味が無いと僕は思う。むしろ音符じゃなくて耳で曲を覚えると、同じ曲でも弾き方は何通りでもあるわけだし、曲さえ頭に入っていれば、たとえばバスに乗っているとき楽器が手元になくっても自分の頭の中で想像することで、いろんな弾き方を試してみたりとか、頭の中でそうすることができてしまう、そっちの方が大事だ。

--- そのバリエーションというのは、装飾音や強弱や速さということでしょうか?

モーテン:暗譜してしまっていれば、それも自在にできるんだ。頭に入っていないと、なかなかできることじゃない、楽譜を追っていたんでは。

--- 伝統音楽を学んでいる人が機会をつくってクラシックを学ぶのは有益だと思いますか?

ハラール:音楽というのは演奏してもらってなんぼなんだから、いろんなものをやるべきだと僕は思うよ。考え方として、トラディショナルなり、クラシックなり、特定のスタイルに限定してやるべきだって思っている人も確かにいるようだけれども、僕としては全部を混ぜ合わせる必要はない、いくつかの要素をそれぞれから摘み取ってきて、それを自分の脳みその中で組み合わせることで面白いスタイルがうまれてくる。僕は少なくともそうやっているつもりだし、そのやり方は有効だと思っている。僕自身フォークミュージックがすごく大好きだけれども、同時にバロックやジャズも好きだし、世界中にいろいろな音楽がいっぱいあるわけなんだから、それに対して心を開いて、色々やってみるのは全然悪い事じゃないと思うよ。

モーテン:大人で音楽を始める方に対するアドバイスに戻ってしまうんだけど、一つ言わせてもらうと、買える範囲でできるだけいい楽器を買うことをおすすめするな。やはり初めてのものをやる以上は、最初にいい思いをするということがその後の励みになっていくと思う。もちろん、ものすごくいいものを買う必要はないけれども、それなりの楽器を手にすることで無駄に苦労しなくてすむところがあると思うから。

--- どんな楽器を使ってるんですか?

モーテン:ギター両方ともハンドメイドで、1本は Grit Laskin というカナダのメーカーで非常にレアなものですごく高いんだけれども、僕は幸いにもちょっと安くしてもらった。もう一つは Lari B でこれもハンドメイドで、すごくいいものなんだ。

ハラール:フィドルはドイツの古い Klotz。クロッツは、ドイツの南部の小さな町に住んでる大家族で、一軒家の中で、例えばおばさんがスクロール(フィドルの先のくるくるした部分)担当、おじさんが指板担当、みたいな感じで家族ぐるみでつくっている。

モーテン:「フィドル・ファクトリー」みたいな家なんだよな。

ハラール:現代的な形でフィドルをつくるようになる以前の形、家族がチームになってつくっているところ。6年位前に手に入れたものなんだけれども、その段階で色々選択肢がある中でこれを選んだ理由としては、すごくあたたかみのある、深みのある、柔らかな音がする、というのがその当時の僕がすごく気に入った。初めて聴いた時にすごく惚れ込んだ楽器だった。弦はGDA弦がLarsenというデンマーク製で、E弦が Pirastro の Gold Olive。それはフィドル自体の特徴である、あたたかみとか深みとか柔らかさをすごく活かす弦、持ち味をあますところなく表現してくれる弦。弓は2本使ってます。Fritzner というドイツ製のものと、もう一つが Prager という1920年代のフランス、たしかパリ製で、それが一番気に入っている弓。

--- 伝統曲の速さについてはどう考えてますか?

モーテン:基本的に元がダンス・チューンだから、どのように踊られるべきかっていうのを僕らは把握しているので、自分の気持ちの中に特定のテンポっていうのがそれぞれある。ただそれをコンサートでやるにあたっては、必要に応じて、もうちょっとゆっくりにした方がいいと思えば落とすし、あるいはもうちょっと盛り上げようと思えば速くするし、そのへんは自分たちの思いのままに自由にやっている。僕らは別に博物館じゃないんで、中には200年前はこうでしたというテンポを見事に再現するのが得意な人もいるんだろうけれでも、僕らは同じ200だったら、目の前にいる200人の若い日本人の若い人たちに土曜の夜みたいに楽しんでもらえるっていう方を優先して選ぶね。

ハラール:なにしろ元の曲が非常に強靭なので、速くしようがスローにやろうが、やはり曲として絶対に持ち味は殺されない、それだけの力をもっている。

モーテン:そうなんだ、すごく速い曲をゆっくり弾くと、すごく美しいゆったりとした曲になったり、その逆も然り、美しいスローな曲を速くすると、すごくいい感じのアップテンポの曲になったりするんだよね。

--- デンマークもトラディショナルなダンス・パーティというのがあるんですか?

ハラール:モーテンはトラッドのダンスのオーケストラという形で地元の方でもやってるし、ファーンという名前のデンマークの西海岸の小さな島なんかは、すごく独特にトラッドのダンスの伝統が根強く残っているところで、そういうところもあるし、あと全般にデンマークってフォーク・ミュージックといえばダンス、という結びつきは今だにすごく色濃いんだ。

モーテン:僕らのやるパーティというと通常夜8時から11時ぐらいまでの間、20分やって5分休んで、20分やって5分休み、ぐらいの感じで、音楽も特にあらかじめアレンジきちっとして感じでやるのではなくて、メロディがしっかりしていて、スイング感、スイングするというのがある。あとは踊る人が入って、皆さんで一緒に楽しむという感じだね。

--- その演奏しているメンバーはどういう人なんでしょうか? プロとアマの混合?

モーテン:プロはいないよ。ローカルな連中だけ。面白い奴が集まってますよ(笑)。ダブルベースの奴は空港で仕事をしている、鉄鋼関係の仕事をしていてガタイのでかい奴で、とても上手いんだけれど品のないジョークをいっぱい知ってる(笑)。彼はそのまま「ブラックスミス」(鉄鋼屋)と呼ばれている。練習嫌いでね(笑)。フィドラーは左ききで、「左ききのジョン」と呼ばれていて黒髪で、いつも葉巻を吸ってる。練習嫌いで(笑)、釣りが好きで、練習するっていうと「ダメ、今日は天気がいいから釣り日和だから」とか言って。もう一人がフィドラーでダンスも上手い。セカンド・フィドルで、ハーモニーを弾くのが上手い。彼は練習好きなんだ(笑)、でも一緒にやってくれる人がいない(笑)。あと僕と、そういうメンバーなんだ。日本でコンサートをやるようなバンドではないね。やりたがってたけど(笑)。ステージにのせちゃうとまた違うんだね。でもダンス・パーティではすごくいいバンドで。それはやっぱり地元でやる感じが一番。百キロまでだ。南の方の連中だから、北の方行っちゃうと何弾いていいか分からなくなってしまう。そういう地元限定っていう感じの。もっとプロの人なら各地で柔軟に対応してくれるんだろうけど、彼らは地元限定なんだ。コツは分かっている人たちなのでなんとかなるさ、という感じだ。練習しなくても何とかなるんだ。

ハラール:学校の方でもね、教育関係の方でもそういったフォーク・ミュージックに力をいれてて、大学でフォーク・ミュージックで学位をとるような人たちが大学が月に1回、僕なんかの時代は木曜の夜、サーズデー・ナイト・パーティという形で、いわゆるレイヴになぞらえて「ポルカ・レイヴ(笑)」といって皆で集まって演奏して踊り狂うというのをやってるよ。是非一度ご体験ください。外でやるんだよ。

--- 冬も?(笑)

冬はやりません!(笑)夏だけだね、外に出るのは。

--- あなたたちの音楽は明るさに満ちていて、もちろん悲しい曲は悲しく感じさせるのですが、なにか天から祝福されているような、空から光がさしこむような光景が浮かんでくるのですが、演奏しているあなたたちは、なにか浮かんでいる光景やビジョンがあるのですか?

ハラール:そのときによって浮かんでくるものはいろいろなんだけど、たとえば絵柄になっていなくても、色、数字、文字とか、いろんな今まで自分が経てきた状況とか経験とかフィーリングとか、いろんなものが去来します。

モーテン:ただ演奏している時に大事なのは、自分のためにやっているのではないということ。自分が嬉しい気持ちになったり悲しい気持ちになったり、そのためにやっているんじゃなくて、目の前のオーディエンスにそういったいろんな思いを体験してもらう為にパフォーマンスしているのだから。そこは忘れちゃいけないと思うんだ。例えば、女性をダンスに誘うとする。誘う以上は、リードして自分はこんなに踊れるんだってみせたいけど自分だけが楽しんじゃいけない、やっぱり2人で一緒に楽しまないといけない、そんな感じかな。だからオーディエンスが、僕にとってはダンスに誘った女性ということかな。逆にいえばオーディエンスがこっちのステージ側の僕らに興味を示してくれなければ、やっても時間の無駄でしかない。オーディエンスからの反応によっては皆さんが期待していた以上のものをコンサートから得ることができることもあるわけで、例えばちょっとこっちがこんなのどうだろう、って聴かせたメロディにものすごくいい反応が返ってきたら、あ、こういうのがみんな好きなんだな、分かってくれてるんだなあ、ちゃんとついてこられるんだなあ、というところで、じゃあそれを生かして、じゃ、こんなのはどうだ、と、またこちらからもそれを返してあげることができるでしょ。だからオーディエンスの存在というのは、本当にコンサートのノリとか、その晩に何をやるかを決める判断にまですごく大きな一部になってることになるね。

ハラール:もちろんそうなんだけども、そこにもってくまでには、やってる側が100%力を出し切って100%自分を表現しきらないと、なかなか向こうが本気で深い反応を示してくれる状況にはならないよね。まずはこちらが100%出すようにすること、それによって向こうが100%の反応を返してくれるような状況にもっていく、っていうことなんだよね。

--- 日本のオーディエンスはどうですか? 感じていることとか言いたいことがあれば教えてください。

モーテン:全然文句なんか無いですよ。ほんとお客さんたち、オープン・マインドで僕らとしても、すごくやりやすいお客さんです。

ハラール:ほんと恵まれてるよね、こうやって日本で演らせてもらって、僕ら。だから反対にそういうオーディエンスだからこそ、こちらもプレッシャーを感じるというか、やり甲斐があるというか。

モーテン:日本のお客さんの温かさはほんとにありがたい。というのも、やっぱりお互い言葉は通じないだけに、こちらの演奏というのを理解してくれてるかどうかというのがお客さんの反応の中から感じられることがすごく重要なんだけど、それを温かく返してくれるお客さんばかりなので、ほんと最高です。

--- ライブをやっていると、たとえばステージ上で我を忘れるということは無いですか?

ハラール:状況が分からなくなるということはない、だけど我を忘れるということはある。どこにいるのか分からなくなること時はあるなあ、言われてみりゃ。東京だっけ大阪だっけ、みたいな(笑)。

モーテン:パフォーマンスする側から言わせてもらえば、その魅力というのはね、時間のこととか、その他もろもろ悩みのこととか、その瞬間は忘れてしまえるくらい、ものすごく集中できるということなんだ。ある意味ドラッグみたいなところがあるような気がする。僕もこのキャリアに入って日が浅い頃はとにかく自分を表現することに夢中になってて、それで手一杯だったところもあるんだけれども、今は自分が大好きな音楽をやっていて、それによって人に幸せとかよろこびとかエネルギーを与えることができる、そのことに気がついてとても謙虚な気持ちになったんだ。もちろん演奏しながらお客さんから受け取るものもたくさんあるわけなんだけれども、これはこの間の来日の公演のときもすごく思ったことなんだが、今までずっと自分にとって大事な音楽をずっと自分のためにやってきた、そして気がついたらその自分が好きなことをやっているのに聴きにきてくれた人に与えるものが実はたくさんある、そのことがすごく嬉しかったんだよね。あと自分だって土曜の夜にライヴを見に行って、ショーにものすごく感動した、感動したからといって泣いてばかりはいたくない。やっぱり何かこう、さあ踊ろうよ、一緒に楽しく過ごそうよっていえるのが音楽の良さだと思うので、そんな気持ちを昂らせるようなところも持っていたいなと思う。

ハラール:僕にとってもモーテンにとっても自己表現するというのがすごく重要なわけで、そりゃ誰でも自己表現って大切なことだと思うけれども僕らの場合、自分たちを表現するのに一番やりやすい形がこれであるということなんだ。そのためには音楽を台所でちまちまやっていたんじゃダメなんだ。やっぱりお客さんの前でやって反応をえるところに、自分たちが表現したいことが伝わってるのかどうかが分かる、そこに醍醐味があるわけで、だからもうこうしてステージにたって自分たちをこういう音楽を通じて表現するということが僕らにとって生きていく上でのエンジンみたいなものなのかな。台所や庭で弾いてる方がよっぽど楽だとはおもうよ。好きなものを食べて子供の世話をして、そんな毎日だったら楽だと思うんだけど、それじゃやっぱり足りないんだよ。

--- それに気がついたのは何かきっかけがあるんですか? プロでやっていくという。

モーテン:そうだね、プロ意識ということだけでもないんだよな。要するにアンコールを求められてステージに戻った時の、みんなに幸せになってもらえる、というそういう気分、与えるものが自分にあるっていう思い、それがすごく嬉しかったんだよね。それを味わうにはオーディエンスの存在がそこになくちゃ、台所でやってたんじゃ味わえないことなんだよな。
 ドイツでやった小さなフォーク・クラブでやったコンサートなんかね、2回まわしでやらされて、お客さん50人くらいしかいなかったんだけれども、ほんと目の前にお客さんがいて直接その人たちの反応を感じることができた時のこととか、スイスの大きな一軒家でコンサートをやったとき暖炉が用意されていて僕らが本番の1時間くらい前に入って暖かい火が焚かれていて、バーがあってワインも用意されていて、すごく寒い日で雪も降ってたかな。お客さんがいざ入ってきて6〜70人くらい集まってきたんだけれども、まず暖炉が用意されていて、最初からすごくいい雰囲気で始ったんだけれども、あの時は二人でアコースティックでやったんだよな。そういう特別な状況の中でやったものは特に自分たちが何か与えているという実感を得られた。あときっと死ぬ直前になったら自分たちにアンコールを送ってくれた人たちに感謝をしながら人生を終えるのかなあ、と思うよ。2人で目を合わせて「やったね、今日もアンコールきたね」ってウインクしている時のああいう感じを思いながら、人生終えるかなあって思うよ。

--- 最後に、あなたたちのこれから、またデンマーク音楽のこれからについてはどう思うか教えてください。

モーテン:答え長くなるよ(笑)。まずデンマークのフォーク・ミュージック・シーンってことで言うと、予想は難しいけれども、非常に今パワフルな状況にはあると思う。僕らより先輩の世代、今となっては「年配」といってもいいのかな、10年くらい前からやっている人たち、特に年寄りというんじゃないけれども、そのぐらいの先輩方、人に教える立場にある人たちもとても強靱なものを持っているし、あと僕らの世代の人間のほんとに前線で活躍している人も充実しているし、あとは若手だね、勉強を終えたばっかりの、これからキャリアをつんでいくぞとはりきっている人たちも次々とでてきてるし、具体的にどんな風になっているか10年後、今見通すのは難しいけれども、たぶんむこう5年、6年の間にはフォーク・バンドがデンマークからいっぱい海外へ出て行くんじゃないかな。デンマークだけだと仕事の場所が限られてるというのもあるし、やはりいろんなカルチャーに触れていくことは彼らにとって大事なことだからね。

ハラール:僕らの予定ですけれども、(日本は未定だけれども)5月にヨーロッパでリリースされる新しいアルバムがあります。これは世界各地でこれまで共演してきたミュージシャンをゲストにむかえて、アメリカ、スウェーデン、フィンランド、スコットランドからの人たち、アイリーン・アイヴァースとかアレ・メッレルなどが参加しています。これらのリリースに向けて僕らは努力しているところです。

モーテン:フェスティバルが来年大きいのがいくつか決まっていてオーストラリアやカナダとか。デンマークでは4月に結構大規模なツアーが予定されていて、これは僕らとしてはフォークのオーディエンスに限らず、わりと幅広い層に訴えかける、ブレイクのきっかけになるんじゃないかなと期待しているコンサート・ツアーで、15本くらい、デンマーク国内の量からいえばこれはかなりの数になるんですけれども。
 2人も最近家族持ちになったので、家庭のバランスをいろいろ見ながらね。今のとこ上手くいってる感じなので、ここ何ヶ月間は気合いいれて仕事しようかな、と(笑)。

--- 期待しています。ありがとうございました。


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