ケヴィン・クロフォード、インタビュー

今回は、移動乗り打ちというものすごいスケジュールでしたので、インタビューはいっさい行っておりませんが、ホームページ用に特別にケヴィンに語ってもらいました。インタビュアーは大島豊氏。ケヴィン、大島さん、ありがとうございました。


 
(Y:大島豊 K:ケヴィン M:野崎)

Y:前回の日本ツアーの後、何をやっていたんですか。

K:前回の日本ツアーていつだったっけ。

M:2001年10月。

K:1年半前か。前回のツアーの時には、次のアルバムの計画を練っていた段階だと思う。今回のツアーの準備をした時、前の時の資料を見ていたんだが、その中にセット・リストがあったんだ。それを見ると、新作に入れた曲の初期ヴァージョンなんかがあったからね。前回のツアーではスタジオに入った時にいい ものになるようにアレンジをいろいろ考えたり、試したりしていた時期だったはずだ。

 そう、あの年の11月の終りから12月いっぱい、オーストラリアのツアーをしていた。その時も新作のための準備をいろいろしていた。クリスマスを家で過ごして、1月にアメリカ・ツアーに行った。それで2月初めにあれを録音したというわけだ。

 だから、あれがあの半年間の作業の一番の目標だったね。日本からオーストラリア、アメリカと、アレンジをタイトにしたりしてしあげていった。というのも、ぼくらは今度のアルバムはその前の2枚と違って、もう少しオーセンティックなものにしたかったんだ。前の2枚は主にスタジオで作った。アイデアをたくさん詰込んだ。楽器をいろいろ重ねたりしてね。スタジオに入った時にはまだあまり計画ができていなかった。この新作の場合、少なくとも9割方は作業がすんでいて、だからスタジオに入ったら、後は始めから終わりまでコンサートのように演奏できるようにしておいたんだ。サウンドや技術やアレンジで聞かせ るんじゃなくて、ライヴ感覚を捕えようとした。

 前の2枚をそういうやり方で作ったのは、そうせざるをえない面もあったんだ。ダブリンのトレヴァーのスタジオでやったわけだが、あそこは小さくて、ぼくら全員が一つの部屋に集まって演奏することは物理的に不可能なんだよ。ドナはトレヴァーの寝室でギターを弾いてる、キリアンはキッチンでやってる、 ショーンとぼくが居間にいて、トレヴァーはコントロール・ルームでベースを弾いてるという具合だ。(笑)だから、実を言えばあんまり有機的とは言えない ね。それがなんとかうまく行ったのは、あのアルバムではそもそももっとアレンジしたものを作りたかったからなんだ。

 今回は、アレンジはもちろんやらないわけじゃない、その可能性にはいつもオープンでありたい。だけど、もっとエネルギーを捉えたかった。今までだったらたぶんファーストのライヴ・アルバムに一番良く出ているもんだ。だから、今度の新作は別のスタジオでやる必要があったわけだ。

 ところが正直言ってアイルランドではスタジオの選択肢はあまりない。ぼくら全員が一緒に演奏できるような広さのスタジオはえらく高い。トレヴァーはスタジオの装備としては最高のものを持ってる。だけどかれのスタジオは広さが足りない。そこで、アメリカ・ツアーの最中に録音ができればベストだろうと判断したわけだ。3週間ツアーをやって10日間録音し、また3週間ツアーする計画を立てた。結果的には実にうまく行った。一番難しいのは適当なスタジオを見つけることだったね。

 そこでトレヴァーとぼくらのアメリカのエージェントとエンジニア、当時はエド・ケネハンだったけど、3人でアメリカへ行ってスタジオ探しをやった。ぼくらのエージェントはカリフォルニアがベースで、スタジオについては心当たりもあった。だから、要するに一つひとつ当たってみて、ぼくらにとって一番適当 なところを見つけるだけの話だったがね。結局プレーリー・サン・スタジオというすてきな場所に決まったんだが、ここはトム・ウェイツがしょっちゅう使っ てるところなんだ。1年の半分以上は彼が押えている。だから一般の人間が使える時間は限られてるんだけど、幸いなことに、ぼくらが使いたい時にかれはツアーに出ていたんだ。

 ツアーの途中でスタジオに入るのはいろんな意味で良かった。いつでも録音できる状態になっているしね。すみずみまで油がまわっている。そこで、11ト ラック中9トラックをあのコテージの10日間で録音した。実にうまく行ったよ。それにぼくらにとっては一種のブレーク・スルーで、アルバムの作り方とし て実に良いやり方を見つけたと思う。楽器の響きも気に入ったし。

 で、そのベーシック・トラックを持って帰ってきて、トレヴァーのところで二つ目の楽器を重ねたり、前の2枚でルナサのトレード・マークになったようなものをつけ加えたんだ。ベーシックに色をつけるわけだ。それからもう2曲、ゆっくり目の曲を録音した。こっちはそれほどライヴ感覚が必要ではないものだな。

 ぼくらはできたものにとても興奮していて、タイトルも『レッドウッド』とつけた。カリフォルニアのレッドウッドの森に近いところで録音したからね。 みんな喜んだ。それから数ヶ月はアルバムもできたことだし、ツアーを続けたんだが、アメリカでアルバムが出ないことで前に進めなくなってしまった。それはとてもマイナスな作用になって、バンドとして落ちこんでしまった。それがここ1年ほどの状況だ。おかげで創造的エネルギーが減退して、次のアルバムのことも考えられなければ、おちついて新しい曲をやったりアレンジを考えたりすることすら、できなかった。

 だけどこうして日本にやって来て、実際にでき上がったアルバムを見て嬉しかったね。励みになったよ。実際に完パケとなったものを一曲ずつ始めから終わりまで聞いてみないと、でき上がった、終わった、という感じがしないんだ。

 ぼく自身4ヶ月ほど、アルバムに入ってる曲を聞いてないんだ。トレヴァーがナッシュヴィルに行ってマスタリングしてきたもののCD-Rはもらっていたんだが、友だちが遊びにきた時、これからダブリンまで長時間ドライヴするから何か聞くものはないか、というんでやっちまってそれっきり。だから、CDを見て、聞いて、嬉しかったね。これでようやく次のことを考えられるよ。

 この1年半は、だから笑えるような、妙な1年半だった。しかも、アメリカの状況がどうなるのか、まだわからない。まとまる方向に向かってはいるけど。7月までにはまちがいなく形になっているだろう。次のアメリカ・ツアーの予定がそこだし、新譜のリリース無しにツアーはできないからな。6月と9月 に大きなツアーを予定しているんだ。全部アルバム・リリースを中心にしてまわっているといってもいいからな。今回の日本ツアーにしても、アルバム・リリ ースが無ければできなかっただろうしな。みんなの注目を集められるものがないとね。だから、今回のツアーはとても嬉しい。この日本の後、オーストラリア にも行きたかったんだが、新作がない状態では適当でないと向こうの連中が判断したんだ。とても残念だが、一方でこの6週間ほどは休暇になるね。

M:ずっと働きづめだったものね。

K:この間にソロ・アルバムも完成できるだろう。10ヶ月ほど前に始めたんだが、ここのところ続ける意欲を無くしていたんだ。ぼくもグリーン・リネット に縛られてるから、あそことの件がクリアにならないとやる気にならなくてね。

 だけど、バンドはハッピーだよ。状況を考えれば、うまくやってると思う。そんなにひどいパニックは起こしていないしね。洋子やロンドンのマネージャー や、周りの人たちがとても良くやってくれてるから、支えてもらってるね。これで次のことを考えられる。たぶんDVDを、ライヴのやつを作ってもいいと思ってる。

Y:そうそう、それはぜひ作って欲しい。実はぼくの息子が、それまでアイリッシュ・ミュージックなんかに全然興味を示さなかったのが、ピーター・バラカン氏の番組でルナサの映像を見たとたん、このライヴに行きたいと言いだしたんですよ。

K:そりゃいいね。DVDはドナがしきりにやりたがっているんだ。日本でやるのもいいかもしれないな。この次来れるのは来年か、あるいはまた1年半後だろうし。その頃までには問題も解決しているはずだからね。心配なのは、その間に別のアイリッシュ・バンドがやって来て日本でDVDを作って出してしまうことだけだね。思いついたのはぼくらだからな(笑)。だから誰にも言うなよ。『フルック・イン・ジャパン』とか 『アルタン・イン・ジャパン』とか、やだぜ。

 それと、ぼくらも日本に慣れてきたからな。最初の2回は、あまりに物珍しくて、奇妙キテレツなほどだった。だけど、昨夜なんかもおぬしやタッドや懐かしい顔がたくさんいて、ここに来るのがぜんぜんおかしくない。今ではとても安心できる。最初の2回のツアーほどのプレッシャーもなくなってる。どんな風 に受入れられるかとか、うまく行かないんじゃないかとか、な。ルナサのウェブ・サイトへの日本からのアクセスが凄いんだよ。だから、ツアーしてない時でも、ウェブ・サイトを通じてずっとやり取りしていられる。

 それに今回はいつもよりうまく行ってると思うんだ。というのもジョン・スピラーンに一緒に来てもらってるからな。新しい要素をコンサートに持込むのは いつだっていいことだ。ジョンやカラン・ケイシィともやったことがあるが、一晩のコンサートの中でヴァラエティに富んだことができるからとてもいい。

 昨夜(クロコダイル)はとても楽しかった。砕けた雰囲気だったし、誰も時間を気にしてなかったから、いっそう楽しかった。だから、こういうことはこれからもやっていきたいんだ。それに、ジョンはすばらしいからな。ジョンとは前にスペインでやったことがあるんだが、その時は1回か2回だけだった。今回 はもっとできるのもいいね。これからこういうチャンスがもっとあるといいね。かれはすばらしい人間だし。それに、ジョンはちょうどいいんだ。甘すぎたり、滑らかすぎたりしない。

Y:他にシンガー・ソング・ライターと一緒にやったことは?

K:スーザン・マッキュオンとやったね。

M:ルカ・ブルームは?

K:ああ、そうそう、そうだ、やったことがある。かれはルナサと共演するために特別に曲を作ってきてくれたんだ。ダブリンのウィーランズだ。あれは…… いまいつだっけ。

M:2003年4月よ。

K:そうそう、ちょうどアメリカ行く直前だから、1月の終りのはずだ。前から、ぼくらとは一緒にやりたいとは言っていたんだ。ただ、かれのこれまでの曲 でぼくらと一緒にできるものがあるかどうか自信がないから、新しく曲を書くといってくれたんだ。かれの歌はリズミカルでパンチがあるから、ぼくらには 合っているんだ。普通の伝統歌なんかをぼくらがうまくできるとは思わない。もっと、ジョンの歌のようなエッジの立ったものの方がいいね。

 ドナは最近シンガーと良くつきあっているんだ。ルナサをやっていない時には、婚約者のポーリーンのソロ・アルバムを作ってるし。だから歌の伴奏にも慣れてきている。将来の計画としては面白いかもしれない。

Y:スーザン・マッキュオンはどうでした?

K:いや、すばらしかったよ。あの時はあまり時間がなかったんだ。かなり急なことで、とにかく行ってやった帰ってきた感じだな。その時は満足してたんだけど、ミキシングがあまり良くなくて、でき上がってきたものは好きじゃない。アルバムの中の他の曲で、ぼくらにもっと合ってるものがあったと思う。スー ザンがぼくら用に選んだのはクラナド・タイプの曲だったからな。ホィッスルが鳴って、フィンガー・ピッキングのギターとベースが入る感じで、ルナサとい うと人が連想するようなサウンドとはちょっと違う。他にもう一曲、パイプ、フィドル、フルート、ギター、ベースで別の面を見せられる曲があったんだ。 そっちの方が合ってたと思う。

 だけど、スーザンは凄いよ。スーザンは自分を作り直すのがうまい。アルバム毎に違ったところを見せる。ロックからフォーク、トラディショナルへという風にな。ぼくはそこが好きだが、中には気に入らん人もいるだろうね。ロック・アルバムだけ聞いてて、それを予想していったらフォークだったとか、トラディショナルを聞くつもりで行ったら、いろんなものが入ったゴッタ煮だったとか。そう言う、一つの面だけを求める人たちは面食らうだろう。

 ただ、まあ、スーザンとしては単にああいう、ちがう楽器が欲しかったのかもしれない。

 楽器と言えばぼくのバゥロンだが、今度のは大きくて、深い音がする。みんなあれが気に入ってるんだ。前の楽器は気に入られなくてね。今度のはいいとい うんで、もっとステージに取り入れようという話になっている。

Y:そのメーカーをどうやって見つけたんですか?

K:実は向こうがぼくを見つけたんだよ。最初にアメリカに行った時だから、もうずいぶん前のフェスティヴァルでぼくらを見たんだな。で、ぼくに自分のド ラムを使ってみてくれと言ってきたんだ。ぼくがいいよと言ったら、はじめは大きいのをくれようとしたんだ。こんかい使ってるようなやつだね。だけど、かれはもうひとつもっと小さいのを持っていたんだ。前に使っていたやつ、覚えてるか。ぼくはあれが気に入って、こいつを買うと言ったんだ。かれはあんたに はもっと大きな方がいいと言ったんだけど、ぼくはいやいやこれがいいというわけで買った。それで、アメリカに行って会うたびに、大きなのを使え大きなのを使えと言うんだよ。だけど、ぼくはいやいやこれは小さいから持ち運びにも便利で、ちょうどいいんだと言い張っていたわけ。それでとうとう前回のツアー でテキサス北部でやった時、彼がやってきてあれをくれたんだ。とにかく持ってって使ってくれと言う。それでそのツアーから使いはじめたわけだ。

 それからスティックも変えてるんだ。あれは実は10本の棒を束にしてテープで留めたもんなんだ。だからブラシ効果が出る。それに、原始的な仕掛けだ が、輪ゴムを巻いてあってその位置をずらすともっとブラシになったり、輪ゴムを端まで持ってくと普通のスティックになる。ジョン・ジョー・ケリィも同じ ようなことをやってるな。

 これはルナサにも合ってるんだ。ブラシでないと、ときどきトレヴァーが出すベースの音と聞き分けがつかなくなる。鈍い、ベースみたいな音になる時がある。ブラシだとベースとギターの間の音、バゥロンというよりもスネア・ドラムのような位置になるんだ。しかも、深い音も出せる。バゥロンはそこがいい。 ジョン・スピラーンがいいのは、かれの歌にはバゥロンがまた良く合うんだ。

 まあ、自分たちでは良くわからないけど、バンドのサウンドは良くなってるんじゃないかな。トレヴァーはまた新しいベースを買ったんだが、まだ気に入っ てない。まだ、本当にぴったりの楽器には巡り合えていないと言ってる。確か今オーストラリアにいると思うある男が作ってるスティック・ベースを試したい と言ってた。前にもっていたスティック・ベースはエッジの立った音がしたんだ。その楽器は五弦だからより下の音が出せるのはいいんだが、エッジの立った ところが無くて、そこが物足りないらしい。だから、かれとしてはその中間が欲しいわけだよ。

Y:あのBbフルートは新しいものでしたっけ。

K:いや、前回も持ってきていたと思う。あの時はまだ新品だったね。お気に入りの楽器なんだ。とても演奏しやすい。曲によってはぴったりなんだよ。いつ もと同じ、オーストラリアのフルート・メーカーの楽器だ。マイケル・グリンターという男で、ぼくのフルートは全部彼が作ったものだ。かれのフルートを 使っている人は日本にたくさんいるよ。名前忘れちゃったけど、昨夜来ていた若い女性が去年4ヶ月エニスに住んでいて、彼女はかれのフルートを使ってた よ。こっちで何とか言うバンド、パディーズ・フィールドだったか、そんな感じの名前のバンドをやってるそうだ。とても上手い子だよ。エニスに住んでる間 あっちこっちのセッションに出ていたけど、えらい上手かったね。

 いま日本にはアイリッシュ・ミュージックの上手いプレーヤーがたくさんいるんじゃないのか。ぼくらが初めて日本に来たのは3、4年前だが、あの頃、そんなにたくさんのプレーヤーはいなかったし、レパートリィといえるほどのものもなかったと思う。それがいまでは、音楽にしてもプレーヤーにしても、いま どこで何が起きてるか、みんな知ってる。

M:東京でルナサのコピー・バンドも一度見たことあるよ。ほんとにひどかった。ファーストに入ってるクレズマー・チューンをやってたんだけど、それはそれはひどかったよ。とても一生懸命だったけどね。

K:それはぜひ見たいな。

 そうそう、ジョン・スピラーンが今朝コーヒーを飲みに行った時に言ってたんだが、昨夜ぼくらがまるで日本人みたいに見えたんだそうだ。(笑)ぼくなんか目が茶色だろ。時どきほんとに日本人に見えたんだと。

(トレヴァー、山ほどの買い物をして帰ってくる)

K:あれ見ろ。洋子、やつに払いすぎだぞ。

 かれはしょっちゅう買いまくってるんだ。とにかく最新のものを持ってないと気がすまないんだ。

M:キッチンはないくせにね!(現在トレヴァーのスタジオは改装中でキッチンがない)

K:いや、まったくその通り。だけど、スタジオとしてはすばらしい。テクノロジー・マニアだよ。買わずにはいられないんだ。こっちはありがたいけどな。 いつも、おもちゃをいじれるし。かれはいつも新しいものを買うだろ。そうすると古いやつをぼくらに売るわけだ。それもめちゃくちゃ安い値段で。(笑)

 ところで、『レッドウッド』がこっちででどうとられたか、とても興味があるんだ。ただ、訊くのも怖い。昨夜、カズ(白石和良氏)がCDにサインを求めてきてくれた 時、おそるおそる訊いたんだ。かれがルナサの最高傑作だと言ってくれて、ほっとしたよ。

Y:最初に聞いた時には、4枚目で方向を変えたと思ったんですよ。だけど、何度も聞いてゆくうちに、実は正反対で、正面突破していると思うようになりました。

K:それは嬉しいな。実は周囲に抵抗もあったんだ。マネージャーなんかは、完全に新しいものを試すべきだと考えていたりした。だけど、ぼくらとしては、 いまの段階でルナサがやるべきこと、やることになっていることを完全に成し遂げた、新しい章に移ってもいい、とはどうしても思えなかったんだ。だから、 やりたいことをやりつくすことを目標に材料そを集めたし、ライヴ感覚のアルバム作りもそこから出てきた。一番の目的は、ぼくらが一番上手くできることに 徹しようということだった。選んだ曲は、ぼくらの一人ひとりに一番良く合ってると思う。

 みんながぼくらに合ってると思う曲でも、実はしっくりしていない時もあるんだ。たとえばマイケル・マクゴールドリックがいた時のレパートリィだな。バ ンドとしては合ってる。だけど、微妙な違いがあって、ぼくにはどこかしっくり来ない。というのもそれはマイクの曲だからだ。だけど、みんなが気に入って いるものに対して、これは自分には合わない、もっとこういうのをやろうと言いだすのは、よほどの自信と勇気がいる。だからバンドがしっかりと足もとを固 めるには時間がかかる。

 それからキリアンが入った。かれもおそらくぼくが感じたようなことを少しは感じたかもしれない。かれはしばらくの間は、ジョン・マクシェリィになるこ とを期待されたわけだから。

 だから、何がこのメンバーのバンドにぴったりかわかるまでには、時間がかかるし、演奏やライヴをたくさんこなし、生活を共にする必要がある。それ で、今度の新作はそういうことが全部一つにまとまったものではあるんだ。

 ぼくはこのアルバムではキリアンがほんとに輝いてると思う。彼がやろうと言いだした曲がいくつもある。ドナの曲もすばらしい。バンドが基本的には伝統 をしっかりふまえているが、そこからほんの少し離陸してゆくときに、かれは決定的な役割を果たしている。伴奏を通じてだな。かれが書く曲は、フィドル、 フルート、パイプの組合せにぴったりだ。そういう方向で彼は考えられる。同時に彼は伴奏では、オルタナティヴな方向で考えることができる。だから、かれはちょうどうまくバランスがとれていて、メロディと伴奏の双方にちょうどぴったりの曲が書ける。このアルバムのためにかれが書いてる曲は凄い。

 それにショーンが初めて曲を書いた。他にもまだあると言うんだけど、いつもとてもはにかみ屋なんだ。時どき、ぼくらはひどく残酷になるからな。でも、 かれはこの曲に関してはとても満足している。

 それに今まで話をした人たちが、ぼくらのよって来たるところがわかると言ってくれたのは嬉しい。というのは、ぼくら自身はいくら音楽的に誠実であって も、それが聞き手の求めているものかどうかはわからないからな。まるで新しい方向へ行くことを期待しているかもしれない。

 だけど、そういうことをやるための時間はまだまだたっぷりある。まだまだこれからたくさんアルバムが作れるだろうと思うしな。たぶん、自然な形で進化 していければ、気が狂ったみたいに方向転換するよりもいいと思うな。どうなるかわからないが、少し新しい方向をつけ加えるとか、新しいことを試してみる とか、微妙な形で変わってゆく方がいいと思う。ドラムを入れたり、キーボードを入れたりするよりもな。トレヴァーのやつ、今晩、さっき買ってきたあれ持ってライヴに持ってこないだろうな。(笑)

M:『レッドウッド』のサウンドはとても自信に溢れていたから、ドナが、気に入ったかと訊いていた時にはびっくりしたわよ。

K:いやいや、自分たちでは絶対にわからないんだよ。だから、フィードバックは貴重なんだ。

(ドナ登場)

Y:髪の色を変えたんですね。

M:似合うわよ。

Y:だけど、DVDを出すんだったら、もう少しルックスに気を使わなくちゃ。

2003.04.11
渋谷シティ・ホテル1F喫茶店にて
 


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