ノルディック・トゥリーをやらない理由

以前ブログに掲載した「ノルディック・トゥリーをやらない理由」をこちらに転載しました〜。ちょうど2009年の12月ケルティック・クリスマスのツアー中の日記とも重なっていますが、面白いので、そのまんま掲載します。今、よく考えれば,多分に勘違いの部分もあるのですが、それもまた一興ということで(笑)

ノルディック・トゥリーをやらない理由1

実は今年ウチで作ったライブの中で一番素晴らしかったのは、私は実はノルディック・トゥリーだったと思う。特に武蔵野の小ホールでやったアコースティックコンサート。あれはちょっとないくらいのものすごい音楽体験だった。

いいコンサートっていったい何だろうなといつも思う。例えば今回たくさんの公演をやったラウー。毎回毎回こんなに違うものかと思ったし、ツアーが終わった直後は私もメンバーも東京の2日目が一番良かったという結論だった。あの日は妙に嬉しくてメンバーも朝までハジけてたし、私も本当に大満足だった。10/31(土)のDUOでの公演だ。

でも後で録音したものを聞いたら、そうでもないんだよね(爆)。確かにメンバーのMCをする声は普段よりテンションが上がって(お客さんの反応がすごく良かったからなぁ!)すっごく楽しそうに聴こえる。でも演奏の方はなんだかアラい。かえって名古屋の方が演奏が落ち着いていたし、後で聞いた札幌の公演の良いことったら! だから多分にこの公演がベストというのは主観的なもので、その時の自分の気分も多く反映したりもしているから、私の意見が「これで決定」という訳ではないということを前提として、ここに書いています。なのでここを読んでくださっている人も、それを前提に読んでください。

もちろんヴェーセンやマーティン・ヘイズはもう最高だった。いろんな意味で音楽のクオリティではあの2組がウチではトップクラスだろうと思う。それはもう昔から疑いの余地がない。一方で今年忘れられないバンドと言えば、アラマーイルマン・ヴァサラット。彼らが私の2009年をすごく充実したものにしてくれた。彼らのおかげで私のこの1年はすごく楽しかった。プロモーションにしてもあんなに協力してくれるグループはいない。頑張り屋で努力家の彼ら。いろんなバンドに最大限のチャンスを与えていくのが私の仕事なのだけど、あんなに期待に応えてくれるバンドは他にはいない。DUOでのたった2回の公演だったが、彼らはその少ないチャンスを見事に自分のものにした。最高の公演だった。彼らの公演では、実は私は2日目ではなく初日の方が好きだ。初日の方が全体をきっちりコントロールできていたから。選曲も良かった。でも2日目。あのスローな曲で本編を終えた時は本当にかっこいいと思った!! ヴァサラットはいいですよ。チケットやCD買ってくれたお客さんをしっかり楽しませることにかけては本当に彼らはプロだと思う。私も必死にあんな風に映像やブログをアップするのは、チケットを買ってくれたお客さんが、コンサートまでの間、少しでも楽しく、ウキウキした気分になれるようにという理由なのであった。お客さんにそのヘンの事が通じていてくれるといいんだけど。まぁでもツアー自体はなんというか大赤字中の大赤字。自分がこんな赤字に耐えられるんだというのを逆に感動してしまったくらい大赤字だったので、本当にガックリした。まぁ「すたくらシール」とか作ってっからいけないんだよな(笑)。でもウチは借金なしの現金経営だから返って良いのかもしれない(っつーか、誰もお金なんか貸してくれないし/笑)。おかげでここ2、3年がんばった貯金もすっからかん。でもあれだけパブリシティも出たし、もちろん後悔はしていない。本当に良かった。ちなみに次回の来日は絶対にトントンにする!という強い意志のもと2011年にすでに日程を決めてあります。楽しみにしていてください。赤字くらいじゃメゲませんよ。

次につなげるべく無理によんだアイヴォールもすごく素敵だったけど(空港でサヨナラを言う時に泣きそうになったよ!)ヴァサラットの前座で合計400人以上のお客が観てくれていたのにも関わらず単独の公演に人数が引っ張れなかったのは、私としてはがっかりだった。ほんとお客さんって難しい。私には時々理解できないことがある。あれだけの音楽聞いて「もっと聞きたい」ってならないのね、普通の人はね。ま、仕方ないけどね。でもメゲることなくアイヴォについては次の作戦をもちろん練っています。頑張りますよ。

という感じで、ここの常連のお客さんならご存知のように普通私は好きだと思ったものは継続して何度も呼ぶというのが常なのであった。ミュージシャンはありがたい事に何度も来たがってくれるし、私も次こそなんとかしようと気合いが入るから、たいていのバンドは続いていく。そんな風にウチのレーベルは育ってきたのだと思うんですよ。

で、表題のノルディック・トゥリー。何が良かったのかというと、言葉にするのは非常に難しい。でもまずヴェーセンやマーティン・ヘイズのレベルのアーティストにしか観られない「円熟度」が確実にあった。本当に武蔵野の公演は最高だった。前座のヨハンナもめちゃくちゃシャープだった。

ノルディック・トゥリーの音楽を言葉で表すのは難しいけれど、武蔵野公演を聞いていたらキャッチが浮かんだ。「天国があるとしたらこういう音楽が流れているに違いない」そんな崇高な音楽だった。なんかプレイヤー側も「お客をびっくりさせてやろう」とか「印象づけてやろう」とか、そういう事はみじんも持ち合わせていない。とにかくこの美しい音楽を届ける、それだけの為に存在している人たちなのであった。

とにかく死ぬほど良かったので、ウチのブログで翌々日に行われる自分の公演をあおった。あおった。でも翌々日のStar Pine's Cafeの動員は非常に悪かった。加えて演奏も、特に前半は非常に良くなかった。後半なんとか持ち直したけど、、、本当にライブって難しいと思った。

動員も良くないのには落ち込んだ。あんなにあおったのに、とちょっとお客さんを怨んだよ。武蔵野は会員さん主導の小屋で、あそこはいつもソールドアウトになるから、有り難いことにそういう心配はない。だがチケット代が安いこともあって最近はあっちにウチのお客さんが流れる傾向にあるんだよね。仕様がないんだけど。それが理由ではないと思うけど、とにかくStar Pine'sでの動員は非常に良くなかった。もちろん会場が寂しくはなりはしなかったけど‥‥80人くらいかな。とにかく私があれだけブログに書いたのに、ヴェーセンもステージで告知してくれたのに、こんなに動員が悪いのはいったいどうしたことかっていうくらい悪かった。アーティスト写真がダサいのが悪いんだろうか。

ノルディック・トゥリーはやりませんよ。一生懸命やったって動員はたかが知れているんだもの。だいたいあのハーモニウムをもう一度日本に持ってくるなんて不可能だもの。人間を運ぶよりも高くつくハーモニウム。しかも自分で歩いてくれないハーモニウム。100kg以上するハーモニウム。SPCの階段を卸してくれたSPCのKさん、赤帽のお兄さん、ありがとう。人間だけでツアーをするのも難しいのに、またあのハーモニウムを運ぶなんてトんでもない。

他にもノルディック・トゥリーをもうやらない理由は、いくらでもあるのであった。明日に続く。下は武蔵野でリハーサル中のノルディック・トゥリー。

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ノルディック・トゥリーをやらない理由2

ハーモニウムといえば、面白い思い出が1つある。武蔵野のホールからSPCまでハーモニウムの運搬に赤帽さんを頼んだのだけど、運んでいる最中、助手席に座る私に運転手さんが私に話しかけてきた。

「こういう仕事も大変ですねぇ。でも僕は一番大変なのはTVのADさんだとお思いますよ。“これは無理だ”っていうのが理由にならないそうですね」「オーダーが出たら死んでもなんとかしなくちゃいけないってグチを言ってましたよ」

なるほどTVのADさんはよく赤帽を利用するみたいだ。でも企画の主催者からしたら“これは無理だ”というは理由にならないのは、まったくもって当たり前のこと。TVのAD、大変な仕事かもしれないけど、任務の完了なんて当たり前中の当たり前のこと。個々の仕事はもちろん全体の責任や、関わったスタッフや出演者に払うお金の事も最終的に引き受けなくてはいけないプロデューサー(というとかっこいいけど)の方がよっぽど大変だ。私に言わせれば、どんなに大変でも言われたことをやれば取りあえずは大丈夫という分だけ、ADはプロデューサーよりも楽な仕事だと思う(もちろんクリエテイティビリティに溢れ自主的に動くADさんも多いでしょうけど)。

ダメもクソもない。ダメでもなんとかする、そうじゃないと仕事がまわっていかない。だいたいそれが仕事ってもんだ。思わず運転手さんに「そんなにやりたくない仕事だったらヤメればいいのに、なんで文句言いながらやってんでしょうね、その人たち」とピシャリと言ってしまった。ちょっと反省。でもまさか
赤帽の運転手さんはこの巨大楽器にアテンドし、ヨレヨレの黒Tを着たさえない私がこの企画全体の責任をおっている人間だとは思わなかったに違いない。ちょっと笑えた。

ま、私はいつまでたっても現場ADみたいなもんですよ。 この仕事、ホントいつまでもするもんじゃないと、そのとき力強く思ったのであった。

明日もこの話題続く‥‥

PS
あちこち仕事仲間から同情のメールをいただいておりますが、大丈夫。「たいへん、たいへん」と言いながら、実は自慢しているんです、このたいへんさを!(笑) コローナズの歌にもあるように「This is what we've got and nowhere we'd rather be」ということで元気に頑張っております。結局これしか出来ないんだからこうやって生きて行くしかないんです。

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ノルディック・トゥリーをやらない理由3

昨日のアヌーナ、焼津でのコーラスワークショップにいたく感銘をうけた私。こちらにそのことを書きました。一応フランキー・ケネディのドキュメンタリーシリーズも本日で終了。アルタンもこの週末には来日するし、いよいよケルクリの季節突入です!

‥‥というところで、再びこの話題。ノルディック・トゥリー。ノルディック・トゥリーは2008年の4月にはじめてライヴをヘルシンキで観ていたく感動したが、その場では「これは日本に呼ぶことはほぼ不可能だろうな」と思っていた。というか、そう自覚していた、と書いた方が正しい。そんな夢みたいなことが起こるわけはないよな、と。でも、ホントこんなコンベンションみたいな環境だってのに、すごく良かった、ノルディック・トゥリーは。もう音楽が天から注がれるみたいだった。うっとりと聞き惚れた20分ほどの演奏。

JPPとヴェーセンは北欧の仕事をする前からファンだった。北欧の仕事をするよと言う事を周りの人に相談すると「北欧は悪くないんだけど国が何でもかんでも保護するから余り良くないバンドも山のように生き残っている。アイリッシュが営業で生き残るのと一緒だな。だから本当の意味でのバンドはヴェーセンとJPP。それ以外はたいしたことないよ」と言うアドバイスをもらうことが多かった。加えて「JPPを今からゼロから始めるなら、フリッグの方がいいよ。MCもしっかりしているし分かりやすい。彼らも意欲的だし」とも。

無駄な外野からのアドバイスも多いのは事実だが、本当に信頼できる人のアドバイスというのは貴重で、これらのアドバイスは間違いなく後者だった。私の過去の仕事、こんな風に的確なアドバイスで何度救われた事か。そしてヴェーセンはいろんな人の協力で本当に成功した。今だに商業的な成功はないけど5回も来日したんだから充分すぎるほどである。一方のJPPは何もない日が続いた。でも、なんといってもJPPの「ストリング・ティーズ」。あのアルバムの最高傑作度と来たら! まさに天上のフィドル。フィドルの嵐。北欧の伝統音楽のアルバムであのアルバムの右に出るものはおそらくないであろう。もしかしたら「ヴェルデンス・ヴェーセン」よりも私は好きかもしれない。

でもJPPは呼べないことは「ヴァン・モリソンを呼びたいって言っているのと同じことなんですよ」という理由で、非常によく分かっている。そんな非現実な夢を追うほど私もバカじゃございませんよ、と。

ヘルシンキでノルディック・トゥリーを聞いた日の、次の日だったかな、JPP/ヴァルティナのマネージャーとご飯を食べた。まぁもう20年近く知っている人なので遠慮はない。「この仕事をはじめてからずっとJPPを日本に呼びたいと思っていたけど、もう諦めた。やるんだったらノルディック・トゥリーをやる。だって音は同じだもん(これ、かなり乱暴ですね、今思えば全然違う)」と言ったら、めちゃくちゃアグレッシブでアメリカンな奴も黙った。(ちなみに彼はヘルシンキ在住のアメリカ人)で、しばらくの沈黙の後「ノルディック・トゥリーが行くんだったら、俺もプライベートでついていこうかなぁ」と彼はボソリと言った。とはいえ私も彼もノルディック・トゥリーを呼ぶ事が実現するとはその時は夢にも思ってなかった。

だから先述の武蔵野公演を翌年の5月に体験するまでノルディック・トゥリーは私にとってはJPP代打以外の何者でもなかったかもしれない。テッィモ先生とアルト巨匠のいるトリオ。しかし重ねて言うが当時はまだノルディック・トゥリーが呼べるなど夢にも思っていなかった。だってハーモニウムがデカいんだもん(というわけで理由1&2に戻る)。この話題、明日も続く。

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写真は表参道の回転寿司にて

ノルディック・トゥリーをやらない理由4

昨日のアヌーナのインストアは本当に良かった! それにしても彼らは本当にチャーミングなグループ。ライティングやキャンドルで作り込まれたステージでやるのも素敵だけど、ああやって地ライトのピーカンな場所で、すごくお客さんの近くでフレンドリーにやるのも、どちらもものすごく印象がいい。ほんとアイリッシュはいいな〜

さてそのノルディック・トゥリーをなんで今年5月に呼ぶことが出来たか。それはあまり多くはかけないけれどNさんという方が非常に大きく貢献しているのです。彼はもう自分の立場や利益をさておき、ほんとうにこの素晴らしい音楽をなんとか日本に紹介しようと、すごく頑張ってくださったのでした。本当にこの仕事をしていると不思議なことにいい音楽をやっていれば、どんなに地味でも誰かが助けてくれる。そういう場面に何度かでくわすんですが、今回はそれでした。本当に良い音楽の持つ力はすごいと毎度な

がら驚かされるのです。それにしても毎度起こることじゃありません。そしてあのコンベンションでのライヴから半年ほどで、本当にあっという間に奇跡の来日が決まってしまったのでした。そして、それは、、、かなり時間的にはギリギリの事でした。通常こういう企画というのは1年前になんでも決まっているもんなんです。1年をキると出来ることも出来なくなる。こんなウルトラCはもう二度とない。もうおそらくこんなツアーができるのは最初で最後になるだろう。そう思いました。

で、自分でも絶対にブレなかったのは、あのハーモニウムを絶対に持って来るということ。私は最初からテッィモの楽器を運ぶことに何の疑いも持っていなかったです。あのハーモニウムは絶対に持って来る。最初からティッモとあの楽器を切り離すことなど夢にも思っていなかった事なのでありました(ちなみにテッィモはというと、しきりにレンタルを薦めてくれていたのでした/笑)。ま、それが今までウダウダと書いている、いろんな泣けるような出来事を引き起こしてくれるわけですが。

明日も続く

ノルディック・トゥリーをやらない理由5

アルトやティッモとはこのツアー前にも何度か会ったことがあった。でも今回ツアーで会ってみてはじめて分かった。彼らはまったく天然のミュージシャンだということを。ハンスだっていい勝負だ。とにかく最強の天然キャラ、それがノルディック・トゥリー。

フィンランド人にカルチャーショックは持っていないつもりだった。自分はスヴェングの連中とだってうまくやれているし、幸運なことに知り合いも多い国だ。時々ヴェーセンのローゲルがフィンランド人ジョークを言うのを耳に挟んでいたので、ヘンな国民性だというのは理解していた。それでも私は充分国際人なんだし(笑)自分はすでにフィンランド人のことを充分理解しているつもりでいた。

が、ノルディック・トゥリーのメンバーとはじめて現場をした時、自分ははじめて本物のフィンランド人と会ったと思った。今まで出会っていたフィンランド人は現代人/国際人という仮面をかぶったフィンランド人だったというのに気づいた。今回は生粋のゴリゴリの本当のフィンランド人!!そう思った。というか、とにかく「伝統音楽のミュージシャン」なのだ。全然現代的ではない、25年以上のツアーキャリアではびくともしない(普通は25年もツアーしてりゃーもっと洗練されてくる)ゴリゴリの伝統音楽家がそこにいたのだった。

というエピソードを明日からまた書きます。これは面白いですよ。

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ノルディック・トゥリーをやらない理由6

昨日のアヌーナのコンサートは本当に良かった。なんか涙が何度も出た。上大岡の会場はちょうどピッタリのサイズで照明が綺麗で、すべてを忘れて音楽にうっとりと浸ることができました。疲れて忙しい時こそ、こんな時間が大事なんだなぁと何度も思いました。アヌーナはニューエイジだからと批判してきたけど、でも彼らってすごく頑張り屋さんなんですよ。長いツアーをみんなで励まし合い頑張る姿は、日本側スタッフの結束力も固めるんです。そしてスタッフみんなにとても礼儀正しく皆にお礼をいい、すべての人がベストな仕事ができるよう、そしてすべての人の仕事を尊敬し尊重するマイケル。そのマイケルを中心にビシっとメンバーの結束力も固い。アーティストがいいとみんな頑張ろうって気になる。本当に素晴らしいです。加えてステージはとってもチャーミングでMCもすごく楽しいし分かりやすいし、本当に素敵。

で、さて、すみません(笑)。表題の件です。今まで書いてきたポイントはですね。ノルディック・トゥリーはやらない、その理由は
(1)ハーモニウムがあることが非常に負担。加えてそれを諦めることができない自分の性格。
(2)こないだのツアーは偶然の産物で超ウルトラCで決めたので、あぁいう奇跡が起こることはまずない。
(3)そして彼らの独特のキャラクター
ということところまでお話しましたが、今日は昨日少しだけふれた(3)を掘り下げてみたいと思います。

まぁ、こんな風にアヌーナみたいにアーティスト側に頑張りや結束力があると本当にいいんですよ。仕事もやりやすいし、各自がそれぞれ自分の中のベストで頑張ろうってことになる。ところがノルディック・トゥリーの場合、全員があまりにも天然のミュージシャンなので非常にマネジメントがしずらいのです。(良い意味ですよ)

だからまぁバイオはろくなものがないし、アルトもティッモもキャリアはすごいけど分かりやすい共演経験もないというか(こういうのって意図して作ってこないと振り返った時に何もなくなるのが常なのです)、加えてアーティスト写真があれではちょっと作りようがない。(あくまでその天然ぶりを褒めているんですよ)

先日もリバーダンスのことを書きましたが、ちゃんとしたビジネスをやっていこうと思ったら、やぱり素のままじゃうまくいかない、ある程度そっち方向への努力が必要だって事なんです。もちろん市場主義になってしまったら本末転倒でお話になりませんが、アーティストにはそれぞれのバランス感覚が要求される。でも、とにかくノルディックトゥリーの場合、とにかく素のままというか、自分の好きな音楽さえ出来ていればそれで良いという感じが非常に強い。なので私も写真がどーだとかバイオがどーだとか、巨匠たちにいろいろ言うのも野暮だし、、とはいえWorld Musicの世界もWOMEXのおかげで皆すごいプレスパックやバイオグラフィー、映像資料を持って全国のプロデューサーに情報が配られる。そういうのと私は戦わないといけないわけです、あの写真で(笑)


ま、ちょっと可愛い金髪の姉ちゃんが多少下手でもニコニコ弾いてくれた方が、まだチケットが売れそうですよね(笑)

それにしてもアルトったら、、、到着するなり言うんですよ。「リハーサルしたいんだけどホールって今日空いてるかなぁ」だって。あのね、巨匠、カウスティネンと違って東京のホールは忙しいんですから。ホールでは毎日何か公演をやっていて他の人が使っているんです。急に今日言っても無理ですよ。あ、それに、よく見たら今日は休館日ですよ。そういうのは前もって言ってもらわないと、ツアーのアイテナリー、メールで最終確認したでしょ?と言えるはずもなく(笑)。

リハーサルスタジオ借りてあげてもいいけど楽器(ハーモニウム)はもう会場だし休館日だから出せないよと言うと巨匠は諦めてくれましたが、、、私は「はじめての国でそれはないだろ!」とちょっと心の中で思ったのでした。っていうか、この人たち外国はじめて? なわけないだろー! 25年JPPやってんだから、と心の中で私は叫んだのでした。

でも「じゃあ明日の入りの時間を早くしようか。ステージ上はライトのスタッフが使うから無理だけど楽屋で練習で良い?」と言ったら巨匠ニッコリ。うふふ。このアルトのニッコリがいいんだ、なんかウソがない感じで。

でもこんな事は本当に序の口だったのでした。他にも天然ノルディック・トゥリーの笑える(っつかこんなの面白ろがるのは私だけかもしれないけど)エピソードはたくさんあります。っていうか、ティッモはもっとすごいです。明日もそんなエピソードを書いていこうと思います。(って、アルタンツアー中にそんなこと書く余裕あるのか?>自分。今日の移動のバスの中で書いて明日アップしよ)

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明治神宮にて観光中〜

ノルディック・トゥリーをやらない理由7

しかしアルト以上の天然ぶりなのがティッモ先生なのであった。ティッモについてはヨハンナ・ユホラも言っていたが、現在フィンランドでもっとも尊敬される現役ミュージシャンと言っていいだろう。とにかく天才型スーパーミュージシャンで、みんながみんなティッモと一緒にやりたがっている。そして、やはり天才ミュージシャンにありがちなちょっと「いっちゃっている感」がティッモにも十分あるのであった。ティッモは実は年齢はヴェーセンのローゲルよりも若い。イメージとしてティッモに一番近いアーティストはチーフタンズのデレク・ベルじゃないかと思う。

デレクと同じ。あのエキセントリックな感じが本当にたまならい魅力のティッモなのだ。で、何かしてあげると、ものすごく喜んでくれて、本当にありがとう、ありがとうと何度も丁寧にお礼を言われる。ピュアで本当に心の綺麗な人なのだわ。そんなミュージシャンを称して「天使系」と勝手に私は呼んでいるのだけど、ティッモは間違いなく天使系なのであった。あんなにピュアな人は滅多にいない。

東京に到着したティッモ先生、どうやら友達にフルートだかオーボエだかの修理を頼まれたらしく、そのフルート屋に行かなくちゃいけないんだ、と言う。もうこれからのツアーの打ち合わせをしようにも、とにかくフルート、フルート。フルートのことしか頭にない感じ。到着したその日のランチ。前述のアルトのリクエストでリハーサルをするからホールの人の許可を取らないといけない。いったい何時間必要なの?と聞いても3人がバラバラな事を言う。

つまりノルディックトゥリー、ツアーバンドとしてのまとまりは皆無に等しい。ティッモはとにかくフルート修理のことしか頭にないし、アルトはそんなティッモに落ち着けとも後でいいじゃないかとか、助け舟を出してくれるわけでなくコーヒーが飲みたいとか全然違うことを言う。ハンスもハンスで買い物にキョロキョロ、、、 

今思えば、、、今までのバンドは、ツアーバンドとしては一流の連中たちなのであった。ヴェーセンにしてもスヴェングにしてもラウーにしてもマーティンやデニスにしても、非常にツアーというものに慣れている。みんながバラバラ違うことをいって私を困惑させる事など滅多にない。というか皆無に等しい。

なのでノルディックトゥリーショックを受けた私は普段がどんなに恵まれているか実感する反面、どうしてこの人たちはこんなにまとまりがないのだろうとちょっとおかしく思ったのであった。っていうか、こういうバンドとツアーするのは本当に大変だ。今回の5月のツアーは移動もほとんどなく武蔵野エリアだけだったからできたのだ。本来ならこうはいかない。っていうか、本来なら3人が3人、全員アテンドのスタッフが必要な人たちなのかもしれない。

Nordik Treeの3人の公用語はスウェーデン語である。英語もみんなうまいけどヴェーセンやスヴェングほどではない。フィンランド人はスウェーデンを話せることが多いので、そっちの方が楽だということらしい。

この話題、明日も続く。(アルタンツアーでヘロヘロ)

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めっちゃツーリストタイプのお買い物@表参道オリエンタルバザール。「それはツーリストくさい」と言ったんですけどねぇ〜。Tシャツ20枚くらい買ってましたよ、アルト‥‥

ノルディック・トゥリーをやらない理由8

ノルディック・トゥリーの素朴ぶりは、オフの時間帯だけではないのであった。その最強の部分は実はサウンドチェックで発揮された。

先週来日していたマーティンとデニスのサウンドチェックはめちゃくちゃかっこいい。彼らのインテリジェンスが凝縮された素晴らしいサウンドチェック。毎日知らないエンジニアと仕事をする彼らは「エンジニアに指示すべきはこの点」というのがしっかりインプットされていて、それを毎回きっちりこないしていく。チーフタンズのサウンドチェックも最高に効率的。人数が多いこともあって「はい、次は誰々」なんて事にはならない。一緒に来ていた若い女の子のグループ、リアダンなんて一人が終わった瞬間、次が歌いはじめる、、、みたいな。一番下っ端だからボケボケしてパディ他重鎮の皆をイライラさせてはいけない、という感じ。爺さんたち、生き急ぐな(笑)じゃないけど、とにかく早い。
一方ルナサなんかは一人一人音を決めていく作業においてエンジニアから「次はショーン呼んで来て」「キリアンはどこへ行った?」なんて言われて私や日本人スタッフが彼らを楽屋に呼びに行かないと、とっとと終わらないみたいなノリなんだけど。でもルナサみたいなのがアイルランド標準クラスかなぁ。もっとも最近の彼らのサウンドチェックはしばらく見てないから何ともいえないけど。もしかしたら妙にチーフタンズみたいになっているかもしれない。

今ツアーしているアルタンもこれまた独特で、全員がエンジニアのビリーを中心にギャイギャイいいながら実に楽しそうに音を作って行く。彼らの会話を聞いているだけで、かなり笑える。端から見るととっちらかっているように見えるんだけど、かなりの短時間で最後はびしっと落としどころに落ち着くからすごい。

北欧勢。ヴェーセンのサウンドチェックは妙にピリピリ。みんなはっきり物を言うから、普段温厚な彼らがちょっと恐い時がある。基本的にヴェーセンはサウンドチェックが大嫌いである。ウーロフなんかはスピーカーにバズーカ砲をブチこんでNO PAで今日のコンサートをやりたい、と毎回思っているに違いない。スヴェングではあの「お宅」なヨーコ先生が妙にキビキビとしシャープな面を見せてくれるからこれまた面白い。最初のスヴェングのサウンドチェックで、あ、このバンドのリーダーはヨーコちゃんでしかもすごく強いリーダーなんだなというのが明らかになった。サウンドチェックは性格があらわれる非常に興味深い場面なのだ。

そしてノルディック・トゥリーのサウンドチェック。これが本当に、、、ある意味最強なのであった。

続きは今日移動の新幹線で書きます〜。では滋賀に出発!

ノルディック・トゥリーをやらない理由9

吉祥寺Star Pine's Cafeに到着したノルディックトゥリーの面々。おもむろに楽器をプラグインし演奏を始める。しかしいつまでたってもサウンドチェックが始まる様子がない。

「あの〜楽器をこちらの方からチェックしていくんですかね?」とSPCのスタッフ。私もアルトに聞いてみるとニコニコしているだけ。ハンスに聞くと「うーん、分からない」と言う。仕方ないので「まぁやってみましょう」と私。SPCのスタッフには「まぁ彼らの好きなようにやらせて言われるままやってみてください」とお願いする。(このへんはSPCのスタッフは本当にアーティストのペースを尊重してくれるのだ。感謝)

そしてノルディック・トゥリーの3人が3人、ほぼ練習みたいなノリのサウンドチェックをしながら、何か気になった事を思いつくまま脈略もなく言ってみたりする、、、という、この感じ。この感じははじめての経験だった。そしてサウンドチェックだか練習なのかよく分からない時間がしばし流れ、そのままリハーサルは終了、ということに。あれ?(笑)これで大丈夫なの?

もっともノルディック・トゥリーのフォーマットでツアーをしていることが少ないからかもしれない。だからチーフタンズみたいにサウンドチェックの順番なんて決まっているわけがない。でもヴェーセンだって順番はいつも適当だけどビシッとやるよ? それとも彼らははじめて英語が通じなさそう(?)な場に来て遠慮したのか? よくわからないけれど、このサウンドチェックで思い出したのは、ウチのアーティストの中でもっとも田舎くさい(褒めているんですよ)ビル・ジョーンズ。彼女のサウンドチェックはまことに容量を得ず、加えて一番最後に一番最初に言っておかなくちゃいけないことを言ってみたり、とにかく段取りが悪いのであった。(あ、あれも南青山マンダラでした。マンダラグループの皆さん、本当にありがとう)でもビルちゃんのそれはあくまで経験値の少なさから来るものであり、彼女本人からも「すみませんね、私、経験が少なくて。皆さん、教えてください」オーラが充分すぎるほど出ていたので、全然理解はできる。旅の荷物も多く、動きもにぶく、あまりカッコいい女の子とは言えないビルちゃん(褒めているんですよ)。ではノルディック・トゥリーはいったい何なのか?

それは、やっぱり無敵の「伝統音楽家力」に他ならない。25年のキャリアぐらいではびくともゆるがないマイペースぶり。例えばこの仕事、普通慣れない土地で仕事をしたら「こうしたら良くなるんじゃないか」「この方が楽になるんじゃないか」等、改善される道をさぐることは誰でも当たり前にやる、、、というのは、あくまでこちら側の偏見。こんな事は誰でも考えるんじゃないかというのはあくまでユニヴァーサルな活動をしているミュージシャンだから言えるのであって、いや、もちろんノルディック・トゥリーの皆さん海外で非常に活躍されているんですよ、でもとにかくそういう空気がまったく感じられないのだ、ノルディック・トゥリーには。まぁ、いろいろ詳しく書くと問題があることもあるのでのはあまり具体的には書けないのであるが、とにかくすべに置いて、そういうメンタリティがまったく欠如していると言ってよいのではないかと思う。(もちろん褒めているんですよ)

昔、松山晋也さんがリアム・オメインリィを称して「無敵の天然力」(当時は「老人力」という書籍が流行っていた)と呼んだのを、まじまじと思い出す。ちょっとした海外経験くらいではゆるがない「無敵の伝統音楽家力」それがノルディック・トゥリーなのだ。私は本当にまるではじめて伝統音楽家を彼の地から呼んだのだ、と妙に感慨にふけるのであった。今まで呼んだのは伝統音楽家というカラをかぶった国際人たちだったのだ、と。本物の伝統音楽家は、こうなんですよ、と。改めてカルチャーショックを受けた気持ちがした。

この話題、まだ続きます〜

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アルト巨匠のマンドリン。ストラップの掛け方がペリマンニ?!

ノルディック・トゥリーをやらない理由10

ツアーは大変。大変だけどもの凄く楽しいのも事実。ウチのミュージシャンは全員人間的にも面白く、話す話題にも事欠かない。ラウーなんかもう常にドッカンドッカン笑いが起こる。少しは黙っててくれないかといつも思うのだけど、常にウルサい。マーティンとか声もでかいから特に。概してケルト圏、特にアイルランドでは面白いことをいえないやつはバカだということになっているのかもしれない。うるさいといってもアメリカ人みたいにくだらないことを意味もなくしゃべっていては誰も聞いてくれないので、話す内容にはクオリティが求められる。話の内容が面白いからやっぱりこっちも聞いてしまうし、負けないように面白い話をしようとする。で、ツアーは楽しくなる。

とにかくミュージシャンと一緒にいるととっても楽しい。先日の静かなマーティン・ヘイズとデニス・カヒルだって、声のトーンが落ち着いているというだけで、相当おしゃべり好きで常にめちゃくちゃ面白いことを言って笑わせてくれる。とにかくお腹がよじれるほどなのだ。ヴェーセンもスヴェングも相当楽しい。今いるアルタンもエンジニアのビリーがすごくお話が面白いのでビリーが話を始めると、それをみんな熱心に聞いている。そして、オチが来るとみんなで爆発するように笑っている。ビリーの英語は訛りがひどくて何を言っているのか半分以上分からないことが多いんだけど、それでも本当に一緒にいてほんとうに楽しい。ツアーは相当楽しいのだ。

が、ノルディック・トゥリー。そもそも口を開くということがあまりない。ツアーがつまらないとは私は言わない。言わないよ。が、相当、、、静かなのであった。食事をしていても、あまり会話というものがない。初来日で緊張してたのかな? 食事と言えばティッモ先生などはお箸が苦手らしく、焼き肉でも居酒屋でも必ずフォークが必要なのであった。フォークを出してあげると「ありがとう、ありがとう」と、まるで彼の命を救って上げたかのようにお礼を丁寧にいわれ、あとはモクモクモク、、、(笑)。

フィンランドの一筋縄では行かないジョークを理解するのはとても大変だとヴェーセンのローゲルも言っていた。もしかしたらこれがフィンランドのジョークか?とひたすら私は考えるのであった。

さてこれからアルタンのみんなとピーターさんのラジオ! 皆さんインターFM聞いてね。9時くらいの出演になります。行ってきまーす!

ノルディック・トゥリーをやらない理由11

すっかりブログを休んでしまいました。ケルクリ終わって脱力感。なんでこんなに疲れたんだろうというくらい疲れきり、今週はまったく全然使いもんにならんかったのざきです。トホホ。でも楽しかったなぁ、ケルクリ。マレードの人間の器に感動し、マイケル(アヌーナ)のキャラクターに感動し、カトクリの音楽のシャープさに感動し、そして何よりプランクトンの皆さんの頑張りに感動し‥‥そんな、あっという間の数日間でした。普段一匹オオカミ体質だからたまのチームワーク仕事は新鮮で楽しい。それにしても毎度のごとく恵子さん(プランクトン社長)から学ぶことは山のようにあると思いましたね。いつも一緒に仕事をする度に思いますが、今回は、またさらにそれを実感しました。ほんと〜に勉強になりました。プランクトンさんのブログに素敵なステージ写真があがっていますので、ぜひチェックしてみてください。それにしても‥‥なんか、あれから何ヶ月も流れたみたい。

そんなわけでTwitterはつぶやいてたものの、ここをすっかりお休みしちゃってました。すみません。なんか考えがまとまらなくて‥‥というか、このブログのことに思考が回らなかったのも事実。なんといってもツアー中休んだ自分の仕事が山積。クリスマス前だってのにアップアップ。とにかくばたばたでした。

で、今日やっとなんとか一息ついて、机の周りを掃除して、このブログに取りかかっています。そうそうNordik Treeをやらない理由。10まで書きましたが、それで中断しちゃってましたね。つまりやらない理由はこういう事。詳しくは今までのブログを参照してください。
(1)いくらプッシュしてもあの地味な音楽とプロモ写真じゃ、人は集まらない。
(2)ハーモニウムがでかい。もうAD仕事はいやじゃ。でもハーモニウムなしで呼ぶことにも納得ができない。
(3)重鎮ぞろいで呼ぶの自体大変。
(4)この前のツアーは超ウルトラCであんなラッキーはもう二度とない
(5)天然記念物みたいな伝統音楽家の人たち、加えてツアーバンドとしてまとまりがあまりない
(6)ツアーの苦労をおぎなってあまりある「楽しさ」みたいなものがあまりない。これがフィンランド風ユーモアなのか?!
ということなんですね。

加えて、彼らをもう二度と呼ばない理由なら他にも幾らでもあります。結構、決定打なのはヴェーセンにあまりにも音楽が近いこと。事業主の方なら分かっていただけると思いますが、普通どんな事業でも同じようなものを2つ持つというのは良くないんです。このテの音楽で売れないものならヴェーセンだけで充分! もっと違うものをやってお客さんの層を広げていかないと事業主としては失格なんです。

それにしてもこのブログ「“呼ばない、呼ばない”と書いている本人が自分を納得させるのに非常に苦労されているようですね」とTwitterで指摘してくれた、するどい方がいらっしゃいましたが。

そうなんです。私はあの音楽が忘れられないんです。あの天国からふってくるようなあの音楽。武蔵野小ホールでのあの公演は本当に素晴らしかった。あの日は午後イチ、アルトは松山晋也さんのインタビューを受けていた。松山さんの質問は素晴らしくアルトを「フィンランドで一番重要な伝統音楽家」としてちゃんと扱ってくださった。そのインタビューにもアルトはあきれるくらい天然度爆発で答えていたけど、私は横で聞いていて松山さんの質問に涙が出るくらい感動していたのでした。「ものすごい人を日本に呼んでしまったんだ」と。そしてあの日の公演、前座のヨハンナもすごく良かったのかも。あのシャープでキレるような演奏が、さらにノルディック・トゥリーの「天然伝統度」を高める効果があったのかもしれません。あと通常あのホールの公演って私たちは招聘元といえども客席から観ることができないんです。ソールドアウトで基本立ち見禁止のクラッシックのホールですから。でもたまたまあの日は席が空いていたので館長さんが「野崎さん、良かったら座ってご覧になったら」と席をくださったのです(涙)。だからNordik Treeの音楽自体以上の効果があったのかもしれません、もしかしたら。

でもあの日の武蔵野には音楽の神様が降りて来ていた。あの、すべて、かっこつけようとか、こんな風に俺は弾けるんだみたいなところが、まったくない、純粋で綺麗な音楽。よく「Songs are important than singers」と言うけれど、あそこには自分のエゴなどまるでない、本当にピュアに曲の持つセンチメントを届けようとする伝統音楽家たちがいたのでした。あんなコンサートはもうないだろう。他のバンドではありえないと強く思いました。が、同時に、ここにウダウダ書いた理由群から、もう二度と呼べないと確信したのも事実。

そんなわけで、今年のコンサートのダントツ1位はNoridk Treeだと思ったのでした。写真は昨日作ったカレー&サラダ(ドレッシングは叙々苑のものだ!)。

明日も続く

ノルディック・トゥリーをやらない理由12

生活のほとんどにおいて厚く保護がいきとどいている北欧フィンランド。新しいグループができたといえば国からサポートが出る。だから新しいグループがいつもニョキニョキ。それにアカデミーやファンドやオーガニゼーションのロゴが入る。アイリッシュみたいにロックバンドみたいにバンドを立ち上げて1つのバンドにフォーカスして頑張って行こうっていう感覚がない。で、みんな、3、4つのグループを掛け持ちしている。で、なんとなくドイツあたりから営業くさい仕事が来てバンドが周りだす。スケジュールが空いてしょうがない時は教える仕事がたくさんある。だから生活には困らない。そうこうしているうちに、なんとなくアルバムを何枚か出しバンドは自然に終わってしまう‥‥みたいな。っていうか、そういうバンドのほとんどが音もつまらないし、単にフォーキー、単にエスニックっていうだけで、そのヘンの馬鹿なポップバンドとなんら変わりないような音楽をやっていたりする。楽器が難しいしアコースティックなだけにダメダメなのは聞いているだけで「寒ぅ〜」と私なんぞは思うバンドも少なくないのだ。

それをほとんどミュージシャンがまったく疑問に思っていないんだよね。幸せというか、なんというか。税金を沢山払っているんだし、国に保護されるのが当たり前なのか。音楽だけじゃない。生活すべてにおいてそんな調子だからもう仕方が無いのかもしれない。保護されたりあまりに社会が成熟すぎるのも考えものなんじゃないか、と思ってしまう。でもそこからローゲルのいうあのダブルミーニングのジョークが生まれるから、やっぱり複雑で面白い国なのだ、フィンランドって。

Nordik Treeもそんなわけで危機感とは無縁のバンドで、できたきっかけもフェスティバルからのオファーだったよう。3人でバンドをやろうというのはずっと前からあったものの、具体的にはあえて動かずにいた、といったところだろうか。で、オファーが来て経済的なバックアップも確認できたので、あわててバンド名考えて‥‥そんなノリだろうか。

でもあの音楽には、、、私が普段追求しているロック魂とはまるで違うものがある。何か美しいもの。やっぱり「天国があるとしたらこんな音楽が流れている」という事なんだろうか。今の私の解釈はそんな感じだ。とにかく一音一音が丁寧に演奏され、それに献身的に向かっている素晴らしいミュージシャン3人を観ていると、それだけで、もう何か自分がすごく崇高な場所にいるようなそんな気分になるのだ。

Nordik Treeのコンサートがあまりに良かった時には困ってしまった。このバンドはもう二度と呼ばないということで始めたはずだ。もう二度とやらない理由はいくらでもある。今回のツアーが成功したんだから、成功でこのまますぱっと終わっておけばカッコよくて、いいじゃないか。続けたってこれ以上うまくいく保障はないし、ボロボロになってかっこうわるいだけだ。またやってもお客さんなんか来ないよ。でもアーティストはまた来たいという。ティッモにまた来たいと言われて断れる人がいるんだろうか。アルトもニコニコ(笑)。また呼んでよ、と簡単に言う。ハンス。ハンスも今回は子供を連れてきて最初は「これが最初で最後」くらいのノリで来たと思う。今回のギャラのほとんどは子供のフライトと滞在費等に消えたハンス。ハンスは完全にホリディ気分だったよ。初来日で「子供をつれてきたいんだけど」と言われた時は、、、のけぞったよ。ただでさえ巨匠の来日で緊張してるってのに!! 普通初来日でそれを言うか、と怨んだよ。

そのハンスがティッモに英語で「それでリハーサルには何時間必要なんだい」と聞いた時はのけぞったよ。(理由7参照)公用語がスウェーデン語のNordik Treeにおいて、英語で聞いたということは「ほら、ヨーコが聞いているんだから、みんなで今、リハの時間を決めようよ」って意味だと思われる。(ハンス、サンキュー!)あの時は、私は、お腹の中で本当に大爆笑した。なんて天然でマイペースな人たちなんだろ!と。

話を戻して‥‥。何度も書きますが、このバンドをやっていくのは大変だというのは初日で理解したんだよね。でも音楽は本当に素晴らしい。本当に素晴らしいんですよ。でね、また呼びたくなっちゃったんですよ。Star Pine'sの日、札幌からコンカリーニョのTさんが来てくれたことも大きい。Tさんに「もうやれないんですよ、これが最後の来日なんですよ」とか話しながら、ハーモニウムをどうやって札幌に運んだらいいか話している自分がいる。「車運転してハーモニウムを取りに札幌から来るのなんて‥‥無理ですよね」とかむちゃくちゃな事をTさんに言ったり‥‥。そう、もう私はあの時ノルディック・トゥリーをやっていこうと決めていたのかもしれない。またハーモニーフィールズのKさんも絶妙のタイミングで電話してくるのだ。Nordik Tree、どうでしたか、と。まぁ、その後のヨハンナのこともあったから当然なんだけど。(ヨハンナはそのあとHFさんの主催で名古屋や関西を回ったのでした)Kさんに武蔵野のコンサートがどんなにすごかったか話しながら、私もだんだん自分の気持ちが押さえられなくなってくる。人に話しちゃうともうダメなんだよね。また呼びたい。また絶対にやりたい。でもやっちゃいけないのは分かっているんだ、と。

そしてとどめが来日が終わったあとライターのMさんが電話をわざわざかけてきてくれて、「本当にあれば良かった」と言ってくれた事も大きい。Mさんも言ったよ。「やりたいんだったら、やればいいじゃん」だから実はMさんが書いてくれたラティーナの記事には書いてある。「来年には再来日も決まっているノルディック・トゥリー」と(笑)

明日も続く

ノルディック・トゥリーをやらない理由13

(前回から続く)というわけで、Nordik Treeをやっちゃいけない理由を噛み締め、いくらやりたくてもやってはいけないとずっと自分に言い聞かせていたのですが、言い聞かせていた、と言いながら、私はたぶん「Nordik Treeは最高だった、またやりたい、絶対に呼びたい」って周りの人たちに言って回ってたんでしょうね。実はなんとJPPの来日が決まっちゃいました!

どうして決まったかというその経緯はあと10年後くらいたたないと書けませんが、血のにじむような努力があったかというと、そういうわけではなく、いろんなことがとんとん拍子に決まったというか‥‥。でも先日発売になった勝間和代の「やればできる」にも書いてありましたが、ホント自分の力じゃないんです。物事が動くときって。渦巻きみたいにいろんなことが集結して結果がでる。今まで巻いてた種が一斉に芽吹く。「努力しても報われないから緩やかに生きて行こう」っていう風潮が、現在不況まっただ中の日本を覆っていますが、それは絶対に間違いです。だって今しか出来ないことっていっぱいあるんだもの。

私の場合、とにかくやっちゃいけない、やっちゃいけないと思っていたら逆ブレが来たというか(笑)。あまり多くは書けませんが、某コンサートホール名物プロデューサーKさんの「野崎さんNordik Treeもいいですけどね、同じ苦労ならJPPでしましょうよ」のひと言が大きかったと言って良いでしょう。Kさんはやっぱりすごい。そして口だけじゃなく本当に熱心に実際に行動で私を助けてくれる素晴らしい仕事仲間たちに恵まれ、本当に決まってしまったわけです。っていうか、確かにKさんのおっしゃる通り。JPPだろうが、Nordik treeだろうが、世間は知ったこっちゃないんです。どっちも超無名バンドには変わりはないわけですから。

っていうか、もうJPPは私がこの仕事をしていてKさんがこの仕事をしていて‥‥という今しか出来ないだろう、そういう判断もあったんです。JPPだってマウノがすでに健康に自信があまりないらしくもしかしたらマウノではなく息子の方が来るかもしれません。一応ヤルヴェラ・ファミリーの年長組マウノに絶対に来てね、と言ってあります。マウノが健康なうちに私もいつまでこの仕事を続けられるか本当に分かりません。来年は大丈夫かもしれませんが、再来年はもう危ないかも、MUSIC PLANT。だったら、もういいや、ボロボロでも。とにかくやらなくちゃという事です。だから来年やります、JPP。秋にやりますよ。

そしてJPPをやるとなったら、あと呼べばいいのはハンスだけです。実は今の私はJPPよりもNordik Treeの方が圧倒的に好きかもしれない。で、すでにハーモニウムもアルトもティッモも日本にいるのですから。だからハンスがくれば、Nordik Treeも来日ってことになります。そういうわけで来年の秋は10月末にノルディック・トゥリー、そして11月頭にJPP。そういう流れが決定しました。今、すべての流れを調整すべく走り回っていますが、いずれにしてもやります。絶対にやります。今朝、札幌にもJPPがいけるよ、という嬉しい電話がTさんからありました。札幌の皆さん、詳しくはTさんからどうぞ。そして、ぜひぜひ具体的に公演に協力してください。皆さんの力を借りないと、私たち主催者はやっていけないのです。

来年は4月にマリア・カラニエミ、5月にスヴェング、そして他にもう2つフィンランドから、初来日の素晴らしいアーティストが来日します。こちらについてはもうしばらく発表を待ってください。1月に発表予定です。

そして秋にJPP/Nordik Tree、もしかしたら夏にグレン・ティルブルックというのがMUSIC PLANTの2010年ということになります。他にも突発的に何か決まることがあるかもしれませんが、今年の反省から2010年は少しアーティストをしぼって集中して良い仕事ができるよう計画してみました。引き続き皆さんの応援、どうぞよろしくお願いいたします。さぁ〜2010年がんばるぞ!! その前に経理合宿だ。トホホ。

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オリエンタルバザールのショッピング袋も眩しい、観光旅行者の皆さん?(笑)