このコーナーでは、皆様の投稿をお待ちしております
採用された方には、CDやノベルティグッズを差し上げております。






<グレン・ティルブルックがやってくる>

 今から10年以上前、初めてイギリスに旅行したときのこと。昼食をとりにたまたま入ったデリに、その店の主人のお気に入り音楽と思われるカセットテープのラックを見つけた。とても愛想のいい、おそらく40代くらいのその店の主人は、しげしげとそのラックを見つめるぼくに、”聴きたいのあったらなにかかけようか?”と言ってくれた。”じゃ、ちょっと考えてから選びます”と言うと、主人はニッコリしながら店の奥に入っていった。
 たくさんの手書きタイトルのカセットテープがある中で、他のタイトルよりかなり太い文字で書かれているテープがひとつあった。
 「GREATEST HITS / SQUEEZE」
 そこであらためて、”ここはイギリスなんだなぁ”と妙に感じ入ったのを覚えている。
 日本では一部のイギリスのポップファン以外にはほとんど知られていない、マニア受けするバンドと捉えられていたスクイーズ。そんなバンドがイギリスではごくごく自然に聴かれているのを知って、スクイーズというバンドのイギリスにおける大衆性をじんわりと感じた瞬間だった。

 日本での知名度はイギリスのそれに到底及ばないと思っていたスクイーズだが、しかし、1994年の初来日時、そして1997年のグレンとクリス二人だけの来日公演のときには、どこから集まったのか、たくさんのファンが押しかけていた。しかもなぜか10代後半から20代前半の女の子が多かったことを記憶している。このときのライヴは、MCにしろ、曲への入り方にしろ、サーヴィス精神たっぷりで、ボードヴィルの流れを受け継いだイギリス特有の大衆性を強く感じさせるものだった。が、それと同時に、スクイーズのイギリスと日本の認知度の差っていうのはこういうイギリス的な文化の認識の部分にもあ
るのかもしれないと思ったのを思い出す。

 それからまるまる7年経った2004年、ひさしぶりにグレンが来てくれた。スクイーズファンとしては来日するたびに人数が減っていくのは複雑な心境だけれども、しかしグレンはギター1本で、ソロの曲もスクイーズの曲も弾きまくり歌いまくってくれた。この人が作るメロディについてはいまさら言うま
でもないが、そのライヴアクトはバンドでの演奏よりもさらにフレンドリーだ。歌いながらステージを降り、客の中に入って大合唱とか、客と一緒に会場の外に出て、路上で大合唱とか・・。そして、フレンドリーなのはライブだけにとどまらず、カメラを向けるとポーズをとってくれるし、サインをするときも気さくに話しかけてくれる。
 この人がもつ大衆性とはつまり、グレン自身も大衆の中の一人だという意識なのだろう。その曲作りにおける才能を振りかざしてポップマニアだけに目配せしたりすることもなく、その張りのある歌声を大袈裟にドラマティックにして変にすりよったりもしない。イギリスであろうが日本であろうが関係なく、ただの音楽好きの一庶民として、音楽好きの大衆に関わっていこうとする姿勢。音楽家としてはとんでもなくプロフェッショナルなのに、ファンに対してなんの垣根もなく接してくれる、そんなグレンの作る音楽は、まぎれもなくぼくらみんなのものなのだ。

 そんなグレンが今年も来日してくれる。しかもすぐ目の前で彼を見ることができる会場ばかりのジャパンツアーである。
 実はグレンが去年来日したとき、ライヴのあとに少しだけ彼と話すことができた。「来年は来てくれないの? みんな待ってるよ」と言うと、それまで穏やかにビールを飲んでいたグレンは急に真剣な顔になり、「ぜひともまた来たいよ。来年来れたらいいんだけど」と答えてくれた。そのときの彼の真摯な態
度は忘れられない。
 彼の、音楽とファンに対する実直さはライブを観ることでダイレクトに感じることができる。夏のライヴが本当に楽しみだし、多くの人に観てほしいと思う。

2005.4.24
石井達也
 
 
 



<About Andrew Morgan>

気になるアーティストができたら即インターネットを通じて試聴できるなんてまったく便利な世の中になったものだ。

Andrew Morganは初めて聞いたときからすぐに波長が合うことがわかった。
不思議なゆらぎを持った彼の陰りのあるヴォーカルに身をゆだねて漂えば、ただただ心地よいひと時を過ごすことができる。

カンサス出身のAndrewはカンサス大学在学中に友人とバンドを結成、大学では心理学を専攻していた。(音楽活動のために中退)

音楽的には50年代のジャズ、Miles Davis、Brian Wilsonなどの影響を受けているそうだが、流行を意識するというよりは自分のやりたいことを追求するタイプのミュージシャンなのだと思う。

初めてのフルアルバム'Misadventures in radiology'は難産の末生まれることになるのだがElliot Smithに助けられ彼のNew Monkey Studioで録音、その後も納得のいくまで時間をかけて練り直された。

駆け出しの新人がオーケストレーションを導入してデビュー作を仕上げるのは経済的にも相当大変だったようだ。しかし結果的に、幾分中世趣味ともいえるヴァイオリンやチェロ、鐘の音が、彼の不安定な歌声とマッチして独特な雰囲気をかもしだし、充分その効果を発揮していると言える。

アルバムでは全体のまとまった流れを重視、'Misadventures'におけるテーマは最後に奏でられる曲'Morpheus Calls'のタイトルからもわかるように「眠り」だそうである。

もちろんひたすら暗いだけの音楽というわけではなく、まるでほんの少し最後の光を残して消えようとしている夕日のように美しい色合いを持った一枚だ。

うん、この次の陰鬱で煙った霧雨の日には絶対またこれをかけようと思う。
 
2005.4.27
札幌市 田中 かおり
Andrew Morgan homepage
 
 
 



<ひっそりと佇むHurricane Smithという男>

 今月はこんなCDも発売されるのかぁ! でもこっちのこれも聴きたいよなぁ・・・。あ、あのボックスも今月発売されるんだったっけ! どれを優先して買うべきか・・? 
 おそらく世界中で日本人が一番、CDを買うのにうれしい悲鳴をあげ、広い選択肢の中からどれを買うべきか悩んでいるのではないだろうか・・。
 世界一のリイシュー大国日本において、未知のアーティストのマテリアルを楽しむ機会が増えることはとても歓迎すべきことではあるけれども、反面そのリリース情報の多さからうっかり見逃してしまう傑作も少なくはないはずである。

 自分にとってHurricane Smithもそんな見逃してしまうアーティストの1人になり得た存在だった。
 名前さえ知らなかった彼を知ったのは、とあるCD店の試聴コーナーで、なんとも古臭い"Don't Let It Die"というアルバムジャケットを見たときだった。2頭の馬の間に立つ、痩せた口髭の農場主のような1人の男。ところが、なんともパッとしない、全く冴えないそのジャケットにかえって目が止まり、どん
な音なのかと試聴機のヘッドフォンを耳に当ててみたのだが、これが実に心地いいサウンドだったのだ。
 ときには流麗なオーケストレーション、ときにはビッグバンド風でもあるオールドタイムな演奏に乗せられた、甘酸っぱくもあり切なくもあるメロディ。そしてそんな美しい曲を独特のダミ声で歌いあげるHurricane Smith。淡いノスタルジーを誘う彼の歌は、その冴えないアルバムジャケットと相反して、とても甘美で、うっとり聴きほれてしまうほどの優しさと親しみに包まれている。

 Hurricane Smith、本名Norman Smithはもともとアビィロードスタジオで働いていた人らしい。ジョージ・マーティンの下でビートルズのレコーディングにも関わっていたり、ピンク・フロイドのプロデューサーとしても活躍していたそうだ。そんな仕事の合間に1人で自作曲を練り上げて、それをジョン・レノンに歌ってもらおうと思っていたら、まわりに「自分で歌ってみたらいい」と言われそのままデビュー、というおかしな経歴をもつ人がこんなにもエバーグリーンな傑作を作り上げてしまうのだ。当時のアビィロードスタジオには信じられないほどのなにかが満ち溢れていたのである。

 ところで、彼の経歴について知ることができるのはこのアルバムについている解説くらいで、インターネットで検索しても彼を詳しく紹介しているところにはまったくヒットしなかった。ただでさえ様々な情報が入り乱れる中で、そのどこにも発見されないHurricane Smith・・・。

 現代ではインターネットを利用することで様々な音楽を検索し、また試聴することもできる。それは確かに手軽であり便利なことであるけれど、しかし、ふとCD店に立ち寄り、突然バッタリ出会ったアーティストにとんでもなく心ときめくなんていうことは今の時代でもあるのだ。
 毎月の数多いリイシューアルバム、その情報収集からもれてしまうのはおろか、経歴さえもインターネットに出ていない1人の素晴らしいアーティストとバッタリ出会った喜び。デジタル全盛の時代に、そこからこぼれおちた素晴らしい宝石、Hurricane Smith。今はそんな宝石を、誇らしげにみんなに見せびらかせたい気持ちでいっぱいである。

2005.5.12
石井達也



<ONE FOR THE ROAD>

うわ〜っ、楽しそう!
おじちゃんもおばちゃんもみんな腰を振り振り踊ってる。
初めて'One for the Road'のサンプル映像を見てそう思った。

Squeezeはマジソンスクエアーガーデンを一杯にしたこともある、当時のU.K.バンドの中では数少ないアメリカで成功を収めたバンドだった。そんな人気バンドを解散して、1人新たな船出を決意したGlenn Tilbrook。当初は何もかもを自分1人でこなさなくてはならない境遇に淋しくなったり戸惑ったりもしたらしい。そんな彼がRVに乗ってアメリカ中をツアーする様子を撮影したドキュメンタリー映画が、冒頭の'One for the Road'だ。

ソロとなった彼は観客のパワーをいままで以上にうまく取り込むことに寄ってそのパフォーマンスを確実にグレードアップしてきた。誰かが彼のことを「1人POPバンド」と呼んでいたが、確かに彼のステージからはいわゆるシンガーソングライターの持つオーラとはなにか違ったものが感じられる。

「ヘイ! 一緒に楽しくやろうよ。」といった気取らない人柄。
彼は喜んでいる観客の顔を見るとますます自分もハッピーになって、それをまた新たなエネルギーに変えてしまうことのできる根っからのエンターテイナー。なにしろ子供の頃のアイドルはビートルズやローリングストーンズではなく、ザ・モンキーズやクリフリチャーズだったそうだから。

昨年渋谷でライブを体験できることになった時に、映画のフライヤー(宣伝ちらし)をダウンロードして20枚ほど用意し、会場で配った。映画を完成させるまでには長い道のりがあり、資金調達を初めとして数々の苦労があったことを監督のAmyさんのホームページで読んで知っていた。できれば自分も何か協力してみたいと思ったし、なによりやりたい人達が勝手に宣伝隊になるというアイディアが新鮮だった。

思い切ってGlennにも「もうすぐ映画が観られるんだよね。」とたずねてみたのだけれど、即座に「それはあり得ないよ。」と否定されてしまいがっかりした。それから一年も経たないうちに再来日、さらには上映会が決定することになるとは考えもしなかった。

自分のことを「まるでスーパーマーケット時代の個人商店のよう」(G.S.O.H. essential)と例えているGlenn、これからもとびきり魅力的な品揃えを期待していますから。

2005.5.23
札幌市  田中 かおり
 

 


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