OAK TREE RECORDS 対談ページ
T:五十嵐 正  A:荒田 光一(敬称略)
第1回:男性シンガー/ソングライターは何故売れない?

第2回:ポール・ブレイディとアイルランドの男性シンガー/ソングライター
第3回:パブ・ロックとは何か〜スクイーズ〜途中ロビン・ヒッチコック〜その他
第4回:ロビン・ヒッチコック
第5回:ロビン・ヒッチコック〜グレン・ティルブルック来日レビュー
第6回:ブー・ヒュワディーン「ハーモノグラフ」
第7回:ロビン・ヒッチコックの来日を振り返る
第8回:ロビン・ヒッチコック&ザ・ヴィーナス・3「オーレイ!タランチュラ」


第1回:男性シンガー/ソングライターは何故売れない


MP:さて対談第一回です。まずですね、第一回のテーマは「男性シンガー/ソングライターは何故売れない」。そこから始めると、みんな注目して、このページを読んでもらえるかなぁ、と(笑)。私が、五十嵐さんの発言ですごく印象に残っているのがあって、それはリチャード・トンプソンについてなんですけど「僕がこんなに書いているのに、書き始めた頃から今に至るまでファンの数が全然変ってない」っていうのがあるんですけど。

T:そんな事言ったっけ? 僕には世の中への影響力がないからなあ(笑)。どうなんだろうね。(最後に来日したとき)クアトロは大体いっぱいになっていたけどね。

MP:そう、なのにCDは売れない、という。っていうか、本当に売れてないんですかね。

A:本人はせっせといろいろと出しているし、ネット通販のおかげでファンの人はかなり買っているわけでしょ。

T:向こうではリチャードは昔より人気あるかもしれないよ。フェアポート時代は別にして、ソロになってからだとね。近年はレコードの売り上げは地味だけど、コンサートにお客さんはよく入るからね。大ホールは無理だけど、小〜中ホール・クラスならアメリカやイギリスでは入る。しょっちゅうツアーをやってるのに、ほんとによく入ってる。まあ、ライヴが素晴らしいアーティストだからね。いったんファンになると、みんな離れないし。

MP:メジャー離れてから自分で好きに出して、今、すごく健康的な感じはしますよね。

T:みんな、そうすればいいんだよ。実際グレン(・ティルブルック)もそうだけど。

MP:あと、メディアとかにあんまり載らないってのはありますよね。

T:そう、だから日本では売れないって問題になるんだよね。メディアは・・・ないよね。30代より上、40代、50代。まぁ僕らの周りの人は買ってたとしても、世の中全体の浸透度をみると、アメリカとかと比べてそこの購買層が弱い。それに加えて、その購買層に向けたメディアがないわけ。・・・新聞で読んだけど、東京の私立大学に子供がいると仕送り10万円以上で収入の1/3を持っていかれるそうだよ。そういう意味では家庭を持つお父さんは大変だよ。とはいえ、女性の購買層って日本はすごく強いからね。それはほとんど服や化粧品に向かっているわけだけど・・そこが問題だろうね。例えばさ、ジェイムス・テイラーのベスト盤がアメリカではダイアモンド・ディスクなわけ。つまり1,000万枚ね。もうとにかく延々売れているわけよ。

A:どんどん世代も変わってるしね。新しいファン、若いリスナーがまずベスト盤を入り口にして買っているってこともあるでしょう。

T:一家に一枚の世界だよな。

MP:うーん、やっぱり息の長いものは売れていると。そういう長く売れるものに対して、レコード会社が根気強くないって事ですかね?

T:日本のレコード会社や洋楽市場は長年ビートルズ頼りだったのよ。幾つかの限られたアーティスト頼みだったところに問題があるんじゃないの? 最近でもまたクイーンとかに頼っているでしょ。何年前かにサライとかが少し売れて、50代以上をねらった雑誌が続けて創刊された時期があったけど、今またLEONの成功で、上の年齢層向けの雑誌が幾つも創刊されているよね。でも、そういうところが取り上げる音楽ってさ、すごくコンサヴァティヴなのよ。相変わらずビートルズとかストーンズとか、クラプトンとか、すでにエスタブリッシュされたものだけ。あとは、相変わらずモダン・ジャズとかさ。

MP:新しいものはやらない。

T:アメリカでさ、アメリカーナ的なものとか、ワールドミュージックとか、ブルーズとか、そういうものが売れているのはさ、若い人も買っているけど、上の世代が60年代のロックからいろんなものを順番に聴いてきたから、すごく耳が広くなって、CDの時代になってクラシック・ロックも聴くし、リイシューも買うんだけど、ワールド・ミュージックや、それこそケルティック・ミュージックとかも聴いているって事だと思う。それでコンサートにも行く。アメリカに行くと、フェスティヴァルに中年のカップルや初老の人たちもいるからね。日本にはそういうのがないんだよな。でも、今年はロックンロール50年って言い訳があるから、とたんにアエラの増刊号とか出てたけど。

MP:あ、ケンソーの清水さんが記事書いているやつだ。

T:「大人のロック」とか・・。なんか読まなくても、もう内容がわかっちゃうよね。

A:書いている人もあまり変わりばえしなかったり。

T:書いていることも何十年も一緒でしょ。英米ではもうとっくに研究が進んで、新事実とか新しい見方とか出ているわけよ。

MP:何をもって50周年なんですか?

T:〈ロック・アラウンド・ザ・クロック〉から。

MP:あ、そうか。・・・・そう言えば、ジェフ・ベックの紙ジャケとかすっごく売れたみたいですよね。オリコンに入ってたみたいだし。

T:ソニーの担当が予想以上だって言ってたよ。

A:某エンジニアの話では、アナログに比べるとやっぱり音はイマイチだとか。

T:そう? ソニーが誇る新しい技術を使ったんだけどね。ソニーは親会社がオーディオメーカーだからさ。ジェフ・ベックは今までリマスター版がシリーズでまとめて紹介されたことがなかったんで、良かったんじゃないかな。

A:日本の紙ジャケ&デジタル・リマスターCDの再発を商売として非難するつもりはないけど、どこか騙されているようで。音のクオリティで断然勝っているはずのSACDのカタログをソニーはもっと増やせと言いたい。

MP:誰が買っているんですかね?

A:普通のロックファンでしょう。

T:我々の世代の普通のロックファン。

MP:若い子が買っているとか、ないかな。

T:若い子じゃないと思うな。メタルとか聴く人以外、今ではギター・ヒーローっていなくなったでしょう。アコースティックでは少しいるかもしれないけどさ。

MP:しっかしウチら若いころは・・先日もこのホームページのために白木さんと話してたんだけど、彼女なんかはもう小さな雑誌のコラムから、ニック・ロウ、エルビス・コステロで、スクイーズみたいな所から入っていっているわけ。そういう勉強します感がない。

T:でも、DJ志望の子とかさ、それはもう沢山レコードを買うわけよ。つまりネタ捜しっていう意味では、勉強しているよ。それは我々以上に。使えそうないろんなジャンルを買い込んで。それはあくまでネタ捜しだけどね。

A:リスニングのために買っているわけじゃない。

T:だから、その背景にあるものとか、関係ない。

MP:深く入っていかないってのはありますよね。

T:それはかまわないんだけど・・とはいえ、本質の話になっていくとさ、じゃあ、今まで日本で、シンガー/ソングライター的なものを紹介してきた日本のメディアが、そんなに本質とか、ちゃんと紹介してきたかっていうとさ、まぁ、してないわけだからさ。

MP:それを言うなら、もう時効だからいいだろうけど、ポール・ブレイディの最初の紹介のされ方はひどかったですもんね。(91年「Trick or Treat」が発売された当時)

T:アイルランドの事とか、当時わかんなかったでしょ。一部の人以外は。 ま、今でもわかっていない人多いけどね。だから、男性シンガー/ソングライターがなんで売れないかっていうとさ、はっきり言って、売るのは難しいわけよ。最近よく言っているんだけど、音楽って確かにユニヴァーサル・ランゲージであり、万国共通でハートで感じられるものはあるよ。それは間違いない。でも同時にさ、音楽は個々の民族、文化に根ざしたものでもある。だから、なんでもつっこんで聴くときはある程度そういう理解がいるわけ。で、それは難しい。簡単なことではないわけよ、実は。言語の壁もあるし。言語以外にも社会習慣とか生き方とか随分違うわけだし。そこを理解しようって努力がすごく必要なの。とりわけシンガー/ソングライターって多かれ少なかれ言葉が重要な割合を占めているわけだしね。だから、難しいことは難しいのよ。で、まずは難しいってことをきちんと理解してもらわないと。まぁ日本の評論家やメディアにおいては、そのことを理解してない人が8割だからさ。表面的なことにしかならないよな。音楽ファンが音楽を楽しむ分にはどういう形でもいいと思うんだけど、やっぱりギャラをもらってそれを紹介する人は、そのことを自覚しないとね。だからシンガー/ソングライターものについては(中川)五郎さんの書いているもの以外、僕はほとんど読まないもん。

MP:本当に、どう紹介されるか、って大事ですもんね。

T:あと、英語の歌詞の味わいとか解釈の仕方とかを根本的に分かってないところがあるかもしれない。つまりひと言、ひと言、字ヅラを翻訳して、こういう内容だっていうことだけじゃなくて、全体の歌詞がつくりだすイメージをどうとらえるか、とか。あと、英語の歌詞はもちろん韻を踏んでいるから、そのライムのつくるリズム感とか、抑揚の良さとかがある。そういうのが英語の歌の楽しみだからさ、そこを分かってないと。

MP:歌詞カードをね、この前も荒田さんと話して出たんだけど、悩むところなんですよね。なんか歌詞の訳って好きじゃないんですよ。それよりも、なんか歌詞カードの下に難しい言葉の訳をいくつか載せておいて、それで全体を理解してもらうといいかな、とか。

T:あとさ、ダブル・ミーニングとか、特有の背景とか必ずあるからね。例えば、訳詞集の本が幾つも出ている中で、エルヴィス・コステロの訳詞集が出ているんだけど、ほとんど註がついてなかった。訳詞が上手いか下手か以前に、コステロの歌詞を日本語にして、註がつかないってことはありえないわけ。あれってほんとにイギリス的だから、アメリカ人にとってもすごく難しかったりするんだよね。だから、せめて註は沢山つけてくれないと。

A:まぁ、そういうこともあるから(紹介の方法が簡単ではないから)、レコード会社の立場から言っても、シンガー/ソングライターを売るのが一番リスキーだというのはあるよね。

MP:まぁ、でも北欧のレーベルはじめた時思ったんだけど「今、始めればいいものが揃えられる」って。だからこのレーベルOak Treeにおいても・・このテのでちゃんと紹介されてないものって、もういっぱいあるじゃないですか。そういうのをちゃんと紹介していけたらな、と思っているんですよ。

T:特に日本で売る時は、音楽そのものだけじゃなくて、イメージが必要なのよ。ニュース性とか、今の時代の何かにシンクロするとか、さ。

A:例えば、映画に使われたり、とかね。

MP:うん、今、なぜ、この人なのか、っていう理由づけですよね。それは、いつも考えることだけど。

T:それが難しいんだよね。良い曲を書いて、歌っているシンガー/ソングライターって一杯いるからね。

MP:いや〜だから、ほんとポールとかも・・プレス用の資料書いてて、もう悩んで、悩んで。

T:ポールの今度のアルバムはアイリッシュっぽさが少ないわけだけど、アイルランド人であるってことは大メリットだよね。

MP:グレンもSouth Eastロンドンってのを強調したら面白いかも。スクイーズって歌詞がほんといいですよね。ま、歌詞はグレンじゃないけど、ほんとロンドン以外ではあり得ないバンドですよね。

T:いったんファンになったら、クリスの難しい歌詞をパズルを解くように理解しようとするわけだね。ピーター・バラカンの番組に「ピーターさん、これはどういう意味なんですか?」と質問状を出したりするわけですよ(笑)。スクイーズとか、コステロとかさ。ピーターも「そういうことは考えたこともなかったなぁ」とか言ったりしながら、答えてあげてるわけですよ。

MP:なんか紹介する側もマニアックに攻めないと駄目ですよね。まぁ、でも、最近90年代に入って結構良い新しい人もでてきてますよね。あ、そうそうルーファス(・ウェインライト)の新譜はどうだったんだろ。

T:いや〜、ダメでしょう。

MP:えっ、売れてないの? 一枚目はすごく話題になってましたよね?

T:ルーファスはね、最初日本にプロモーションで来て、業界向けの小さなライヴをやったんですよ。それがすごく評判良かったし、たくさんメディアにも出た。そしてクアトロに来たの。僕はたまたま日本にいなくて、そのクアトロ公演は見れなかったんだけど、後から人に訊いたら「全然入ってなかった」って。

A:僕は見たけど、ガラガラってわけじゃなかったよ。

T:まぁ予想外に少なかったから、「これはいける!」とみんな思ってたのは幻想だったのか、って。結局日本では一枚目以降は盛り下がってんじゃないかな。

A:「Poses」の方が売れたんじゃないですか? 

T:どうかなぁ。だから結局のところ、ロン(・セクスミス)ちゃんのファーストくらいなのよ。

MP:あれはコステロの応援があって売れたわけでしょ?

T:あれも出た当初は向こうでも全然売れなくて、コステロが半年くらいたってからMOJO誌で「あれは去年出たアルバムの中で一番いい」と言ったおかげで売れたんだ。あれで、一気にアメリカ、イギリスでも注目が高まった。で、日本はコステロがちょうど来るから、(3X3の主催者でもある)塚田が、日本に呼んで前座させたらどうだ、ってスマッシュに提案してうまくいったんだよね。だからコステロが紹介するロンということで、入り口としてすごく良かった。でも10,000枚以上売れたってのは、すごいよな。東芝がもうちょっとプッシュしてくれれば、今ももっといけると思うんだけど。

MP:そういや、エリオット・スミスのライブで五十嵐さんと一緒になりましたけど、リキッドルームであんなに人が入っててびっくりした。

T:エリオット・スミスの場合は・・・・例えばベックって日本でもすごく売れるわけよ。そういうものに近いもの、として売ってたわけよ。人脈的にもそうだったけど。

A:宅録とかローファイを広く認知されるきっかけを作った一人がベック。エリオット・スミスもどちらかというとアメリカのインディー・シーンから出てきたローファイ的なアーティストと見られていたけど。

T:だから、ソニック・ユースとか、そっちも聴くファンが聴くってこと。

A:まぁ、僕らみたいな世代で、70年代のシンガーソングライターものを聴いてきた世代とはまた違う若い世代が彼らを聴き始めてずっとついてきている。

T:だから、ほら、Pヴァインとかヘッズとかが出している近年のシンガー・ソングライター的なものって結構売れるんだよね。そこそこ。

A:ボニー・プリンス・ビリーとか、キャット・パワーとかね。

T:あれなんかどのくらい売れてんだろうね。

A:熱心なファンがいっぱいいるし・・最初にキャット・パワーのライヴを下北沢のラ・カーニャで見た時には・・

T:そうそう、脱力したなぁ!!(笑)

MP:え、え、どういう意味で?

T:あのね、一曲を完奏するってことに興味がないらしいんだよ。

(全員爆笑)

T:すぐ途中でやめちゃうんだよ。で、すぐ次の曲いって、それもすぐ止めちゃう。

MP:なんだ、それ? 素人っぽかった、って事ですか?

T:そうそう。でも、あれで向こうでは割とデカいフェスティバルとか出てるからね。

MP:ほんとに? うーん、わかんないもんですねぇー。

A:いつもそういうわけじゃないみたい。あの時は狭いところで客も満員だったし、神経質になっていたのかもしれないけど。

MP:まぁ、でもそういう意味では、そっちの方は、インディーズ・レーベルがそこそこ紹介してるってのは、あるのかな? で、インディーズでやってるうちは、まぁオッケーみたいな?

T:実際、よく売れているみたいよ。

MP:あやかりたーい。

T:あのへんは我々が2、3000くらいの話しているときに、最低で5、6000の話してるよ。

MP:すごいなぁ! ウチのがそんなに売れたら大ヒットだよなぁ。

A:あとブライト・アイズもね。

T:あぁ、あれは今が旬だからねぇ、売れるでしょう。まぁ、世代、世代だと思うんだよな。日本でニック・ロウやエルヴィス・コステロとか、デビューして30年ほど経つ人たちが、今でもそこそこ人気あるじゃない? たぶんニック・ロウは世界で一番日本で人気あると思うんだけど、ニック・ロウなんかは、我々の世代から下の方の世代までファンはいるよね。

A:だから、プレスとかが、そういう若い世代のものと結び付けられる、キーになるものを作れば、そっち(若い世代)まで流れていく可能性もあると思うんだけど。なかなか難しいよね。

T:あのね、よくする話なんだけど、オアシスが出てきた頃、いわゆるブリットポップの時期に、QかMOJOで誰かが書いてたんだけど、ロックの世界で遂にジェネレーション・ギャップがなくなった、ってのがあったんだよ。つまりオアシスはビートルズ、ブラーはキンクス、と60〜70年代の音楽の影響がすごく濃厚なバンドが出てきた。一方で、その頃はもうCDのリイシューが新譜と同じくらいの割合で重要性を占めるようになっていたから、若い世代はドアーズとか、自分の好きなバンドの影響源のバンドを買ったりするようになった。そのおかげで、お父さんと子供が会話できるようになったわけよ。子供がお父さんのレコード棚を探したら、ヴェルヴェットだ、ドアーズだ、キンクスだとかを発見して、「親父こんなの聴いてたのか」とね。で、親の方も「おまえが聴いているオアシスってのはビートルズみたいでいいな」とか「これは何とかの影響だよ」とか、親が子供と話せるようになったっていうわけ。それまでロックはジェネレーション・ギャップを作るものだったのに、それが遂になくなったと言うんだ。確かに僕があの頃、ロンドンのレコード・フェアで目撃した光景なんだけど、中学生くらいの子供とお父さんが二人で来てて・・・ほら、メンズウェアって覚えている? 

A:うん、いたね。うちにもシングル盤がけっこうある(笑)。イギリスのデザイン・チーム、スタイロルージュの特集を雑誌でやったときに集めたな。

T:で、お父さんが息子にお前の捜しているメンズウェアのシングルはこれじゃないのか、とか言ってるわけよ。日本でも、日本のバンドとかさ、どうなのかなー。

A:はっぴいえんどとか、若いバンドでフォロワーと言われる連中はいるけどね。

T:でも、そういう会話は一般家庭では難しいだろうなあ。THE DIGがなかなか隔月刊に戻ってくれないのが、その証拠じゃないか?

A:THE DIGといえばね、Year Book 2005で、最近のシンガー/ソングライター事情について書いたのだけど、いまどきのシンガー/ソングライターについてどこまで広げて考えるか躊躇したところがあって。デヴェンドラ・バンハートは別項で紹介するというので外しましたけど、ジョン・メイヤーとか、ジャック・ジョンソンあたりは一部でかなり人気もあるけどどうなのよ、と。線引きとしてね、どういう風に考えればいいのか・・。

T:二人ともシンガー/ソングライターではあるけどね・・・・・・そうそう、そうなんだよ。ジャック・ジョンソンは日本でもかなり売れているんだよね。

A:新譜が出たばかりだけど思っている以上に売れてそうでね。昨年はドノヴァン・フランケンライターも話題になった。

T:ジャック・ジョンソンとかが人気があるのは、やっぱりサーファーとか、ちょっと緩い感じの音が好きな人に受けているんだけど・・そこには地域文化が・・・そうそう、ほら、ジャム・バンド系とかコンサートは入るんだよ、これがさー。それはダグのバッファローの出しているものとか、そうなんだけど。

A:たしかケラー・ウィリアムズとかもバッファローから出ていた。

T:普通に考えたら、日本に呼んでコンサートするとか自体が驚きなのに、結構色々呼んで、小さい会場中心だけど、ちゃんとやれてる。

MP:うーん、ほんと見習いたいわ、あれは。

T:ダグの出しているもの、我々が思っているよりはずっと売れているからね。いろんな要素があるから、一概には言えないけど、ひとつはやっぱり彼も鎌倉に会社を構えているんだけど、地域文化みたいなものと音楽のつながりって、日本にも少しはあるんだよね。中央線にあるとか、関西にあるとか。で、やっぱり彼らは湘南。横浜から鎌倉。昔のウェストコースト・ロックみたいなものとか、グレイトフル・デッド、ジャム・バンド系のものとかのファンがあそこにいるんだよね。で、そういう人たちは、コンサートには集るんだよね。コンサートの動員の割にはCDはそれほど売れてなかったりもするんだけど。ひとつは情報の伝わり方が飲み屋とか、サーファー・ショップとか、古着屋とか、通常の音楽メディアとレコード屋じゃないところで情報が伝わったり、人が集ったりしてるらしい。そういうところだと、音楽自体は渋いっていうか、ちょっと好みにうるさいような連中が聴くような音楽だったりするわけだけど、飲み屋だったら女の子も来るわけだし、そのへんも巻き込んで、じゃあ、みんなでコンサート行こうか、みたいなさ。

A:地域やサークルをターゲットにセレクトショップ化している、みたいな感じ?

T:そうだよね。

A:湘南だと藤沢や鎌倉あたりではそういう地域性や客層を意識したお店がけっうあるみたい。

MP:まぁ、看板とかも大事ですよね。どんな店かまえているか。どんなレーベルをやっているのか。バッファローとか見ているとそうだけど。そして何が一番大きな看板かというと、アーテイストどんなの揃えているかにもよるんだけど。

T:既成のレコード店や音楽メディアじゃないところを開拓するのがいいんじゃないの。アメリカは高い年令のマーケットが日本よりずっと大きいから、ちょっと話の次元が違うけど、どう売るかっていう事を言えば、テレビ通販みたいに売る手もあるし、いろんなことやっている。例えばグラミー賞を獲ったレイ・チャールズの遺作はすごい売れたよね。中味は大したことないよ。あれが売れたのは、やっぱりレイ・チャールズが亡くなって、皆さんの追悼の気持ちと映画のヒット、豪華なゲストとかいろいろな要因はあるわけだけど、あれって実はスターバックスと最初から組んだのよ。スターバックスの店舗でものすごい数売れたんだ。で、今度スターバックスがやっているのは、ティナ・ターナーの新しいベスト盤で、また良く売れている。まぁ、そういうやり方をしないと年令が上の人に届かないかもしれないね。

MP:そっかー、ちょっと考えよう。

A:コンピレーションといってもいろいろあって、考え方や戦略によっては面白いコンピレーションがもっと作れたと思うんだけど。スターバックスのHear Musicはそこらへんをうまくやっているね。六本木ヒルズのスターバックスにも何枚かオリジナルのコンピCDがおいてあるらしいんだけど、やっぱりジャズとかが数枚あるくらいでパッとしない。

T:18歳から20代後半までの若い層だけじゃなくって、上の層に届けるにはいろんなことしないとダメだと思うんだよね。で、アメリカだと、大手チェーンの映画館に無料のコンピレーションCDが置いてあったりするのよ。映画に関係した曲のコンピだけど。先週のLA出張で、某社の仕事だったから良いホテルに泊まったんだけどさ、そこには部屋にCDプレイヤーがあって、最新のコンピレーションCDがお持ち帰り自由で置いてあったよ。

MP:音をもう直接配りたいってのは、ありますよねー。グレンも、なんかそういうの、やるかー。

A:ロッキン・オンの今月号はCDを付けたりしているけどね。でもそういう既存の音楽誌に付けるのは以前にもあったし、目新しいことではない。

MP:うーん、そういうんじゃなくて、もっと考えたいよね。

T:今さー、イギリスでは週末の新聞に、タブロイドもクオリティ・ペイパーも、ほとんど全部にCDが付いてくるわけよ。もうDVDとかも付いちゃってる。イタリアでもDVD付きの新聞とかあるけど、それはその分ちょっと高いわけ。でもイギリスじゃ1ポンドの新聞にDVD付いてんだからさー(笑)。タブロイド紙についてるのはね、だいたい70年代ラブソング集とか、中身はたいしたことないんだけど。

A:コステロとか、ディヴァイン・コメディとかのCDもあったでしょ。

T:時々そういうのもあるね。で、イギリスってCDの値段が高いでしょ。1ポンドのおまけに付けられるもんに、なんで15ポンドとか20ポンドとか払わなくちゃいけないんだ、っていう話にもなる(笑)

MP:あ、それ、メアリー(・ブラック)のマネージャーが言ってたけど、あぁいう新聞のフリーCDがあるから最近CDが売れないんじゃないかって言ってた。実際、そういうCDで済んじゃう人って多いわけ。普段聴く音楽なんて。その一枚があれば、もういい、みたいな・・・だからそういう人たちじゃなくって、もっと熱心な音楽ファンにちゃんと届けたいなぁ・・。ちょっとマジで考えよう。シングルCD作って・・・・お金かかるぅ〜(笑)。でも、やりたいなぁ。

T:でも、とにかく、そういうふうな音に直接アクセスさせる方法を考えないと。日本ではラジオではかかんないからさー。まぁ、民放はしょうがないよ。だけど、NHKはさー、オリコンの100位に入っている曲、かけなくていいよ! NHKってラジオの音楽番組担当者ってほとんどクラシックと純邦楽なんだよ。ポピュラーって2人くらいで、あと10人くらいクラシックと純邦楽。それはやっぱり民放がかけないからなんだけど、そうあるべきなんだよ。だからポピュラーも流行っている音楽は一切かけなくていいんだよ、本当は。ところで話を戻して、ジャック・ジョンソンはそんな感じ。で、ジョン・メイヤーは・・売れてんだろうなぁ。

A:めちゃくちゃ売れたでしょ。

T:まぁ、あれはアメリカのヒットがこっちに来たって事だろうけどね。でもアメリカじゃ、完全に女の子のアイドルだからさ。マジソン・スクェア・ガーデンで見たんだけど、その歓声に誇張無しに鼓膜破れるかと思ったよ。中学生から30代前半くらいまでの女性に凄い人気でさー。

A:ノラ・ジョーンズとかは? 第2のノラ・ジョーンズって宣伝文句とかでレコード会社が売り出そうとしている女性シンガー・ソングライターものって沢山あるじゃないですか?

T:売れてんの?

A:大方そんなに売れてはいないんだろうけど。けっこう日本のレコード会社のあいだで争奪戦になったと言われているケイティ・メルアはイギリスではかなり売れたらしいけど、日本ではどうなるか。

MP:ノラ・ジョーンズって絶妙な感じですよね。あの位置って誰も今迄いなかったっていうか。誰でもできそうな感じで、誰もやってなかった、みたいな。あのくらいの歌える子だったらアイルランドにも沢山いそう。なんて言うと暴言だけど。

T:オーディションに行こう! グラスゴーにも可愛いくて楽器もうまい子がいっぱいいたぞ。

MP:で、そういうので儲けて、こういうグレンとかポールみたいなのをやる、と(笑)

A:日本であまり売れなかったけど、ゲイリー・ジュールズとか・・

T:日本で発売になったの?

A:彼ってアメリカ人のはずだけど最初にブレイクしたのはイギリスなんでしょ? ティアーズ・フォー・フィアーズの「Mad World」のカバーが映画「ドニー・ダーゴ」に使われて一躍注目されたとか。

T:五郎さんが好きらしいよ。去年出た中で一番好きって言ってたかもしれない。

MP:だいたい日本発売されないやつも多いですよね、最近。五十嵐さんがホームページで書いてたけど。なんか去年のベストアルバムの半分以上が日本発売されなくて、職業上の危機を感じる、とか書いてらっしゃいましたが・・(笑)

T:ほんと、そうだよ。今年はブルース(・スプリングスティーン)が新譜を出してくれるから、なんとか生き延びれるかもしれない。そういや、フィン・ブラザーズはどのくらい売れたんだろうね。

MP:結構パブリは見ましたけどね。評判よかったし。

A:東芝も思ったほどやる気なかったしなあ。プロモ来日させてちゃんと宣伝すればもっと売れると思うんだが。あ、でもCCCDだ(笑)。

T:CCCDは僕のラジカセを壊したぞ! どうしてくれるんだ。

A:ウチのCDラジカセも買って1年経たずにに見事壊れました。

T:あれっていったい何がダメになるの? 修理どのくらい取られんだろ。

A:自分でもってけば4、5000円で治るかもしれませんよ。

T:ラジカセだったら持っていけるからなー。いやだなぁ〜もう。アルタンのベストで壊れたんだよ。

と、話題はCCCDの事に突入していく。
 
 
 



第2回:ポール・ブレイディとアイルランドの男性シンガー/ソングライター

前回に引き続き第2回です。今回は前回にも負けずおとらずまとまらない(笑)ですが、とにかく雑談と思って読んでください。最後にお二人のおすすめの男性アイリッシュ・シンガー/ソングライターのアルバムをご紹介しています。

T:(荒田さんが用意したメモを見て)お、予習してきた!

A:ポール・ブレイディとアイリッシュってことで、最近気になる人たちを列挙してきただけ。最近名前が覚えられなくて(笑)。

MP:ポールを盛り上げてくださいね。

T:(男性シンガー/ソングライターは)最近少し出てきたよね。アイルランドでは、結局のところポールとかクリスティ(・ムーア)の世代があって、その後、例外的なルカ・ブルームとか・・・ルカだって、バリー・ムーアがアメリカに移住して名前を変えて再デビューしたんだからさ・・・それ以外は、ずっといなかったわけだよ。いたのはノエル・ブラジルとかジミー・マッカーシーみたいな、メアリー(・ブラック)とか女性シンガーに曲を書いて生計を立てる、で、時々自分のアルバムを出す、というタイプが多かったと思う。結局のところ、ずっと空白だったわけですよ。で、空白に乗じてでてきたのが・・

MP:誰、誰?

T:実はアイルランド人ではない、デイヴィッド・グレイ。アイルランド人でもないのに、アイルランド史上で一番たくさんのレコードを売ったのは、やっぱりアイルランドに男性シンガー/ソングライターがいないという空白にすぽっと入ったんだと思う。あれに刺激されて、今の人たちがでてきているの、そういう流れだと思うよ。

MP:あぁ、そういうことかー。

T:僕の分析はこうだよ。間違っているかもしれないけど。

MP:(荒田さんのつくってきたリストをみて)あ、これ大好き。デクラン・オローロク。ほんといいよね。(パディ・ケイシーを指差して)あ、このコ、可愛いんだよねー。ルックスめちゃくちゃ良い。

A:(パディは)この2枚目がアイルランドだけで15万枚とか売れたらしいけど、最初のアルバムとなると、4、5年前かな? 新人のわりには、かなりあいだが空いているよね。他にもマンディとか。彼も(パディ・ケイシーと同じ)デビュー盤はソニーだったんだよね。

MP:あ、そうなんだ。今は、インディーズですよね?

T:、マンディは日本盤でたよね。

A:もっていると思う。日本のソニーから出たはずだけど。(『ジェリー・レッグス』)

MP:日本盤でてたとは知らなかった。これなんか、もう絶対に出してもいいと思うんだけど・・パディ・ケイシー。今、だってオリンピア、ソールドアウト4日間とか、そういう世界ですよ、この人。

T:えっ、そんなに人気あんの? ダミアン・デンプシーよりも?

MP:ダミアン・デンプシーは、ダブリンだから売れるんですよ。海外なんか絶対に無理。

T:実は観てるんだよ、ダミアン・デンプシーを。1月のケルティック・コネクション で、ビリー・ブラッグの前座で出たんだ。ライヴも良かったよ。 「Ghosts Of Overdoses」が特に印象に残ったな。彼の歌の内容も社会派だからさ、ビリー・ブラッグをすごく尊敬していて、前座できてうれしいって何度も言ってたよ。

A:そういえばインタビューでも、ボブ・マーリーとディランなんが好きって言ってたもんなぁ。風貌もちょっと厳つい感じだよね。

T:で、ライヴはまるっきり弾き語りじゃなくて・・ほら、あいつ、日本にも来たスライドのイーモン・デバラ。あいつが途中からサポートで出てきて、ホィッスル系とかバウロンを弾いて、良かったよ。でも、パディ・ケイシーの方が人気あんの?

A:メテオ・アワードだっけ? アイルランドのグラミー賞みたいなやつ。あれで今年のベスト・アイリッシュ・メイル・アーティストに選ばれたの、パディだった。

MP:あとルックスがいいもの! 可愛いもの!

A:KINKI KIDSの堂本なんとかをもっと可愛くした感じ?

MP:剛くんの方!!

T:なるほどね。

A:で、実際アルバムの内容もいいしね。まあ、コマーシャルな音作りなんだけど、

MP:実際デクラン・オローロクは、パディのバックをやっていて、デビュー前から人気が出た感じ?

T:そんなにキャリアあるんだ。今回の対談、僕は勉強不足で役に立たないなあ。

MP:五十嵐さん、ルカ・ブルームと仲良しじゃないですか、語ってくださいよー。ルカ・ブルーム。

T:いや、会ったときに話が延々盛り上がっただけで、別に親しいわけじゃないよ。でも、ルカはいいよね。あ、そうそう、その前にダミアン・ライス問題だけど・・・アイルランドではよく売れたんだよね、これ?

MP:これ(『O』)はアイルランドですごい店頭に並んでいるのを見ましたよ。私も持っている。

A:アメリカ、イギリスでもかなりウケてたし。

T:これ、「B SIDES」ってのを買ったんだけど、あれを一緒にした2枚組かー。

A:DVD付きのがあるでしょ? これは最近新しく出しなおしたやつ。

MP:私が持っているのは布のやつだよ。

T:アカデミーやゴールデン・グローブで何部門もノミネートされたマイク・ニコルズ監督の映画「クローサー」。あれを観たら、みんなダミアン・ライスにもう絶対夢中になっちゃうよ。冒頭でナタリー・ポートマンが歩いてくるんだけど、そこに流れちゃうんだよ。ダミアン・ライスの「Blower's Daughter」が。もうたまらないよ。そしてエンディングのクレジット・ロールでもまた流れるのよ。

A:ルックスもいいよね。女性が好きそうなタイプっていうかさ。

T:日本盤も「クローサー」の公開に合わせて、ワーナーで再発売しますよ。そういえば、去年最近クリスティ・ムーアとデュエットのシングル出したの、知ってる? 「Lonely Soldier」という反戦歌で、6月にあった反戦、反ブッシュ・コンサートに合わせて、ダミアンのレーベルから限定リリースしたのよ。

A:トーリ・エイモスの新譜にも参加してたよね、ダミアン・ライス。

T:あ、入ってた、入ってた!

A:アーニー・ディフランコとも去年だか、ビルマに一緒に行ったらしいよ。民主化運動のキャンペーンかなんかで。引っ張りだこだね。

T:そういやさ、トーリ・エイモスって日本で全然ダメだね。アメリカと日本での人気の差が一番激しいアーティスト。

MP:でもファーストとか日本でも凄かったと思うけど。ライヴ行きましたよ。

T:人がはいりすぎて、息苦しくて倒れた人が多かったライヴ? だから日本はほんと1枚目で終わったんだけど、向こうはもうカルト的な人気で、ファンの熱意度が違うから。一時期はファンのウェブサイトの一番多いアーティストと言われてたからね。

A:Eベイでも昔のシングルは高値が付いてるし。

T:全然、話それたな。

MP:まぁ、ダミアン・ライスは、これからきますね、そしたら。

T:ここ2年で、以前から活動していた人も含めて、男性シンガー/ソングライター、一気にブレイクって感じじゃない? デイヴィッド・グレイの成功があって、今のダミアン・デンプシーとかパディ・ケイシーがでてきているんだと思う。

A:ブライアン・ケネディは?

MP:なんで日本盤でないんだろー(怒)

T:ブライアンはねぇー。女の子のファンがねぇ・・。だって圧倒的に女性ファンでしょ? だいたいコンサート終わると客席が濡れている、って話だからね。

A&MP:はははははははは。

T:この人、ゲイなのに、女の子に人気あるっていう・・・。不思議な感じだよね。

MP:でも、可愛いもの。

T:ブライアンはケルティック・コネクションに出ててさ。コンサートは何かと重なって観れなかったんだけど、例のフェスティヴァル・クラブに来て、2曲しか歌わなかったんだけど、“ブライアン・ケネディ!”って紹介がされたとたんに女性客が“キャーーーーーーーーッ”ってさ(笑)

MP:ブライアン・ケネディは、いいよねぇ。でも日本ではスイートマウス以外、出てないっていうひどい扱いだよねぇ。

T:あれ、出てなかったっけ?

A:1枚目は確か出たよ。

T:あ、青いやつ。

A:あれだけかな、出たの。

MP:あ、髪の毛長い時のやつね。あれ出たんだ。

A:オレ、リバプールで見たことあるんだ。スザンヌ・ヴェガの前座だったんだけどね。アコースティックでやって、最後は二人で一緒に歌ったりして。

T:へぇー。

A:スザンヌ・ヴェガ、なんだかしゃべりでめちゃくちゃウケてたなあ。英語がよくわかんなかったんだけど、彼女って結構おしゃべりじゃないですか?

T:うん、うん。そうだよ。

MP:あ、そうなんだー。

A:めちゃくちゃギャグ飛ばすでしょ、ブライアン・ケネディもステージで大笑いしてたもん。

T:そうそう、そういえばシンガー/ソングライターってさ、ひとつ問題なのは、日本に来てしゃべっても通じないでしょ。まぁギャグはいいとしても、しゃべっている事が次の歌につながるところとかあるから、そこが惜しいよね。それはもう英語圏で観た方が全然おもしろいんだよ。日本にきたら、黙々とやるだけだったりもするからさ。けっこういるよね。日本にくると黙々になっちゃう人。日本人も英語が一言もわからないわけじゃないから、客席とコミュニケーションをとる努力を本国以上にしてほしいよね。ところで、ブライアンの今のバンドは、お宅のメアリーのところのビル・シャンリーとジェイムズ・ブレナハセット、そしてリアム・ブラッドリーとかだよね。

MP:ポールのバンドも今度その三人なんですよ。

T:それでリアムが忙しいから、ドーナル(・ラニー)の新バンドは、フル・メンバーでなかなか活動できないんだな。

MP:ドーナルの新バンドってどんななんですか?

T:ドーナル、マーティン・オコナー、カハル・ヘイデン、リアム・ブラッドリー、グレアム・ヘンダーソン、ローシンなんとかっていう・・シャロンの前のアルバムに入ってた女の子・・・お父さんがエジプト人だったかな? お母さんがコネマラ出身で、彼女自身はゴールウェイ出身というシャーンノス・シンガー。ベースはいないんだ。アイリッシュ・ミュージックにリズム・セクションを入れるのは本当に難しくて、ドーナルはクールフィンのフィオンやロニーにも100%満足できなかったらしいよ。
よくやっていたと思うけどね。ドラムズもアイリッシュ・ミュージックに合ったドラム・キットを開発するのが課題だと言ってた
ね・・・ま、それはいいとして(笑)。

MP:しかしまずは日本のソニーがパディ・ケイシーを発売してくれなくちゃダメだな。

A:そうだよね。一番パディ・ケイシーが日本でも受けそうな気がする。デヴィッド・キットとかはね、ちょっと毛色が違うけど面白いよ。最初のは宅録風でフォークトロニカっぽかったけど。

MP:あ、それ知らない。

A:この人もたしかダブリン出身。去年出したアルバムはカバー集で、シン・リジーやソニック・ユースの曲をやってるんだよ。彼もメテオ・アワードのノミネーションの常連だよね。

T:だいたいこのヘンってみんな20代?

A:そう、みんな20代。

T:少しキャリアがあって20代後半くらいでしょ? だからこのへんの世代が一気に出てきたんだね。

MP:でもデクラン・オローロクなんか、歌詞とかとても20代に思えない。39才の私がこんな若い子の歌詞に感情移入してどうする、って感じだけど(笑)

A:ポール・ブレイディ絶賛ってやつでしょ? エディ・リーダーもコメント寄せてたね。彼女はすでに自分のライブでも取り上げているようだし。たしかシャロンのところでCDが出ている。(Daisy Label)

T:なんだ、だったら、出せばいいじゃん?

MP:いや〜、今だしても売れないでしょーー。とにかく1日でも早くこのレーベルが力をつけてくれれば、こういうのもやれるんだけど!!

T:シャロン呼ぶ時、前座で呼べばいいじゃん?

A:ルナサの前座でやったジョン・スピラーンみたいなかたち?

T:あれはあれで良かったよね。ジョン、この前ケルティック・コネクションズでまた観たよ。フェスティヴァル・クラブで4曲くらいやったかなぁ。彼はすごく個性あるからね。ギャグは相変わらず「So far so good」って一緒だったけど(笑) ジョンは次が3枚目だから勝負だね、3枚目って難しいよね。

MP:しかしやりたいよなー。デクラン・オローロク。だいたいプロダクションが弱いのが問題なんだよなぁ! こっちの方(パディ・ケイシーなどメジャー音源)だったら、それでもお金かけてビック・プロダクションで作っているからいいけど、デクランはシャロンのところでちゃっちゃって作っちゃっているからなぁー。

T:プロデューサーは誰なのよ? お金かけなくてもいいものはできるでしょー? アイルランドはミュージシャンうまいわけだからさ。

MP:本人いいんだけど・・あと声が低くて特徴あるから・・あの声に好き嫌いがでちゃいそうだよなぁ。でもギターもうまいんだって。ポールが褒めてた。

T:しかしこのへんとかって歌詞はどうなの? ダミアン・デンプシーは社会派であるとして、このへんは?

A:社会派ではない、ね。自分の主張はあるんだろうけど、声高には叫ばない。

T:でもさ、アイルランドのシンガー/ソングライターってさ、アイルランドの国の性格上さ、別に特に社会派じゃなくても絶対にそこにアイルランドの社会情勢というものが反映してきてたわけじゃない? 内戦もあれば、経済も貧しかったわけだし。イミグレーションの問題とか。

MP:そういう意味では、あんまりアイリッシュっぽくないかも。

T:この世代は・・今20代ということは・・10代は90年代、ケルティック・タイガーの最中か。国のイメージがもう良くなっている時期に育っているんだな。

MP:せめてデクランはルックスが良ければなぁ。パディ・ケイシーは可愛いからなぁ。やっぱり若い子を売る時はルックスがすごく大事だよな。

T:まぁ、いいにこしたことはないけどね(笑)。

MP:ブライアン・ケネディも日本で売れないかなぁ。出す方法ないかなー。

A:彼の新作、まだ聴いてないんだけど。

T:一番新しいやつって、ライヴ盤だよ。

MP:あれ、カヴァーじゃなかった?

T:去年の暮れに出たライヴ盤があるよ。

A:1曲目がポール・ブレイディの「アイランド」だったはず。ジュリエット・ターナーとのデュエットなんだよ。ほかにもエディ・リーダーやラルフ・マクテルが参加している。

T:ジュリエットはブライアン・ケネディの前座に使ってもらって人気がでたから恩義があるんだよな。

MP:ジュリエット・ターナー、ライヴどうでした? 

T:悪くなかったよ。フェスティヴァル・クラブで3曲くらい歌ったの聴いただけだから、判断できないけど。ライヴということでいえば、エレノア・マケヴォイがとても良かった。ギターもうまいし、彼女はミュージシャンシップ度が高いよね。鮮やかなパフォーマンスだったよ。最近のレコードはちょっとジャズっぽかったりもするね。ピアノのやつとコンビ組んで出したでしょ。

MP:(荒田さんのリストをみて)ポーリー(・スキャンラン)はね、ドナ(・ヘナシー)とやるんですよ、ドナとデュオ。だからドナはルナサをはなれた。なんかもう二人でやるバンドのバンド名ついてましたよ。

T:ドナも歌うの?

MP:昔歌ってた、って言ってたから、歌うのかも。

T:自分で曲書いて歌うんじゃないか?

MP:ギターやってる奴って、「実は歌ってました度」高いですよね。誰にも言わなかったとしても(笑)。しかしこのポーリーのアルバムは、ビッグ・プロダクションですよね。

T:(ポーリーのアルバムをプロデュースした)ジョン・レイノルズって、シネイドはもちろんあるとして、他に最近誰やってたっけ?

A :それこそ、ダミアン・デンプシー。

T:そうそう、そうだ! あれはジョン・レイノルズだった。

MP:ダミアン・デンプシーは、シネイドの事務所にいたんだよね。それもあるんじゃないですか?

T:でもさ、ダミアン・デンプシーは、ここまで作りこんでいないんじゃない? まぁ、歌の内容が社会派で、焦点を歌に絞るというねらいがあるんだろうけど。

MP:でもポーリーのこれ(Red Colour Sun)は、すっごい作りこんでいるよねー。でもウチのホームページに置いているけど、全然売れないけどね。私の紹介が弱いからかな、やっぱ(笑)。

T:ケルティック・クリスマスの時、結構売ったんじゃなかったんじゃなかったっけ?

MP:あのときは、200〜300枚、本人が持ってきて、会場でほとんど売って、余ったやつを持ってかえすの可哀想だから私が買ってあげたの。それをタワーの渋谷にまわしたり、とかしたんだけど。ポーリーは歌はいいんだけど、ちょっと太っているのがなぁー。

A:(笑)。ジェマ・ヘイズはどう? 彼女、カワイイいけど、性格いいの?

MP:会ったことない。

T:ジェマ・ヘイズも次のアルバム、そろそろ出てもいいなぁ。前のやつは結構売れたからなぁ。あっちで・・英米でだけど。アメリカ盤が遅れて出て、ちょっと曲順とか変えてあったなぁ。まぁ、メジャー・レーベルは内輪でプレッシャーもあるだろうな。とりあえず英米で売れているものを出せ、と(笑)。 そういやルカ・ブルームは、今週くらいにアイルランドで新譜が出るんじゃないか。

MP:ルカ・ブルームいいよね、性格も素敵だし、かっこいいし〜! あぁ〜、やりたい〜なぁ〜。

T:ルカはいいよね、歌もギターもいいし、ソングライティングもいいしね。キャリアを重ねて磨かれてきたものがあるよね。

A:今、自分のレーベルでしょ。話次第でやれるんじゃない?

T:ルカだったら、トラディショナルなアーティストと一緒に呼ぶこともできるでしょう。それこそルナサと一緒とか。トゥナー・フェスで、ダヌーのメンバーと一緒にやってたよ。そういや、ダヌーが日本に来たことがないってのは問題だよなぁ。

MP:レコード会社がダメだもんなぁ。でも、そんな事でバンドの運命が決まっちゃうってのは、良くないですよね。

T:なんかとりとめもない話になってきたねー。

MP:まぁ、あとで適当に、まとめますわー。(と言って、実は起こしたままで、まったくまとめてません/笑)

T:ま、新しい世代のアイルランドのシンガー/ソングライターが出てきたんで、今、みんな注目しててね、それで触媒になったのがデイヴィッド・グレイの大成功ってことだよね。近年の問題はさ、みんなアメリカに目が向いているということだった。ナッシュヴィルでの成功を夢みる、って事だったんだ、多分。アイルランドのマーケットは小さいから、成功しても限られている。やっぱりアメリカってのはひとつの手段だよね。しかし、この10、20年で、国自体の経済成長とアイリッシュ・ミュージックの世界的な成功のおかげで、こういう連中がアイルランドにいてアイルランドでシンガー/ソングライターとしてやっていける、という事になってきた。彼らはそんなに人に曲を提供したり、とかしてないわけでしょ。やっぱり昔はメアリー・ブラックにカヴァーしてもらおう、とかそういう事だったわけですよ。それが、今では自分の足で立っていける。

A:最近アイルランドでは、こういう新人のアーティストを国内やイギリスのレコード会社やパブリッシャーに売り込む作業を手助けする組織ができてきたらしい。記事がホットプレスに出てたよ。FMC(Federation Of Music Collectivesの略称)とかいう名前だった。たとえばザ・スリルズなんかは彼らの援助でデビューできたらしい。

MP:アイルランドはソングライター大事にしますよね。税金とらないって言ってたもん。パフォーマーは払わなくちゃいけないってメアリーがなげいてたけど(笑)。

T:それはけっこうな話だよね。

MP:女性陣は、今、注目はやっぱりポーリーかなぁ。

T:彼女は曲書いたっけ?

MP:ドナとの共作があったとおもう。あとウイリー・ネルソンのカヴァーとか、トラッドも歌うけど。

A:昔、「ザ・コミットメンツ」に出てた娘で女優の、…名前の発音がちゃんと読めないんだけど(Bronagh Gallagher)、ソロ・アルバムを出したらしくて、それにもジョン・レイノルズとブライアン・イーノが絡んでいたよ。

T:マリア・ドイル・ケネディじゃなくって?

MP:そういやトレヴァー(・ハッチンソン)がマリア・ドイル・ケネディはまたレコーディングしたって言ってたなぁ。

T:彼女は女優として成功してますからね。だんなのキーラン・ケネディはどうしたのかなぁ。

MP:あ、いましたね、そういうの。あ、そういえば、キャッテル・ケイネックどうしたのかなぁ! 彼女よかったですよねぇ!

T:おぉ! キャッテル・ケイネック! ほんとそうだよねーーー。彼女ってどこ出身だったけ? どっかから移住してきたんじゃなかったっけ?(ブルターニュ産まれ、ウェールズ育ち、ダブリン在住)

A:たしか去年新作を出してたよ。インディーズだったと思うけど。以前、日本盤もワーナーからちゃんと出てたよね、2枚。五郎さんが取材してなかったっけ。

MP:あ、そうそう、荒田さんにあれ、聴いてもらったの! タラ・ブレイズ

T:ウェブサイトみたよ。彼女なんてバンドにいたんだっけ・・ケイデーか。

A:音はコアーズに近いかも。

T:そういや、アイルランドと関係ないけど、ナタリー・インブルーリアも新作でるみたいよ。ゲイリー(・クラーク)は今回も間違いなく曲を提供しているみたい。ブー(・ヒュワディーン)はどうなのかな。

MP:ブーのメーリングリストで、ブーの曲が、どうやらシングルのカップリングになるだ、ならないだとか騒いでた。

T:なんか女性の話になったな。(今日のテーマは)男だけかと思ってたけど。女性って他にいなかったっけか。

A:オレもポール・ブレイディと男のシンガー/ソングライターと思ってたよー。まだいたと思うけどねー。

T:まぁ、でも女性は主に解釈歌手だよね。メアリーとか、モーラ(・オコンネル)とか。

A:ジョシュ・リッター、どうですかね。今年、V2から再リリースされたけど。

T:いいですね。

A:彼もアイルランドで火がついた。もともとアメリカの歌手だけど。

MP:アイルランドで火がつくってあるんですかね。デイヴィッド・グレイもそうだけど。

T:アイルランドの音楽ファンは耳が肥えているとか?

MP:ま、でもけっこうくだらないものが流行ってたりもしますけどね。

T:そうだよな!!(笑)

A:そいうやなんでしたっけ、あれ、五十嵐さんがメールで書いてた、ラフ・トレードから出たの…。エミリアナ・トリーニ

T:あぁ! いいよね。イタリア系のアイスランド人。ビョークに続けってか?! (笑)前に一枚出してんだよね。メジャーでヴァージンとかそのへんだったよ。エレクトロニカにムーディな感じの・・今度のは全然アコースティックな感じ。あれはラフ・トレードのモグ(カーラ・ディロンのマネージャー)に、あなたも売り込まれたでしょ?

MP:まだ一回しか聴いてないけど、いいですよね。3回聴いたら、絶対に好きになりそうだから、止めておいてあるんだけど。

T:そういや、ポリー・ポウルズマってロンドンの女性シンガー・ソングライターは日本盤でてんの?

A:出てませんねー。

T:なかなかいいんだけど、あれって日本でもそこそこ評判?

A:そうですねー。

MP:そろそろ焼肉いきません?(お腹がすいて意識もうろう)

T:あと一つだけ! おもしろいのは、アイルランドで売上げ的に人気の一番あるシンガー/ソングライターって間違いなくデイヴィッド・グレイなわけだけど、女性って誰だと思う? これが明らかにナンシー・グリフィスなんだよね! しょちゅうツアーして、半分住んでいるしね。

MP:ゴールウェイに家持ってますしねー。しかしカントリー系はアイルランドはすごい人気ですよ。メアリー・チェイピンとかもポイント(5,000人集客する100万人都市ダブリンではドームクラスの会場)でやってますもん。まぁ、デイヴィッド・グレイはカリスマチックですよねー。あぁ〜、いつか一緒に仕事できないかなぁ!!!

T:あとアルバム2枚くらいでメジャー落ちしないかねぇ。

MP:スクイーズだってマジソン・スクエア・ガーデンでやってたんでしょ?

T:おぉ、そうだ、そうだ。

と、なんかまとまりませんが、この後3人は、焼肉屋に流れていったのでした。

あまりにまとまらなかったので、お二人にそれぞれアイルランドの男性シンガー/ソングライターのアルバムから10枚選んでいただきました。
 

アイリッシュ・シンガー・ソングライター ベスト10枚

荒田セレクト
1. Van Morrison / Saint Dominic's Preview
2. Paul Brady / Say What You Feel
3. Damien Dempsey / Shot
4. Shane MacGowan & The Popes / The Snake
5. Damien Rice / O
6. Paddy Casey / Living
7. Luka Bloom / Between the Mountain and the Moon
8. Andy White / Teenage
9. Mark Geary / Ghosts
10.David Kitt / Square 1

五十嵐セレクト
1. Van Morrison / Astral Weeks
2. Paul Brady / Hard Station
3. Christy Moore / Ride On
4. Ron Kavana / Home Fire
5. Andy Irvine / Rude Awakening
6. Luka Bloom / Riverside
7. Andy White / Andy White.compilation
8. John Spillane / The Wells of the World
9. Damien Rice / O
10.Damien Dempsey / Sieze The Day

ついでに野崎@THE MUSIC PLANTセレクト(5枚しか選べませんでした)
1.  Paul Brady / Say What you feel
2.  Van Morrison / Healing Game
3.  John Spillane / The well of the world
4.  Kieran Goss / New Day
5.  Decklan O'Rouloke / Since Kyabram
*David Grayの「White Ladder」を死ぬほどいれたかったのですが、彼はアイリッシュじゃなかったのでした。

 


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