OAK TREE RECORDS 対談ページ 9
T:五十嵐 正  A:荒田 光一(敬称略)
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第10回:グレン・ティルブルック来日公演を振り返る


MP:続いてグレンです。

T:僕が1日目、2日目行って、荒田くんが3日目、4日目行って、最後は二人とも見ている。だから2人合わせれば全部見ているんだよね。

A:グレンも5日間、同じ場所でやるってことは、滅多にないだろうね。

T:ないだろうね。普通だったら、せいぜい2日くらいだよね。

MP:興行的にみたらプロモーターも経費押さえるために日程少なくするのが普通だもん。

T:今回1日目では・・・

A:1日目はリクエストなしでやったから。

T:リクエスト・ボックスというか、グレンの言葉をかりれば「Suggestion Box」なんだけどさ、あれが効いたので、2日目以降からリクエストをたくさんやってくれたよね。だから、普段は聞けない曲をいっぱいやった。良かったと思いますよ。1日目は、いつも通り思い付くままにやったわけだよね。

A:「Slightly Drunk」で始まったのがいいよなぁ。

T:グレンとロビンが熱心に話してたことの一つに・・・最後の日に飲み屋でさぁ、ロビンが訊いたんだよね、グレンに。「セットリストはどうやっているんだい」って。そしたらグレンが「セットリストはない!」と。ロビンは驚いてたね。もちろんロビンだってしょっちゅう曲を変えたり、突然やったりってあるけど、それでも一応は準備するわけで。一切ないってのは、ちょっと驚いてたよね。

で、「じゃ、どうやってやるんだ?」ってロビンが聞いたら、グレンは「時間見るだけだ」って。で、「この時計は大事な時計なんだ」って腕時計を見せながら言ってた。

MP:10ポンドで買ったって言ってましたけどね(笑)。あと、この日は「Goodbye Girl」をまともにマイクを通してきけて、なんかいいなと思った。

A:あー、そっかー。そうだよね。

T:「Goodbye Girl」は2部の頭にしたのか。そうだったね。

A:今回場内を歩き回るのってあったっけ? 最終日はやってたけどね。

T:プラグぬいて、一応行きましたよ。

A:13、14日はそれがなかったかもしれない。

MP:あー、そうだったかもしれない。やっていいよ、とは言っておいたんだけどね。

A:混んでたってのはあるかもね。

MP:あ、そうかもしれない。あとはね、外に出るんだったら、裏が住宅街だし、やるんだったら最終日だけにしなよとは言ってあった(南青山マンダラさん、ごめんなさい)。でもやらなかったね。

T:この前、ネット検索で見つけた誰かの日記によると、97年くらいから外に出るのをやっているらしいね・・・ロンドンの話なんだけど、どこでやったって言ってたかなぁ。どうやらトッテナム・コート・ロードの近くのパブから、ソーホーまで行ったらしい。

MP:けっこう距離ありますよね。

T:で、パブかクラブかに入っていったら、グレンは入れてもらえたけど、客は金払わないとダメだって言って入れてもらえなかった。で、グレンがまた出てきて・・・なんてのを読んだよ(笑)。しっかし、ソーホーでも北の方だろうけど、それにしても結構な距離を歩いたわけだよね。

MP:しょうがないよねぇ、グレンは。人を喜ばせることだったら何でもやるんだよね。そうそう1日目はトイレ休憩なんてあって・・・

A:突然なわけ? なんの前触れもなく?

T:そう。「ちょっと待って」って言って。

MP:トイレ近いからね、あそこ。

A:で、お客さんは?

T:シーンと待っているだけ・・・そういや、この日しかやってない曲もあるよね。「Hot shaves 〜」とかガーシュインとか・・・ガーシュインは他の日もやったか。ちょっとジャジーなギターを弾けるところを見せたって感じだよね。あと「Voodoo Chile」も近年よくやるけど、今回はPeter Greenの「Oh well」が良かったよね。

A:「THIS IS WHERE YOU AIN'T」をやっているね。僕は聞けなかったけど、この日だけじゃない?

T:そうだったけ? あ、今回はどっちかっていうと「Parallel World」をよくやっているんだよね。

MP:「Parallel World」はずっとピアノで練習してたけど、ステージでは、とうとうやらなかったね。

T:「Cash machine」は、やったっけ?

A:やった、やった。

T:で、新曲「Melancholy emotion」をやったんだよね。そういや本人は初日がイマイチだったって言ってたじゃない? 2日以降はリクエストがあって、楽しかったんだけどって・・・。

で、ほら2日目だったっけ、イギリス人の友だちが来てたでしょ、で、みんなでご飯食べた時に話題にあがったことなんだけど、グレンのいいところってやっぱり客とコミュニケーションできるって事だと思うんだよ。音楽を通してってのはもちろんだけど、ステージ上のパフォーマンスとしてもね。言葉が通じなくてもグレンは本当にフィジカルな表現、体の動きとかでもすごく頑張るし。それで今回日本語を書いたスケッチブックとかあったわけだけど、あの時も、もう少し日本語覚えてなんとかしようかとか、あったわけじゃない?

でも、その話題になった時に、洋子ちゃんが、それはいいんだけど、もっと音楽のフロー[流れ]を大切にして欲しい、って話になったわけじゃない?  で、妥協案として、たとえば1部は話も交えてMC多めで楽しくして、2部は音楽のフローだけで行ってほしい、みたいな話になったじゃない? でもさ、さっきの話で、ロビンが驚いていたように、グレンはセットリストもなしで時間だけでやっているけど、本能的にそういうフローは作れるアーティストだと思うわけ。

MP:あぁ、なるほどね。

T:例えば1日目の1部の真ん中で「Oh well」やって、2部の真ん中くらいで「Voo Doo 〜」をやるのはさ、ギターを聞かせる曲をやりたいってのもあるけど、割とやっぱり全体を見るといい位置に置いてあるんだよね。ブルース・ベイシックの曲って彼の曲にはないから、ちょっとしたアクセントになる。上手く入れているよね。だから本能的に流れを作るってのはできる人だとは思うわけ。自然にやってってもね。

MP:そうね、ほんとうにそう。

T:ところが、2日目以降はリクエストをかなり入れたので、そういう流れってのは、いつもの感じとはずいぶん変わっちゃったよね。最終日は盛り上がり的には一番盛り上がったんだけど、前半に特にリクエストをいっぱいやったんで、そういうフローが・・・普段自然にできることが、そのうえDVDとか電話とかあったから、バタバタバタッとしちゃったよね。そのヘンがちょっとご不満なんでしょ?(笑)

全員:はははは。

MP:いやいや(笑) まぁ、でも主催者としては、そのポイントが、本人と意見があわないんだよなぁ。その、しゃべらない方がいいってのね。あとね、お客の反応がよくないからねー。せっかくしゃべっても、しゃべればしゃべるほど滑っちゃうのが恐い。

T:みんな、おとなしいからさぁ。

MP:例えばグレンがステージからお客さんの写真撮っているのに、黙って座っているのには、ちょっとビックリ。手くらい振ってあげればどうですか、って思わず言っちゃったけど(笑) で、その割に、ライヴが終わると、グレンにああ言えば良かったとか、リクエストすれば良かったとかメールでもらったりするんだわ。だからきっとみんな愛情表現が下手なだけなんだよね。

T:まぁ、今回僕が意見を出してリクエスト・ボックスをやったわけだけど、その理由の一つが、日本人はシャイだから自分でリクエストとかシャウトできないって言うのがあったからね。でも、あれだけ熱心なファンがいて、雰囲気もなごやかだしさ、あんなに狭いヴェニューでさ、もうちょっとみんな声出してほしいよね。

MP:でさ、グレンはその静かさに反応しちゃうから。本人をハッピーにさせるためにも、もっといいアイディアないかなぁ、ホント。

T:前回のスターパインズよりも、ずっと小さい小屋なんだからさ、客がもっと声かけたりして、もっとやりとりがあるなごやかな5日間になると思ってたけど、静かだったよね。

MP:例えば5日目のクリスのDVDとの共演については、グレンは受けたもんだから「すっごく楽しかった」って言って、「あれは2部にすれば良かった」とか言っているわけよ。確かにあれは分かりやすいエンタテイメントだったかもしれないけど。あれこそ2部ではやってほしくないネタだと私は思うわけ。

だからお客さんの影響は大きいよね。もっとも私がとやかく言うことじゃなくて、お客さんとグレンが望んでいることが一致すれば、それが着地点なわけなんだけど。

T:で、初日が終わってからピアノを使うか、ということになり、2日目はピアノを用意し・・。で、良かったよね。

MP:「LAST TIME FOREVER」とか良かったよね。

T:あぁ、良かったよねぇ。

MP:でも「JOLLY〜」も、もっと聞きたかったし、「ELECTRIC TRAINS」が1回だけだったのがねー。

T:「ELECTRIC TRAINS」はいいよね。

MP:しかも私がリクエストした・・なんだっけ、ピアノで失敗するし。(「Letting Go」)

A:そうだったけ? 

T:そういえばムーヴのカバーが出たよね。あれって毎回やってんのかね。荒田くん、知ってる?

MP:荒田さんが来た日はやらなかったんだっけ? 

T:いや、荒田くんなら何でも知っているかな、と思ってさ(笑)

A:知らないよ(笑)。やってんじゃないかな。僕は今回聴けなかったけど。

MP:リクエストあがってたよね、確か。

T:じゃあ、きっと誰かお客さんの中でこれをやるって知ってたお客さんがリクエストしたのかなぁ。

A:「Weather With You」(クラウデッド・ハウス)なんかもよく向こうで、やっているよね。

T:日本でもガヴォールの時にやったよね、確か。今回は女性のお客さんがリクエストしたんだよな。ムーヴの曲は、グレンのイギリス人のお友達もね、イギリス人なら誰でも知っている大ヒット曲だって言ってたけどね。

MP:「Untouchable」もあんまりやってなくない?

A:いや、やっているよ、3日目だか4日目もやってたと思うよ。

MP:もう記憶があやふやだー。そうそう「WITH OUT YOU HERE」をやったのは、けっこう大きかったと思う。「DOMINO」の曲なんだけど。

A:あぁ、そうだね。これもリクエストだった?

MP:そう。でも前の来日の時なんかね、グレンが自分で「DOMINO」を即売用に持ってきてたから、「グレン、ここから一曲歌ったら、CDが売れるんじゃない?」って言ったら、「あのアルバムは悲しい時に作ったから、あそこからはもう絶対に歌わない」って言ってたんだよ。
しっかし、ほんとグレン、息子離れができなくて、来日中も、ずーーーーっとオーストラリアに電話してた。(グレンの上の息子二人はオーストラリアに在住。「WITHOUT YOU HERE」はイギリスからオーストラリアに引っ越す息子たちと別れる悲しさを歌ったもの)

A:「Whoユs That」も初めて聴いたような気がした。

MP:意外な効果だったのが「YAP YAP YAP」。

T:皆さんに歌ってもらって、これはいける、と思ったみたいだったよね。3人もファックスが来たんだよね、歌詞を頼んだら。

MP:平日の昼間だったし、実際ネットで探し出してプリントアウトしてファックスできる人って限られてたと思うんだけどね。みんなブログ見ててくれてんだな、と思って。だってブログ書いて、ほんの数時間だったんだよ。

T:みんな、会社で仕事中にやってんじゃねーか(笑)

MP:グレンが嬉しそうだったから、良かった。みんなにも歌ってもらって。

T:あと「Wichita Lineman」とかはリクエスト?

MP:いや、自分でやったんじゃないかな。

T:他になにか13日って変わったことあった?

MP:スケッチブックに「自由に歩き回っていんですよ」ってやつ。あれは確か13日から。グレンが神妙な顔をして言うから、「え〜、大丈夫だよ、別に言わなくても。なんかヘンだよ」って言ったのに「絶対に書いてくれ」って、だだこねるからさぁ。

T:狭くてっていうよりかは、もっとリラックスしていいよってのと、あと曲の途中でも自由に飲みものを買ったりしていい、って事だったと思うんだよね。

MP:そうそう。

A:だからステージ上でも、「ほら、ビール飲みたければ立って買いに行ってもいいんだよ」ってずっとグラス片手にジェスチャーしてたよね。

MP:あれ、可愛かったね。

A:でも、あれイマイチ伝わってなかったと思うよ。

MP:えー! そっかなぁ。伝わってなかったかなぁ。

T:しょっちゅう「乾杯!」とか言っているんだけどね。で、みんな、バーに買いに・・・行かないからなぁ。14日はライヴのあとに行ったチャボロ(・シュミット)のパーティで「ALL OF ME」を歌ったのがかっこよかったよね。自ら「あれなら歌える」って言って歌ってたよ。そして最終日は、ピアノも4曲やったね。ピアノの腕前を見せるために「火の玉ロック」もやったし。ロンちゃんとの新曲、「MORNING DEW」も僕のしつこいリクエストに根をあげてやってくれたしね。

MP:これ、大変だったのよ、(時差で)スザンヌ叩き起こして、歌詞送ってもらったんだから!

A:ラップトップに歌詞は入ってなかったの?

MP:入ってなかったの。実は最近ラップトップを変えたんだって。で、古い方のラップトップに入っているんだーってんで、それでスザンヌに連絡して、送ってもらった。

T:そりゃ、申し訳なかったね。

MP:それで、そのメールで送ってもらった歌詞をプリントアウトする時間がないってんで、ラップトップを会場に持ってきて歌詞を書き写すのを私がやってあげてたわけ。そしたらね、その手書きの歌詞を勘違いしたファンの人が、終演後「その手書きの歌詞下さい」とか言うから、「これ、私が書いたんですよ」って言ったら、「じゃあ、いらない」だって。

全員:はははははは。

T:でも歌詞だけだって未発表だから貴重なのにね。ロンちゃん、ロビンのアコースティック・ギグに来てくれたよね。あのときに聞いたんだけど、どうやらグレンは3曲くらいロンから歌詞をもらって、そのうち最初にできた曲が「MORNING DEW」らしいね。で、グレンは、ロンに(できた曲の)ファイルを送ったのはいいんだけど、ロン側ではうまく開かなくて、まだロン自身は聞いてないって言ってたなぁ。

MP:だから皆さんは作詞者より先に聞いた、と。

T:発表までには少し変わるだろうけどね。「Melancholy Emotion」もこの日はいかにもデモという音でやってたよね。

A:マックで入っているソフト、何だっけ。Garage Bandとか使ってんだろうね。

MP:なんでこんな展開になったんだっけなぁ・・・・あ、思い出した。「MORNING DEW」の歌詞を書きだすためにグレンのラップトップをヴェニューに持っててたんだ! だからいろんな事が偶然の産物なんですよ。

で、「あ、ここにラップトップあるんだから、つないでやろうっかー」ってんでDIつないでみて・・・サウンドチェックの時間もたっぷりあったし。で、これ(「Melancholy Emotion」)やった。で、最終的にそれがDVDかけよう、って事になった。だから全部、偶然。タッドの「MORNING DEW」がなければ、これもなかったし、DVDもなかった。だからタッド、Well doneですよ。

A:「Take Me I'm Yours」にはお客にはもううけまくってたよね。ギター・ソロ「俺の、俺の!!」って受けてたよね。

MP:そのあとロンドンでのライヴでもやったみたい。DVDとの共演。

T:当分新しいネタだな。新ネタか。でも、近年はデュエットものとかで、結構舞台上でやるからね。ナット・キング・コール・パターンでさ(笑)、そこにいない人とヴィデオで共演するってね。で、この日だけは2回アンコールして、最後はトム・ジョーンズだったね。

MP:ほんと、毎回本当にさくっと終わってたね。もっとアンコールやってもらっても良かったんだけどね。しかし思ったよりグレンは動員が悪かった。もっとお客さん来るかと思ったけど。

T:おぉ、今から動員問題を語ろう! ロビンもね。

MP:特にグレンはね。前回の来日は東京だけで450人来てたからね。それが今回減っちゃっているわけだから。

T:土曜日は一杯だったよね。金曜日も土曜日くらい一杯にならないもんかね。

MP:いや、だめですよ。ほんと、グレンに限らず動員は土曜日じゃないとダメ。日曜日でもダメ。

まぁ、グレンに関して言えばね、去年が初来日みたいなもんですよ。その前にブランクがあって、2004年のあれは規模が小さくてプロモーションもできなかったようなもんだから。で、去年はじめてのまともなソロ初来日だったと思うんだけど、あれだけのライヴを見せておきながら、やっぱり初来日以降、絶対に尻つぼみになるという日本のマーケットの傾向があるよね。これが伝統音楽系だとしっかり観客動員が毎年伸びていってくれるんだけどね。そしてどんなに良くても毎年呼んじゃいけないって外タレの鉄則。そういうことかな、と思って。

実際なんでアルバムもないのに今回呼んだかというと、やっぱり今年呼ばないと次のアルバムまで間があきすぎちゃう、って思ったから。でもそれは間違いだったって事なんだよね。

T:いや、でも、おかしいよ。なんであんなに人来ないわけ?

MP:でも私はロビンは分かってた。こんなもんだろうな、って。

T:こんなこと言うと失礼かもしれないけど、日本のR.E.M.ファンの動員にはちょっとがっかりだったよ。みんなで(来日嘆願の)署名をするのはいいよ。代表者が署名持ってきたりして、とっても頑張ってたよ。でもね、実際にピーターが来たときにみんながもっと来ないとダメだよね。ピーターに「あ、僕らはこんなにお客さん待たせているんだ」って実感させないと話にならない。

それとね、シヴィアなビジネスの問題になるけど、MUSIC PLANTだろうが、HIPだろうが、ウドーさんだろうが、ピーター・バックという人が別のプロジェクトで一人で来て、これだけしか動員がなかったってさ、そういう事実として残っちゃうわけだからさ。

MP:一つの記録になっちゃいますよね。

T:そう。そして、そのことが今後いろんなことを決めていく上で絶対に影響するからね。R.E.M.をはじめとするピーターが係わる今後のプロジェクトのアルバムとか来日すべてに影響してくるから。本当にR.E.M.にまた来てほしいんだったら、皆が押しかけて実績を作らないとダメだよね。
で、ピーターだけでもこんなに熱心なファンがいるんだって事を現実に数字で示さないと。

ビジネスは露骨に数字で判断するからね。レコード会社や呼び屋さんの中にどんなに熱心な人がいて頑張っても、前作や前回の来日の数字が悪いと、上の人や営業サイドの人に簡単に却下されちゃうから。だからこそ、実績を作ってつないでいかないと。いかんですよ、ホント・・・というのが一つ。

  あとね、グレンなんかはね、毎年どころか半年に一度来てもいいですよ。

MP:私も、そう。私もほんとそう思う! そう思ったから、今年もやったんだけど。

T:あんなに楽しいコンサートは滅多にないわけだからさぁ。パフォーマーとして最高だし、ギタリストとしても最高でさ、あれだけすごい人はいないと思うよ。一生懸命にお客さんを楽しませるっていう芸人魂もあってさ、やっぱりおかしいなと思うのは・ ・・・「おかしい」っていうと語弊があるかもしれないけど、おかしいなって思うのは、こういうのこそがね、本当のコンサートの楽しみなんですよ。グレンみたいなライヴが、コンサートにお金払って行って楽しいってやつですよ。例えば、今、旬のアーティストが来てデカイ小屋でやるわけよ。で、みんな、こりゃ評判の人だから見に行かなきゃいかん、って事になって、高いチケット買っていくんだけど・・・はっきり言うぞ。今、メインストリームの音楽やっているロック、ポップ、R&B、ヒップホップ、どれでもメインストリームで売れているもの・・・つまらんから!(笑) ほんとにコンサートつまらない。

いや、音楽が良い悪いを言っているわけじゃないの。メインストリームって事になると、決まったことしかやらないから。っていうか、決まったことしかやれんのだ。コンサートがそういう作り方しているからね。音響、照明すべてコンピュータ制御されて決まってるから、曲なんて滅多に変えられない。変えるとしても、変えられる場所ってのがきっちり決まっていて、そこしか変えられない。1曲、2曲しか変えられないわけ。もう、そういう風になっちゃっているんだ。ライヴならではのハプニングが起こる可能性が非常に低いわけよ。

それは個々のアーティストが悪いんじゃなくて・・・まぁ悪いとも言えるけど、そういうデカいビジネスになっちゃっているから。若いバンドで、 出てきたばっかりのバンドでも、もうセットリストとかきっちり決まっちゃっているわけ。これだけやります、みたいな。そのつまらなさ。ヒップホップのコンサートとかもつまらんぞー。30分とか40分と時間も短いし、ぞろぞろと郎党で出てきて決まったことやるだけだよ。

例えばさ、ポール・マッカトニーが最後に来たときって、4人のビートルズ編成のバンドでやるっていうからさ、おっ、その日の気分でビートルズから、ウイングス、ソロと日替わりでいろいろやるんじゃないか、それならいいよなって思ったのよ。そりゃ、ドームでも楽しいかもしれないね、と。でも、それをビートルズ・ファンの知り合いに訊いたらね、「何言ってんですか、五十嵐さん、曲なんか変わらないですよ」と。「ドームでやるとなると、その時点でもう無理ですよ。全て決まっているんですよ」と。

MP:変えたら大変なことになりますからね。あの規模になると演出家もいて、脚本もありますからね。

T:でも、それじゃあ、4人の小ぶりなバンドでやる意味ないじゃん。4人組のバンドだったらね、その日の気分でやるべきだよね。ロビンとヴィーナス3じゃないけどさ。あれやろう、これやろう、ってさ。それがライヴってことだよ。そういうスポンテニアスさとかさ、即興的な部分とか、その日の気分・・・ライヴって言葉が何かって事なんだよ。

そこでさっきのグレンじゃないけど、客が静かすぎると問題だというのはあるんだけど。返したら返ってくる、みたいなさ、そういうのってのは、メインストリームのコンサートでは、非常に希薄なんだよね。もう作られ方が、そう言うことが起こる可能性が非常に低い作られ方になっている。残念なことなんだけどさ。で、そんな大会場でこんなちっぽけな大きさのアーティストの姿か、もしくはスクリーン観ているだけのコンサートに10,000円払うならって事なんだよ。5,000円とか6,000円でさ、グレンとかロビン見た方がよっぽどいいって事なんだよ。その方がどれだけ楽しいか! そう言うことだよ、僕の言いたいのは。荒田くん、どうよ、この問題について。

A:お客さんがそのアーティストに何を求めているかってことで変わってくるんじゃない? 五十嵐さんは海外でたくさんライヴを観ているから、そういうことをとくに強く感じるんだろうけど、パッケージされたショウの対価に1万円って額はそう高くないと思っている人だってずいぶんいると思うよ。

T:でもさ、年収3百万円時代の格差社会の日本だぜ。一般庶民には1万円は大金じゃない?

MP:まぁ、ロビンも、グレンもお客さん来なかったですもんねぇ。まぁ、想定内ではあったけど。ロビンの場合は、新作が3週間延期になったのがやっぱりつらかったかなぁ。

T:まぁ、10月はコンサートがすごく多かったから、みんなコンサートに使える金額も限られていたんだろうしね。どう割り振るかとか、そういう状態もね、分かりますよ、もちろんね。みんなやりくりが大変だってのはね。

MP:あとやっぱり普通の人にはコンサートってのが、あまりに非日常で、ハードルが高いってことだよね。今回来てくれた人の中にも、ものすごい調整して、家族を説得して来てくれた人とかたくさんいる。でもって、私はたとえば連日来てくれた人が、1日だけしか来れなかった人以上に努力をしているとか、そういう事はもちろんないと思う。みんな自分の生活もあるんだし・・

T:そりゃーそうだよ。

MP:でも、そういう人に限ってプラズマ・テレビ持ってたりするんだよな!(笑)

全員:はははは。

MP:そこなんだよね。さっきのチャリティじゃないけど、その価値観を日本人は・・・って話が大きくなるけど。

T:でもグレンとかロビンとかさ、もちろん若い人にも歳とった人にも来てほしいんだけど、ちょっと上の方じゃない? で、そのへんのファン層が行きたいようなコンサートって考えたらさ、そんなに本数も存在しないように思うんだけどなぁ。

MP:あと、まぁ、ウチはホントにプロモーションが弱いよね。それはもう一人でやってて予算もないから、しょうがないんだけど。もう少し要領よくプロモーションする方法を考えないとね。アーティストにもファンの皆さんにも申し訳ない。あとは前にタッドがアドバイスしてくれた、クレジット・カードでの決済を自分のところでやるようにする、とかね、そういうことで、大きく違うのかもしれないしね。まぁ、少しずつやってかないといけないんだけど。そうだ、スパークスとかどうでした?

T:僕は田舎に帰ってたから。よく入ってたみたいよ。日本のバンドとかと一緒に入れてて、5時間くらいやっ たらしい。

A:まぁ、イベント形式の方法だからね。

MP:そりゃ、それで一つの方法だよね。もしかすると、そういう方法の方が人が来るのかもしれないしね。

A:スパークスも今回、彼らだけのコンサートだったら、ON AIR EASTで、あれだけの動員はなかったと思うけど、ファンの見方は賛否両論といったところじゃない?

MP:それは考えられる方法だけど、私は普通にコンサートに行ったら、自分の観たいもの以外は、もう見たくないんだよね。だから前座とかフェスみたいなものは、基本的に好きじゃないんだよなぁ。

T:まぁ、それぞれの出る時間を明記しておいてくれればね、それでいいとは思うけどね。

MP:あぁ、なるほど!

A:スパークスは終わったのが12時だったんだよ。

T:押しまくったわけでしょ?

A:けっきょく押すじゃない、いくつもバンドが出るコンサートって。そうすると結局メインのところはさ、19時スタートで3時間後だったりすれば、もうウチが遠くの人は終演前に自分の終電なわけよ。最後まで見れずに帰ったりする。だから僕も、本来、そのテのコンサートは敬遠することが多い。この歳で、もう立ち見3時間とかムリ。

T:一つくらいすごくいい前座バンドとかアーティストがつくのはかまわないと思うけどね。

MP:なるほどね。まぁ、でもほんとビジネス的には、いろいろ反省点がありますなぁ。

A:プロモーションもどんな風にやっていくか、って事だよね。

MP:お客さんの中でね、「自分たちの世代はどうも行動力がない」なんってメールくれた人がいてね、「で、次は最大の努力をして来ます」って言ってくださって、ありがたい事なんだけど、まぁ、でも普通の大人の生活してりゃー行動力もなくなるわな、ってのは分かるんだよなぁ。

T:あとは、まぁ、東京に来れない人もたくさんいるんでね。大阪は本当は無理してでもやるべきなんだよね。まぁ、ロビンとかバンドじゃ絶対に無理だけどね。

A:リサーチしたんだよね?

MP:した、した。で、名古屋とかからも声があがるんだけど、とてもじゃないけど、何がか実現できるような人数は集まらないわけ。あ、でも、ほら、タッドが話しかけられたって言ってたじゃん?

T:おぉ! そうそう、若者がね。先日、Gラヴのライヴに行ったら、声かけられたんだよ。「ロビンのアコースティック・セットに行きました」ってね。セットチェンジのとき、マイクで話した僕の顔を覚えていてくれたみたいでね、「ロビン・ヒッチコックの会場にいた人ですね」って。若者は明らかに20代だよ。で、エレクトリック・セットの日は来なかったそうだけど、まあ同じ月にそのGラヴとかもあったわけだし、月に何本もチケットを買える状況じゃないだろうし、仕方がないね。でもうれしかったね。すごく良かったって言ってくれた。

MP:あとさ、ロビンの通訳やってくれた染ちゃんが渋谷を歩いてたんだって、そしたら「ロビン・ヒッチコックがさ〜」って言ってすれ違った人がいて、思わず振り返っちゃったよ!って言ってた。

T:それは、しかしすごい確率だよな。

MP:でも、ちょっと勇気がでる話だよね!

A:「ロビン・ヒッチコックがさ〜」の続きが知りたいよね!

全員:はははははは

MP:「客が入んなかったみたいよー」って話題だったりしてね! あと荒田さんが提案してくれた即売を活性化する方法ってのも重要だよね。南青山マンダラは、たしかに即売の位置が悪いんだけど、あれは変えられない。その日のライヴを収録したCDRとかさ(これは権利関係でおそらく日本でやるのは無理)、ツアーオンリーアイテムを作る、とかさ。

T:そこでしか買えないものを提供するのは必要だよね。

MP:ただ、わざわざ作るリスクと時間を考えると、なぁ。

T:やっぱりスクイーズのヴィンテージ柄の何かだろう。

A:たぶんTシャツが一番リスクも少なくやれるものだと思うけどなぁ。ロビンもTシャツあったら、絶対に買ったんだけど。

MP:ロビンは、最初ツアーTシャツは自分で作るって言ってたんだよね。実際、アメリカツアーでは間に合って売っているかもしれない。

A:ロンドンの時とかどうだった?

MP:ロンドンの時は、何か売ってたっけ? 何もなかったと思うけど。マイナス5がせっせと即売してたけどね。

T:ちょうど「ガン・アルバム」が出たばっかりだったしね。せっせとあの二人売ってたよなぁ。

MP:えらいよねぇ。

T:ほんと終わったとたんに、あの二人は出ていってサイン会やるからね。

MP:聞いてほしいんだよね、自分の音楽をね。ミュージシャンはね。

T:まぁ、そういう風にやり続けてさ、R.E.M.も世界のトップ・バンドになったわけだからさ。「Automatic for the People」の頃は世界で間違いなくNo.1のロック・バンドだったわけだからさ。でも最初はインディーからはじめてね、ヴァンに機材と全員が乗り込んで、泊まりも1つのベットに4人が寝たりとか、そういうツアーから出て来たわけだからさ。うん、だから手売りで売ることの重要性とか分かっているんだよね。ピーターはレコード屋にもいたしさ。

MP:えらいよねぇ。

A:R.E.M.って日本盤出たんだっけ? 東芝だったかなぁ。

T:新しいベスト盤? 日本盤出た?

MP:あ、出てたよ、たしか。タワーか何かのニュースで読んだ。昔のやつでしょ?

A:IRS時代のやつ。出てたよね。DVDもあったよね? 僕は見れてないけど。CDは2枚組と通常の1枚ものが輸入盤で出てるでしょ? 日本盤はもちろん後者だと思うけど。

T:でも、あれにサインとかもらっている人いたよね。一応R.E.M.の最新盤だからね。ピーターが写真みて、20年前だよ、って言ってた。

A:R.E.M.のお客さんが2/3くらいはいたかなぁ?

MP:私は半分と観ているね。

A:ふーん。

T:R.E.M.のミクシィのコミュとかは、1,000人くらいいるけど、行きましたとか書いているの、10人もいないよね。80年代から聴いていれば、ロビンもR.E.M.も同じように好きな人は多いと思うんだけどね。もちろん1000人の内、東京、関東に住んでなくって、来るのは絶対無理という人も多いとは思うけど、行けなくても、残念行けませんとか、どうでしたか?とかの書き込みくらい、もっと多くってよくねえか?

MP:だけど、まぁロビンがバンド編成できたとしても、この人数は集められないって事だよね。半分じゃないかな、と思う。勝手な想像だと。

T:あと、R.E.M.ファンに言いたいのはさ、ピーターはもちろんメンバーだから当然だとして、スコットに対する敬意が少ないような気がして。だって12年くらい一緒にやってるわけだぜ? ツアーだけじゃなく、レコーディングにもずっと参加しているし、明らかにR.E.M.の音楽に多くをインプットしている重要人物だぜ? それ以前もアメリカ北西部の・・・・

A:スコットが加わったのって、モンスタ・ツアーくらいからだよね?

T:そうそう。ほんと重要人物。親玉だしさー。もう少し敬意を払えんかね。ほんとビルも含めて長くやっているわけだしさ、ほんとにR.E.M.の3/6なわけだしさ。メンバーと同格に扱ってほしいよ。

MP:うん、だからね、たぶんこう好きなバンドが1つあったとして、そのバンドのバックグラウンドとかを知ろうというその感覚が希薄なんだろう、と思って。

T:まぁ動員の話は、前も話したかもしれないけど、ニルス・ロフグレンが来たときに、スプリングスティーンとニール・ヤングのファンでさ、クアトロくらい一杯になるだろう、と思ってたら、全然ダメだったわけだからさ。1%来ただけで、クアトロくらいは満杯になるだろう・・・ってのは計算上はあるんだけどね。

MP:ほんとピーターがせっかく来てくれたのに、ってのはあるけど、ほんとピーターがロビンのことを本当に好きなんだってのが伝わればいいと思ったから、その点は大成功だった。それがあの演奏をみてわからなかったら、音楽ファンとしては失格だよね。一方マイナス5でのピーターは地味だったよね。なんかどんどん暗いところに引っ込んでっちゃうみたいな。もっともベースだからなんだろうけど(笑) でもあの二人、本当にソウル・メイトなんだって。ピーターとスコット。

T:それ、誰が言ってた?

MP:ミニー。ベスト・フレンドって言ってた。

T:あれ、下手すると、スコットとピーターは、それぞれ奥さんと時間過ごすのより長いと思うよ。ツアーとか長いからさ、ほんと誰よりも一緒にいるわけだよね。

MP:しかもオフの時間ですら、一緒にいるもんね。ちょっと中学生の仲良しさんみたい(笑) 本当にあの姿勢がいいよね。あぁいう自分の好きなことをちゃんと実現するっていうね。だからまぁ、ファンの皆さんにも日頃のルーティン生活に埋もれないで、好きなコンサートにはあきらめないで、来てほしいと思うんだわ。

T:そうそう、R.E.M.がロックの殿堂入り候補になったんで、皆さん、日本で投票権のあるピーター・バラカンさんにお便りを出してお願いしよう! 

A:お便り?

T:オトナマズにアドレスがあるよ。bb@otonamazu.com
(*後でピーターに確認したところ、以前投票用紙が来た年もあったんですが、現在は届いていないので投票権はないそうです。まあ、そのことと関係なく、オトナマズのインターネット・ラジオ日曜日午後1時の「バラカン・ビート」に上記のアドレスでリクエストを出しましょう!)

新宿らんぷるにて
2006.10.31
 
 


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