私とポール・ブレイディの出会いは、結構早く、いや彼の歴史からいったら遅い方なんですけど、90年に入ってからアイリッシュ・ミュージックを聞きはじめた私にとっては、わりと早く知ったアーティストの一人でした。ボシーバンドやプランクシティ、チーフタンズ、アルタンなど真剣に聞きはじめる前から、ポールのアルバムをそろえにかかっていたくらいですから。だいたい、もともとはイギリスやアメリカのヒット曲ばかり聞いていた私にとって、ポールのようなコンテンポラリー系はとっつきやすかったのかも。
一番最初の出会いは、ライターの白石さんがくれた「BOTH SIDES OF PAUL BRADY」というカセットでした。そのカセットは90分くらいのもので、A面に「WELCOME HERE KIND STRANGER」そしてB面に「BACK TO THE CENTRE」が入っていて、当時はいつもB面ばかり聞いてました(笑)。
それから「TRUE FOR YOU」とか、いろいろそろえていっているうちに、当時の某外資系レコード会社がポールの「TRICK OR TREAT」を日本発売する、ということになりました。この作品は、全世界的にプロモーションがかかっていて、某ライターの先生が取材に飛んだりして、かなり強力にプロモーションされてました。ただしAORとして。しかもタイトルは「ロマンチック・ダンディ」という・・ひ、ひどい!・・ポールのこと、まったくちゃんと理解してないにもほどがある、って感じですが、まぁ、大きなレコード会社ですから、仕方ありませんよね。それでそのライターの先生にたのんで、サインをもらったんです。これがポールからもらったサイン第一号! もちろん、それは大事に大事にとってありますよ。
そうこうしているうちに、まぁフェスティバルでご本人のライブをみたり、お酒の席で、ちょっとお話したりする機会があったりなんだりで、ファン街道まっしぐら!でしたね。
だから、まぁやっとご本人が各レーベルの呪縛から解き放たれ、自分のレーベルで「THE LIBERTY TAPES」を発売する、と聞いた時は、本当にうれしかった!! でも、なにせ、この業界きっての超・難しい人物、という噂のポール様。そう簡単にはいかないだろう、と思いつつも、とにかくCDの交渉に正式に入り、そうこうしているうちに、来日が決まり、そして、たまたま私がその数週間後にダブリンに出張する、ということで、マネージャー女史にミーティングをしたいといったところ、なんとご本人も来る、といっている、という!!
いや、もちろん、今まで飲んだりしたこともありましたよ。でもそれは、フレンドリーな酒の席。単に「ファンだ」とか、「あの曲が好きだ」とかいっていればすんだんですから、気楽なもんです。仕事の話をする、というのは、そう簡単なことではありません。
たいてい私は度胸がすわっていて、かなりの大物アーティストに会うといっても、あんまり緊張しないんですが、今回ばかりは、大物、というだけでなく、自分は10年越しのファンで、その人と仕事も一緒にできるかもしれない、というので、まぁーーーー緊張したの、なんの。もー、前の晩は眠れませんでしたよ。ヴァン・モリソンにあえる、といっても、こんなに緊張しないと思います。とにかく大緊張。あぁー失礼があったら、どうしよう。ちゃんとしなくちゃ、とドッキドキ。
実はこの日、早朝から、アコーディオンのデイヴ・マネリィと一緒にラジオに出たりして、私もバッタバタ。ポールは午後からグラスゴーだかロンドンだかに飛ばなくてはいけない、という。昼の少しの時間でも会おう、ということになり、ポール様はマネージャー女史とラジオ局の近くのホテルまで来てくれるという。
デイヴとのラジオを終えて、言われたホテルのロビーで待つこと10分くらい。お見えになりました! 御大が! さっそくポールにワールドカップのマスコットをプレゼント。あぁ、こんなくだらないプレゼントですみません。でも、時間がなかったから、成田であわてて、買ったのよ。そのマスコットはピンクとブルーだったんですが、「ピンクが女の子で、ブルーが男の子用だ!」と言いながら、ポールはピンクの方をマネージャーのリズにあげてました。か、かっこいい! そして免税チョコレート(ほんと、こんなもんばっかりで、すみません)もその場であけて、律儀にも半分、リズにあげてました。とまぁ、緊張のミーティングだったんですが、プレゼントがよかったのか、御大は終止御機嫌でした。
30分ばかり話をしたあと、バイバイしましたが、いや〜、いや〜、いや〜、緊張するもんですねぇ!
でもまぁ、交渉もうまくいって、こうしてCDを売ることができたわけなので、とにかく良かった。ところで、この時、ダブリンでミーティングする皆から「ポールにあっただろ」と言われました。どうやらポールは私がどんな奴か、会う人会う人に聞きまわってたらしいです。あぁ、なんて狭い業界。
いずれにしても、ポールは、ほんとに大好きなんですよ。まずアイリッシュミュージックの歴史上、好きなアルバムを三枚選べ、と言われたら、おそらく「WELCOME HERE KIND STRANGER」は間違いなく、はいっちゃうでしょうね。コンテンポラリーで好きなのは「PRIMITIVE DANCE」です。基本的には全部好きだけど。
ここで、私が個人的に好きな曲の紹介です。
ベスト5はおそらく〜
1. STEAL YOUR HEART AWAY(From PRIMITIVE DANCE)
2. THE LONG GOOD BYE(From OH WHAT A WORLD)
3. THE ROAD TO THE PROMISED LAND(From HARD STATION)
4. HELPLESS HEART(From TRUE FOR YOU)
5. NOTHING BUT THE SAME OLD STORY(From HARD STATION)
といったところでしょうか。
THE GAME OF LOVE、EAT THE PEACH、NOBODY KNOWS、CRAZY DREAMS、DANCER IN THE FIRE、HARD STATION、ARTHUR McBRIDE、THE LAKES OF PONTCHARTRAIN あたりも死ぬ程、好きです。あー、全部ライブでやってくれないかなぁ!! とにかくポールが来日するなんて、夢みたいです。
THE MUSIC PLANT 野崎洋子
(2002.3.17)
ボニー・レイット
「ポールを最初に聞いたとき、まるで長く会うことができなかった古い友人にあったような気がしたわ。それは私にとってはジョン・リー・フッカーや、リトル・フィートを最初に聞いた衝撃のようだった。ポールみたいに私の魂に語りかけてくれるソングライターは他にはいない。プロダクション、アレンジ、そして彼のミュージシャンとしての深さ、すべてが私にとっては感動的に思える。実際メロディのセンスは私が知っている誰よりも素晴らしいわね。こんなこと軽い気持ちでは言えないわ。アイルランドの人たちは、ポールのような素晴らしいアーティストが存在することを誇りに思うべきだし、ポール・ブレイディ以外にポール・ブレイディは存在しないわね」
キャロル・キング
「ポールは信じられないくらい才能のあるミュージシャンであり、彼の歌詞のアイディアは、すばらしいわ。いつも彼と一緒に曲を書くのを楽しみしているの。彼と一緒に書いた作品はすべてとても気に入っているし、彼自身もとてもすばらしい人よ。私にもしそれが任されたとしたならば、ポールを人間国宝として指名したいくらいよ」
カーティス・スタイガーズ
「最初に聞いたのはTrick or Treatだったけど、こんな曲をかけるソングライターが存在するなんて、信じられなかった。ボニー・レイットとエリック・クラプトンのコンサートでポールが楽屋にやってきて、その時にはじめた彼と会ったんだけど、僕は夢中でどんなに彼のファンか、ということを訴えたんだよ。たぶんヘンな奴だと思われたんじゃないかな。それから一緒に演奏したりして、その後、一緒に曲を書くことになったんだけど、これが本当にすごい経験だった。音楽が彼の中から生まれてくる。彼が目をとじて、そして音楽が彼自身を通して生まれてくるんだよ。本当に神様に祝福された、ものすごい才能だと思う。彼はいわゆるアイリッシュフォークの王様として君臨しているだけでもよかった。でも、彼はそれ以上に、ほんとうにいろいろな才能においても、優れていたんだね。僕は“Trick
or Treat”のアルバムではじまって、アンディとのレコードに戻ったんだけど、ほんとにノックアウトさ。一緒に飲むたびに“Arthur
McBride”を歌ってくれ、と頼みこんで、やっと一年後に歌ってもらった。“Nothing
but the same old story”も大好きだし、“ The island”はとても美しいラブ・ソングだ。それはこの残酷でかつ寂しさに満ちている。こんな曲を書けるやつは、本当に才能のある奴だけだ」
マーク・ノップラー
「ポールとは古くからの友人だよ。また一緒に演奏できることをとても楽しみにしているんだ」
(2002.5.9)