ポールを日本にむかえるにあたり、とにかくドキドキの連続でした。まず、ポールは、変人多しと言われるアイルランド音楽業界の中でも、ものすごく難しい人として知られていました。これはアイルランドで一般の人が目にする雑誌にもよく載っていることなので、隠す必要はないと思いますが、その恐怖のエピソードたるや、ほんとに、ものすごい。一緒に仕事をするアイルランド音楽の業界間や、ミュージッシャンに聞いても、話題にことかかない、恐い人だと聞いていました。
でも、実際にこうして、数日一緒にすごしてみると、あんなにダイナミックで、ものすごい集中力でパフォーマンスにのぞみ、なんにでも真剣に取りくみ、そして、あんなに繊細で、人の心をわかってくれる、そんな人には、会ったことがありません。もう、ずっと前からずっとファンでしたが、ますます、大ファンになってしまいました。
ポールのことを思うにつけ、いつものチャラチャラとした「どこで何を買いました。どこで何を食べました」なんていう日本滞在記レポートを書く気には、とてもなれません。
ライヴ、ものすごかったですね。まずアルタン祭りでの彼のパフォーマンスには、本当にヤラれました。あそこにYOU ARE THE ONEを持ってくるとは、思わなかった。ほんとに、ほんとにかっこよかった。HOMES OF DONEGALもよかったけど、あの日は、やはりYOU ARE THE ONEだった。まるで渋谷公開堂に雷が落ちたみたい。電気が会場中走ったと思う。
そして、クアトロのライブ。今、こうして後から思い出すのは、割りと静かな曲の方が多い。もちろんラウドな「Steal Craw」や「Busted Loose」も、めっちゃ格好よかった。「Marridge made in Hollywood」ギターの調子がイマイチで、ポール先生は、ギターにあたってましたが(「まったくこいつは、ぜんぜん言うことを聞かない!」なんてMCで言ってましたね! かっこよかった!)よかったし、前半ではなんといっても、個人的には「Helpress Heart」がベストでしたね。あ、そうそう「Nothing but the same old story」も、かっこよかった。
後半は新作から「Travellin' Light」そして「The Long Goodbye」には、涙がでました。実際、静かな曲は全部泣けました。「The Island」しみたなぁ〜。そして「Follow On」ほんとに感激でした。「Arthur McBride」は、サラっとやってくれたのが、よかった。「Lakes of Ponchart rain」は、あんなにもったいつけることはなかった、とも思います。「Mary and the soldier」は、これまた静かで、ものすごくよかった。それと、最後、キーラン・トゥーリッシュとシャロンとTUNEで終わるよりも、できればもう1曲、ポールの自作曲を、ポールの歌を聞きたかった。一番泣けたのは、アンコールの1曲目でやった「Minute away miles apart」です。
一番新しいスタジオ盤の「OH WHAT A WORLD」は、まだ恐くて、きけません。聞いたら、泣いちゃいそうだし(笑)
と、まぁ、ほんと後遺症に悩まされているわけですが、ポール先生は打ち上げの席で、「この場にいるみんなに、僕は日本は大好きだ、こんなに遠くなければ、また来たいと伝えてくれよ」と私に言うので、私が日本語にして、その場にいた関係者のみなさんに、伝えたんですけど、なんか、そういう細かい事が、今になるとポロポロと思い出されます。
渋谷の町を・・なんでだったかな、二人だけで歩いた瞬間があったんですが、その時、私が「あの曲をやってほしい、この曲が聴きたいなぁ」なんていろいろ話してたんです。「Helpress heart」は絶対やってね、とか言うと、「okay」なんて言ってました。だいたいの曲は「いつもやっているよ」という返事だったんです。実際、その時言った曲は全部やってくれたと思う。「Steal your heart away」は、バンドがいないと難しいんだよ、と言ってました。私が「The Long Goodbye」は、あなたの書いた曲の中でもベスト5に入ると思う」と、いったら、ポールは、すっごくうれしそうな顔をしました。
あぁいう笑顔に、なんかこう、嘘がないんだよなぁ、ポールは。
しかし、ほんとにポールの、パフォーマンスに対する集中度はすごいです。成田についた瞬間から、「クラブクアトロは、どんな感じか」とか、ものすごく仕事の事を気にしてました。長旅でかなりお疲れだったようでしたが。
実際、到着した時のポールは、ムスっとしてて、すごく不機嫌な感じでした。具体的には、ちょっと書けないんだけど、体調が悪かったみたいです。で、たとえば、私が、お疲れのポールの少しでも助けになるように、何かやろうと努力するんだけど、それが、うまくポールの要求にはまったりすると、ポールはものすごくうれしそうな顔して笑うんですよ。その笑顔がめちゃくちゃ良くって。ふだんがムッとしているだけに(笑)。
例えばポールがあまりにも疲れているので「ポール、肩もんであげようか」っていったら、ニッコリ。あれが最初の笑顔だったかな。でも先生は、私の肩もみが気に入らなかったらしく、「もういい」といって、またムッとしちゃったけど。
始めて声を出してポールが笑ったのは、日本に到着して2日目くらい。宿泊していたホテルの1階に結婚式のレンタルドレス屋さんに花婿の衣装が飾ってあったんだけど、それをみて、私が「まるでフランキー・ゲイヴィンの衣装みたいね」といったら、ポールは、「ブッ」と吹き出して、「はははは」と、はじめて声を出して笑いました。あれは、うれしかったなぁ!
まぁ、この滞在中、ムッとされること、怒られること100回、って感じでしたが、なぜか知らないけど、心の交流みたいなのをすごく感じるんですよ。ポールも、こっちのことをすごく分かってくれている。怒られるだけに、壁がない、といったら、いいんでしょうか。すごくポールのことが、近く感じられた。それを「気難しいやつだ」「恐い」と取る人も多いでしょう。でも、私は、全然きにならなかったなぁ。なんてったって、こっちの事を気づかってくれる部分もすごく多いから。たとえば、夜遅くなったりすると、「ヨーコ、もう今日は大丈夫だよ。疲れているだろうから、早く家に帰って休みなさい」なんて声をかけてくれるのもポールなんですよ。でも、私としては、ポールたちと一緒にいれる時間がもったいなくてとても家になんか帰れません!!でしたが。
日本到着の翌日はピーター・バラカンさんのテレビの取材、そして夜、パーティに顔を出し、少し疲れがとれたようでした。ポールはパーティの会場で「いい感じのお客さんだね」とお客さんの雰囲気を楽しんでいました。が、さすがに疲れたらしく、みんなより先に帰る、っていって、先に会場を後にしましたが。
フェスティバルの日。渋谷公開堂でのサウンドチェックで、ポールが歌いだした瞬間。すばらしかった。もちろん本番の方はといえば、もっともっとすばらしかったですけど。
翌2日は、取材日で、朝、まず山口洋さんのラジオにお邪魔しました。山口さんとのドノゴール話で盛り上がり、その後、雑誌のインタビューを4本。記事の掲載については、またここにお知らせしていきます。
取材にかんしても、あんなにすごい集中力で取材にのぞむ人は、いません。そして、ライターの皆さんの質問が、あまりに濃いので、ポールは、ひどく感激してました。それは、もう、ショックといっていいぐらい。
「自分でもこんな事考えたことなかった」とか、「こんな事をいうのは、はじめてた」
昔をふりかえって、あぁ、でもない、こうでもない・・と、インタビューを受けながら、自分の人生すべてを確認していくような感じでした。ときどき30秒くらい、かたまってしまったりもするんです。「難しい質問だ」・・って。インタビュアーの人が「すみません」と言うと、ポールは「いや、いい。実にいい質問だ。自分のためにも、これに答えを出さないといけないんだ」なんて言ってました。
ほんとに、あんなテンションの高いインタビューは、ほんとうに同席したことがありません。
夜は、日本食が食べたい、とポールが言うので、居酒屋さんにいきました。そこでもポールは、すごく丁寧で、自分がきちんと日本食を食べられているかすごく気にしてました。
ひとつ思い出されるエピソード。まずお手拭きが運ばれて、それで手をふき、たまたまそれを取り皿の上にポーンとポールが投げたんですよね。料理が運ばれて来て、取り皿に私がとりはじめたら、「これは(取り皿にお手拭きをおいたこと)は失敗した、お皿をとりかえたい」というので、さすが神経質だなぁ、とおもいながらも、「私のお皿使って」と私が自分のと取り替えてあげたら、ポールはそれも気になったらしく「いや、それはいけない。気になるから、絶対に取り替えなさい」って、まるでお父さんみたいにうるさい(笑)。
また、これは、どう食べるんだ、といちいち、私に確認したり、私が食べるのをみてるんですよ。で、私はテーブルマナーがひどいので、あまりいいサンプルにならないって言ったんですけどね。たまたま私が2本のお箸を両手でナイフとフォークみたいに持って、お豆腐を切っていたんですけど、ふと前をみたら、ポールも同じようにお箸を使っているのをみて爆笑(笑)。あとポールは、お刺身が大好きなんですよ。
食事をしている途中、ポールは、「ヨーコ、How is your life?」なんて、言っちゃって、プライベートな質問もしてくるので、すごくポールのことを近く感じました。もう私のことなんて、ポールを前にしたら、ほんとゴミみたいなもんです。話すことなんてないです。
またポールは支払いの時、「ここは絶対に自分が払う」と粘ってました。私が「私はこんな感じにみえるかもしれないけど、いちおうあなたのレコード会社だし、ビルはすべて払う義務がある。子娘におごられるのはいやかもしれないけど」といったら、諦めてくれて「オッケー」といって、私に払わせてくれましたが、しっかり料金を確認して「今度ダブリンでごちそうしてあげるよ」なんて言ってくれました。
この日は、その後、インドネシア料理屋にいったフォー・メンと合流。フォー・メンとポールが一緒って、なんかイメージがわかなかったんだけど、一緒にすると、まるで男の子の会話になってましたね。フットボールの話とかで大盛り上がり。メンバーの中では、ケヴィンと一番、仲が良いみたいでした。そして、三鷹からかえってきたアルタン、シャロン一行と一緒になり、楽しくすごしました。
3日の朝、私はフォー・メン一行を空港におくった後、会場にいきました。ポールは、私が楽屋にお花をいれたのに気がついて、「ヨーコ、お花をありがとう」と言ってくれるんですよ。どうして、私が花をいれた、っての、わかったんだろ。だれかが言ったのかな。とにかく、そんな調子で、ポールは、なんでもお見通し、って感じなんです。本当に、すべて。しかし、この日の楽屋は、ものすごくピリピリしてました。ポールは、自分の楽屋の前のトビラに骸骨のイラストを書いて(笑)、「立ち入り禁止」にしてました。
そしてポールはサウンドチェックが終わると、楽屋に隠り、ライティングやスタッフ用のセットリストを書いてくれたんですが、これがまたすごい。ふだん、アイリッシュの人たちは、セットリストをなるべく早く提出するという事すら、できないことが多いんです。ペチャクチャしゃべったり、ビール飲んだり、で。ところがポールは、きちんと「これが1セット、これが休憩後のセット、そしてこれがアンコール」「一度に3枚とも並べるとみっともないから、1枚ずつ置くように」なんて私に指示した上、どの曲がどんな感じとか、ちゃんとライトの人への指示まで書いてある・・・す、すごい!! 思わず楽屋の外でセットリストを一緒に待っていた川島さんと顔を見合わせてしまいました。
そして、その日のパフォーマンスは、前述のとおり、ほんと、すばらしいものでした。アルタンのマレードが言っていましたが「ポールは、ほんとに300%パフォーマンスに自分を投入する、ほんとにすごい」。
アンコールで弦が切れたのは、ちょっとしたエピソードだったなぁ。
実はこの日ポールがギターの弦が切れたらどうしようと心配しているのをアルタンのキーラン・トゥーリッシュがすごく気にしてくれていたのでした。だから切れた瞬間、トゥーリッシュと私とプランクトンの川島さんと一緒にバタバタで、弦を交換したっけ。私はポールの楽屋に飛び込んで、ギターケースを開けたり、楽屋をひっくりかえしたり、大変パニックだったんです。やっと代えの弦を1セットみつけたので、袋をむしりとってトゥーリッシュに渡したんですが、あとでよくよく楽屋のテーブルの上をみたら、なんと、ポールは、予備の弦を1本ずつ、丁寧に、順番に、すごーく綺麗にテーブルの上に並べていたのでした。それに全然気がつかなかった私もドジですが、ポールって、ほんと・・なんて丁寧な人なんでしょう!
しかし、ほんとコンサートは、すばらしく、ポールも、お客さんの反応に、ものすごく感激してくれて、打ち上げの席では、そうとうお疲れの様子ながら、シミジミと感激をかみしめながら、ニコニコしたり、すごくいい雰囲気でした。あの時のポールの笑顔が忘れられません。帰りの道すがらポールは「ものすごく感激した」とか、言ったりしてました。あと「20年前にここに来ていればなぁ」なんて言ってました。
ダブリンで初めてミーティングしたときは、緊張の連続でしたが、ポールは、ダブリンであうと、ニコリともしてくれない感じだったのに、最終的に、日本では、ものすごくリラックスしていてくれたのでうれしかったです。
これもポールの大親友キーラン・トゥーリッシュをはじめ、本当に心の広い、あたたかいアルタン一行+マネージャーのトム、そしてプランクトンの川島さんのおかげだと思います。ほんとうにありがとうございました。
ポール、ほんとに、すごい! もう何度思い出しても、あれ以上のライブパフォーマンスというのは、思い付きません。あんなにすごい歌。すごいギター。もうなにもいらない。これで、私も仕事引退しちゃおうか、と真剣に思います。でもこの秋はルナサの新譜もあるし、ボケボケしてられないんだ、悲しいけど。
でも、ほんと、あなた以上のアーティストなんか、見つけられそうにありません。また、きっと、日本に戻ってきてください。
さてさて・・帰りのバスの中、ポールが、「昨日の夜のセットリスト持っている?」と聞くので、「持ってないけど、家にはある」と言うとポールが「後でリズ(マネージャー)にメールしてくれ・・・でも、僕もだいたい覚えているかもしれないけど」と言うのです。なので、私が「あ、私も。私もだいたい覚えていると思う!」と言って、私が昨晩のセットリストを覚えている限り書き出すと、ポールはそれを後ろから見ながらニコニコしてました。私が書き終わったものを見せると(まるでテストみたい!)ほとんど、私が覚えていたので(1曲くらい間違ったけど)、ポールはすごく御機嫌でした。よ、よかった。
なんか、自分のことばっかり、書いちゃうなぁ。ツアーレポートになってませんよね。まぁ、いつものレポートもたいしたことないけど。けっきょく、私は、もうポールのファンなんです。大ファン。
全然まとまらないや。また思い付いたら、ここに書いていきますね。
Special extra big thanks to my all time hero - Paul Brady.
曲目をクリックすると収録アルバムへ飛びます。
Marriage
made in Hollywood
Nobody
Knows
Nothing
But the Same Old Story
Blue
World
Helpless
Heart
Paradise
is Here
Mary
& The Soldier
Arthur
McBride
You're
the One ( w/ Ciaran T & Sharon S)
I
Want You To want Me
Follow
on
Sea
of love
Traveling
light
The
Long Goodbye
The
Island
Steel
claw
Crazy
Dreams
The
World is What you Make it ( W/ Ciaran T)
Encore
Minutes
away, Miles apart
The
Lakes of Pontchartrain
The
Homes of Donegal
Lucy Campell
& the Flogging reel (with Ciaran T & Sharon Shannon)
2nd encore
Busted
Loose
(以上、9月17日更新)